新名物となったバティスタ・クレートコンビ

 ドミニカンがアツい! ドミニカ・カープアカデミー陣が絶好調だ。6月に育成選手から支配下登録され、何度も逆転勝利に貢献したサビエル・アレクサンデル・バティスタ。そして彼と同じく育成選手として広島にやってきたアレハンドロ・メヒアも7月20日についに、支配下登録された。猛暑に悩まされる2017ニッポンの夏、暑さに強い助っ人ドミニカンはなんとも心強いじゃないか! ブラッド・エルドレッドの闘争心にはますます火がつくだろうし、外国人枠で悩む監督の姿も楽しみになる。

 しかし、広島は今、バットを握るドミニカンではなく、マイクを握るドミニカンブームの真っ最中だ。

 6月2日に支配下登録され、翌日即プロ初本塁打で鮮烈デビューを果たしたバティスタの通訳、ヘンディ・クレートのことである。「ありがとうございます。みなさん、バティスタです。よろしくおねがいします」と、バティスタの一生懸命な日本語の挨拶にほっこりしたその直後、クレートさんのあまりの「カタコト通訳」と一生懸命な様子が超カワイイ・超面白いと、現地もネットも騒然となったのだ。


ブルペン捕手兼通訳のクレート ©森田和樹

 本職はブルペンキャッチャーのクレートさん。ドミニカ・カープアカデミーでは、ブルペンキャッチャーになると、日本語の勉強をすることになっているという。クレートさんはさらに、来日してからも日本語学校に通い、普段はもっと流暢な日本語を喋れる。しぐさや挨拶などは日本人よりも日本人らしいそうだ。それなのに、初めてのマツダスタジアムでのお立ち台、緊張しすぎてカタコトになっちゃったという。なんとかわいいエピソードだろうか。

 デビュー戦から4日後、バティスタは1試合2本塁打の活躍でまたヒーローになった。札幌ドームのスタンドには、明らかに通訳さんを楽しみにするファンの笑顔が並んでいた。期待通りの「カタコト通訳」に大盛り上がり。最後の締めの言葉「あのー、きょう、応援、ありがとございました。またあした、きてください。ませんか」で、さらなる大爆笑をかっさらった。バティスタ・クレートコンビは、たった二晩でカープの新名物となったのだ。

 今やファンには「クーちゃん」と呼ばれ、選手に負けない知名度だ。ラジオ番組で、バティスタ無しの単独インタビューが放送されたり、直筆サインがテレビやラジオの番組プレゼントになったりと、大変な人気ぶりである。

 大好きなクーちゃん節であるが、わたしには一つだけ気になることがある。

 現地ドミニカでは、クレートさんがきちんと通訳できているのかと聞かれ、駐在員の八谷智隆さんは「mas o menos(まぁまぁ)」と答える。解説の山本浩二さんは「ほんとに通訳してるんですかね」と疑いのコメント。

 そう、バティスタは実際何と言っているのだろうか……? という事だ。そこで、最新のヒーローインタビューを日本人通訳さんに訳してもらうことにした。

バティスタが本当に言っていたことは……

 7月10日のDeNA戦、0-1の7回裏 一死二塁、先発・野村祐輔の代打でバティスタが登場すると、7号となる2ラン本塁打でカープは逆転。野村の5勝目に貢献した。その日のヒーローインタビューである。

--逆転2ランホームラン、バティスタ選手、ナイスバッティングでした!

バティスタ:アリガトウゴザイマス!

--あのバッティング振り返ってください。

クレートの通訳:あのぅ……高いボールを、どんどんどんどん振るに、いってました。

バティスタの発言:甘い球を待っていました。コンパクトに振れるよう心がけていました。チームの勝利に貢献できて良かったです。

--野村投手の代打でした。どんな思いで打席にむかいましたか?

クレートの通訳:あの……やっぱり、甘い球を、どんどんどんどん振るに、いってました。

バティスタの発言:甘い球を探して、良い仕事ができるように心がけていました。

--それにしても飛距離も十分。すごいホームランでしたね。

クレートの通訳:まあ、やっぱり、あのー、自分の武器は、あのー、パワー。そのパワーで、あのー、あそこまで飛んだです。

バティスタの発言:非常に良い気分です。わたしはパワーが持ち味ですので、良いミートが出来ることをシンプルに考えていました。

--チームは引き分けを挟んで4連勝となりました。チームの雰囲気はいかがですか?

クレートの通訳:あのー、えっと、4連勝してるから、あのー、いまチームを、ほんとは最高です。

バティスタの発言:良いスタイルのチームです。ファンの皆様に勝利を与えられるように、チームは日々100%の力で動いています。

--大きな声援のなかでホームランを打ちました。改めて勝利の喜び、お気持ちいかがですか?

クレートの通訳:ま、ほんとは、あの、うれしいです。あのー、チームもチャンスもらってるから、すごく喜んでるです。

バティスタの発言:チームからチャンスをもらい、そして信頼してくれて、嬉しいです。

--大きな応援をしてくれました、カープファンにメッセージをお願いします

クレートの通訳:あの……やっぱり、今日の応援、すごかったです。あの、100%を毎日、します。

バティスタの発言:チームの勝利に貢献できるように、毎日100%を尽くします!

 やっぱりちょっと違った。でもやっぱり、文字にしても面白くてたまらなかった。「今日の応援、すごかったです」というのはクレートさんが追加した感想だったのか、と知るとますます愛おしさが込み上げてきた。まだ現地で聞いた事のないわたし、クーちゃん節を生で聞く事、今年の観戦目標に加わった。

 当のヒーロー・バティスタ本人はというと、クーちゃんに対して「もっと勉強して日本語を頑張ってほしい」とテレビで発言するなど、事態を把握しているようである。しかし、正確な通訳よりもクーちゃん節を欲しがっているファンの方が多いだろう。クーちゃん見たさにバティスタの活躍を祈っているわたしがいる。

 バティスタには悪いが、どうか「mas o menos(まぁまぁ)」のままでいてください。ませんか。

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(大井 智保子)