Facebookは心のかさぶたをはがす【燃え殻さんインタビュー】

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 ある日突然、スピードワゴンの小沢一敬とtwitterで「会おうよ」という展開になり、その後誕生日会を開いてもらったら好きな作家・樋口毅宏がシークレットゲストとして登場し、彼に「小説を書け」と言われ、紹介されたcakesで連載すると糸井重里や大根仁ら著名人に絶賛され、書籍化したらベストセラーになった。

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 この、たまにみる面白い夢のような話は、叙情的なツイートが人気で、一部から「140字の文学者」と呼ばれるアルファツイッタラーの燃え殻さん(43歳)の身に実際に起きたことを140字で記したものです。まさにインターネット時代のシンデレラストーリー。

 彼のデビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)は、発売から4週間で約7万5000部と、賞を受賞していない新人としては異例の売れゆきで話題になっています。

 本作は、43歳の主人公「ボク」が、20代の頃に信仰するように恋した「最愛のブス」との愛しくも切ない日々を綴った同名タイトルのウェブ連載に大幅な加筆修正を加えたもので、連載時から人気を集めていました。

 本業はテレビの美術制作会社に勤める会社員という彼が、なぜ自身の経験をもとに身を削るような恋愛小説を書いたのか。ある夏の昼下がり、ボクと最愛のブス・かおりの思い出の地である渋谷区円山町のラブホテル街でお散歩インタビューを敢行しました。

◆「お前、そこにいていいよ」って言われてる気がした

――帯に並ぶコメントの名前が近年稀に見る豪華さですね。

燃え殻:cakesでの連載から小説になるまでのあいだに出会ってきた人たちからコメントをもらったので、思い出づくりとして本当にうれしいです。

 彼らから「わかるよ」って言われたことは、常に社会の端っこみたいなところにいたような僕にとっては、「お前、そこにいていいよ」「わかるよ、お前そこにいるんだろ」って言われたような気がして、ほっとしました。

――最初にcakesの連載を褒めてくれたのが、糸井重里さんだそうですね。

燃え殻:はい。小説の主人公「ボク」は鶯谷にある広告の専門学校に通っていましたけど、実際に僕もある専門学校の「広告宣伝科」っていう、どうしたんだっていうくらいダサい学科にいたんです。場所も鶯谷だったし、学校が潰れたのも小説と同じです(笑)。

 最初の授業のテーマが「糸井重里とは」だったのに、「お前らが人生で糸井重里と出会うことは絶対にない」と言われ続けた2年間でした。でも、この小説のおかげで会えたんですから、インターネットって面白いなって思いました。

◆Facebookはみんなの心のかさぶたを剥がす

――インターネットといえば、本作もボクが誤ってかつての恋人・かおりにFacebookの友達申請をしてしまうところから物語が始まります。もしデロリアン(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場する車型のタイムマシン)で過去に戻れたら、とボクが妄想する場面もありますが、Facebookはある意味、過去の答え合わせや、やり直しができる“現代のデロリアン”だと思いますか?

燃え殻:いや、Facebookの場合は、こっちが望んでもいないのに、「愛しい人との思い出2」がいきなり始まっちゃうことが多いと思うんです。

 映画でもそうですけど、『ゴーストバスターズ2』『ネバーエンディングストーリー2』とか微妙じゃないですか。たまに『ゴッドファーザー2』みたいな例外もありますけど、でもやっぱり“2”って難しい。それが起こるFacebookの「あの人は今」の機能は、いろんな人の心のかさぶたを剥がずものだと思います。

◆何度デロリアンに乗っても無理。でも、感謝は言いたかった

――かおりのモデルになった女性との“2”はない?