2020年の東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の地盤改良工事に従事していた、23歳の建設会社社員の男性が自殺しました。

一部報道によると、原因は月200時間を超えることもあったという時間外労働。産経ニュースは次のように報じています。

弁護士によると、男性は大学卒業後、昨年4月に都内の建設会社に就職。

12月中旬から、新国立競技場の基礎工事の前段階となる地盤改良工事の現場監督となったが、今年3月2日、会社に「欠勤します」と連絡した後、失踪。

4月に長野県で遺体で発見された。

「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」などとする遺書が残されていた。

産経ニュース ーより引用

男性の時間外労働は、失踪前の1か月で212時間。仮眠室のない職場で徹夜を行うこともあり、1日の平均睡眠時間は2〜3時間だったといわれています。

※写真はイメージ

一度決まったデザイン案が白紙撤回されるなど、着工が遅れ、急ピッチで建設が進められている新国立競技場。

こういったさまざまな要因が、現場の労働環境を悪化させる一因になっているとも指摘されています。

未来ある若者が、自ら命を断つという痛ましいニュースに「なぜ周囲の人は気付けなかったのか」という疑問の声も上がっています。

『自殺についての5つの誤解』とは?

そんな中、東京都福祉保健局のウェブページに掲載されている『自殺についての5つの誤解』が注目を集めています。

「自殺について一般に広く信じられていることは、事実とはかなり異なっています」という一文から始まる5つの誤解とその理由に、多くの人が「考えさせられた」と語ります。

誤解1.『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない

「死ぬ、死ぬ」と口にする人は、実際には行動に移さないなどともいわれますが、これは誤解だといいます。

実際に、自殺した人の8〜9割は実行する前にサインを出しています。

「死ぬ」と口にしている人は、周囲に知ってもらいたいとサインを出している可能性があるのです。

誤解2.自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている

本当に自殺すると決めた人を止めることはできない…これも誤解です。

ほとんどの人は「自殺しよう」と決心したつもりでも、「生きたい」と心が揺れています。

だからこそ、周囲が「生きたい」「助けてほしい」というサインを見逃さないことが重要なのです。

誤解3.未遂に終わった人は死ぬつもりなどなかった

未遂に終わった人に対し、「本気で死ぬつもりなんてなかったんだ」と考えるのは危険です。

医療関係者にも、こう考える人がいるといいますが、それは間違い。

『確実に命を断つ方法』をとらなかったとしたら、それは気持ちが揺れ動いているにすぎず、「死ぬつもりがなかった」というわけではないのです。

※写真はイメージ

誤解4.自殺について話をすることは危険だ

自殺について、人と話すことは滅多にありません。タブー視されているといってもいいでしょう。

しかし、自殺について話したからといって、相手に自殺という選択肢を与えることにはなりません。

むしろ、自らの心境や置かれている立場を客観的に見ることにつながり、自殺を遠ざられると考えられています。

誤解5.自殺は突然起き、予測は不可能である

周囲の人からすると、自殺は突然起こるものですが、実際にはそうではありません。

多くの場合は、長い期間をかけてさまざまな要因が蓄積された結果、あるキッカケによって自殺を選んでしまうのです。

逆にいえば、周囲が自殺を察知するための期間は決して短くないということ。自殺を止めるチャンスもまた少なくないのです。

自殺は、ある日突然現れて、親しい人間であっても気付けず、一瞬で実行されてしまうもの…そんな印象を持っている人もいるでしょう。

しかし、『自殺についての5つの誤解』を読むと、そんな考えが間違っていることに気付かされます。

もちろん、自殺の原因が長時間労働にあるとすれば、まず解決すべきは労働環境であることはいうまでもありません。

それでも、自分のちょっとした気付きや振る舞いで、身近な誰かの命を守れるとしたら…親しい友人や周囲の人間に対し「おかしいな」と感じたら、まずはその人と向き合うことが大切なのです。

東京都福祉保健局「自殺に関する5つの誤解」全文

自殺についての5つの誤解

自殺について一般に広く信じられていることは、事実とはかなり異なっています。

まず、それらの誤解についてご説明いたします。

1.『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない

これはかなり広く信じられている誤解です。

しかし、自殺した人の8割から9割は実際に行動に及ぶ前に何らかのサインを他人に送ったり、自殺するという意思をはっきりと言葉に出して誰かに伝えているのです。

2.自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている

実際に自殺の危険の高い人で100%覚悟が固まっていて周囲の人がそれに気が付いた時はもう遅いのだと信じられています。

しかし実際には、自殺の前にまったく平静な人などはほとんどいません。

むしろ、自殺の危険の高い人は「生」と「死」の間で心が激しく動揺しているのが普通です。

絶望しきっていて死んでしまいたいという気持ちばかりではなく、生きたいという気持ちも同時に強いということです。

私たちが本人の「生きたい」、「助けてほしい」という気持ちをどこまで汲み取れるかが自殺予防の鍵となります。

3.未遂に終わった人は死ぬつもりなどなかった

この誤解は救急医療機関に勤める医療関係者にも見られます。

本当に死ぬつもりがあったなら、確実な方法をとったはずだというのです。

しかし実際には、自殺の危険の高い人でも、その心の中には「死にたい」という気持ちと「助けて欲しい」という気持ちの2つの相反する気持ちが揺れ動いているのであり、それが自殺行動にも反映されているのです。

現実には、自殺未遂に及んだ人は、その後も同様の行動を繰り返して、結局は自殺によって生命を落としてしまう率が一般よりも高いという事実を忘れてはなりません。

4.自殺について話をすることは危険だ

自殺を話題にしたからといって、自殺の考えを植え付けることにはなりません。

自殺したいという絶望的な気持ちを打ち明ける人と打ち明けられる人の間に信頼関係が成り立っていて、救いを求める叫びを真剣に取り上げようとするならば、自殺について率直に語り合うほうがむしろ自殺の危険を減らすことになります。

また、自殺について言葉で表現する機会を与えられることで、絶望感に圧倒された気持ちに対して、ある程度距離を置いて冷静に見ることが可能になります。

5.自殺は突然起き、予測は不可能である

自殺が突然のように見える場合でも、実は自殺に至るまでには長い苦悩の道程があるのが普通です。

一見最近の事件が原因のように見えても、それは引き金になっただけに過ぎないことが多いのです。

一般に、自殺の動機は深刻で長期にわたる場合が多いのです。

東京都福祉保健局 ーより引用

[文・構成/grape編集部]