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第二次世界大戦の最中で繰り広げられた史上最大の撤退作戦を描く映画『ダンケルク』。今回はそんな英国の歴史を変えた大作戦を超特大のIMAX70mmフィルムで撮った英国人監督のクリストファー・ノーランにインタビューしてきました。

関係者に質問を託す形で実現したインタビューですが、空戦シーンの撮影方法や、なぜ今回の映画は今までのノーラン作品に比べて短いのかなど貴重なお話を沢山語っていただきました!


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ーーIMAXの予告映像で見た戦闘機のドッグファイトシーンが最高でした。コックピット内のシーンでは振動も再現しているようでしたが、どのように撮影したのでしょうか?

クリストファー・ノーラン(以下、ノーラン):できる限りリアルに撮りたかったので、空中飛行のシーンをこれまで誰も試したことがないやり方で撮影すると決めました。クリアな画質で驚くべき映像が撮れるIMAXカメラをどう使って空中飛行シーンを撮影できるかを考えた結果、飛行機の翼の上やコックピットの中にもカメラを取り付ける必要が出てきたんです。

そしてまず、私と撮影監督、プロダクション・デザイナーがそれぞれ一度、本物のスピットファイア(イギリスの戦闘機)に乗りこんで、飛んでみるところから始めました。パイロットとともに、実際飛んでみて、いろんな飛び方を試して、実際その空間にいることがどのようなものかを実体験してみたんです。

その実体験によって、我々が体感したこの感じをどう再現して、それをどうやって観客に体験させることができるだろうか、といった実に充実した話し合いができました。そして、パナビジョンとIMAXと共同で、特別なレンズ固定装置などを考えました。

それによってレンズ自体をパイロットの肩越しに設置し、コックピットの細かな部分から、実際飛んでいる飛行機からのリアルな光景などをパイロットの視点で映像として捉えることを可能にしたのです。

そしてスピットファイアに似た大きさと形の飛行機を買いました。そうすることで、翼にボルトを打ち込むなどの、本物のスピットファイアに対してはできないことができました。さらに役者をスピットファイアと似たコックピットに乗せて、上空での撮影もできたんですよ。

いくつもの違うテクニックを使って撮影を行ないました。空撮ユニットは通して働き続け、他の撮影もしながら、ひとつずつ細かな映像を丁寧に撮っていきました。通常こういったタイプの映画製作では一度にまとめて撮ってしまうものですが、私は一度やってみてから何かを発見していくという風にやりたかったのです。

毎回空撮ユニットを飛ばすたびに、なにか新しいことを学び、その都度、次の撮影に生かせるものがでていきました。何カ月もの撮影を通して、 少しずつ撮影をし、それまでには存在しなかった一連のテクニックや共通言語みたいなものを取得しながら構築していったんです。


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ーーということは監督も空中で過ごした時間は長かったのですか?

ノーラン:私自身も膨大な時間を空の上での撮影に費やしました。そういった意味でもとても楽しい撮影でしたよ。

ーー空戦シーンでのCGと実写はどれくらいの割合なのでしょうか?

ノーラン:できるかぎりカメラで撮るようにしました。CGは、非常に影響力を持つツールですが、従来のツールもそうであるように、ある種の限界があります。CGには独特の感触があるので、CGであるからこそ効果的に効くという部分のみに使用するようにしなければならなりません。

これまでみた映画で描かれる第二次世界大戦の映像には、CGと大戦の歴史的な感覚の間に存在するとても居心地のわるい関係を感じていました。なので、この映画ではできるだけCGは使いませんでした。映画のなかで完全にCGであるショットはないはずですね。撮影したものすべてがカメラで撮られたリアルなものとなっています。

ーーじゃあ完全に実写なんですか?

ノーラン:そうですね。この映画の中では、完全にCGのみというショットは無いから、割合で言えば実写100%かな(笑) 例えば、3機の飛行機を捉えた実写のショットがあって、そこに2機の飛行機を捉えた実写の映像を組み合わせたら、例え映像は実写でも、それはCGで合成されたものになります。しかし、今回映画の中に登場する飛行機はすべて実写で、CGで作られた飛行機は出てこないですよ。


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ーー飛行機の音の迫力がすごくリアルだったのですが、この音はどのように収録されたのでしょうか?

ノーラン:飛行機のシーンでは、エンジンからの排気音、スピンするプロペラの音、空気管を通して出てくる音、コックピット内の独特の振動音、機体に負荷がかかった時の音など、 あらゆる角度の音を録る必要があります。そのためマイクを細部にまで気を配って配置し、すべて本物の飛行機を使って本物の音を録りました。

音がどのように耳に届くかは常に同じとは限らないので、我々は音を体感できるようにしました。実際に飛行機に乗ると、重力や上昇負荷、それにエンジンの振動であったりと、耳より体で音を感じることのほうが大きいんです。そういった感覚を与えるよう音を使って表現しています。

ーー『ダンケルク』が持つ、これまでの映画にはない新しい部分はどんなところでしょうか?

ノーラン:ダンケルクでの出来事は、あまり知られておらず、ほとんど映画化されていないという点でとてもユニークです。この歴史的出来事の核は戦いではなく撤退で、サスペンスに溢れているという点もとてもユニークだと思います。

そのため、この映画の説明には「サスペンス」と「スリル」という言葉を使う事を選びました。ストーリーも、単なる歴史的出来事としてではなく、可能な限り登場する人物の見解から描くように試みています。戦争を題材とする映画としては、これは新しい描き方だと思います。


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ーーでは今作の最大の見所はなんでしょうか?

ノーラン:この歴史上の出来事を知らない人にとっては、その強烈な体験が最大の見所となるでしょう。なんといっても、並外れた物語であり、それを語るためにサスペンスタッチで描きました。だから、この映画は僕のほかの映画に比べるとかなり短い。脚本も半分の長さで、展開も速い。メッサーシュミット(ドイツの戦闘機)と空中戦を繰り広げるスピットファイアのコックピットにいるような臨場感が味わえます。戦場に引きずり込まれて、緊張感にあふれる状況に追い込まれていく、そんな最高に面白い戦争体験になると思いますよ。

ーー本作は上映時間が1時間46分とのことですが、なぜこれまでの作品に比べて短めにしたのでしょうか?

ノーラン:長い映画にはある種のリズムがあり、そのリズムが緊迫を加速させていきます。しかし、その継続的に加速する緊迫というのはあまりに強烈なので、観客が耐えられる時間の長さには限界があるのです。 対話でそれを語ろうとすると長くなってしまうので、私は視覚的に物語を語っていきたいと考えました。そして観客には強烈な経験をして欲しいと思っているので、いろんなものをそぎ落とし、短く、無駄のないものにしていきました。なので、今作は台本もかなり短く、私の通常の作品の半分ほどになったんです。


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まさかの空戦シーンはすべて実写! 一足お先に本編を見させていただきましたが、そんな空戦シーンは今作の大きな見所で、今までの映画では観たことがないようなリアルさと美しさを兼ね備えた、本当に本当に素晴らしい映像となっています。

クリストファー・ノーランの監督が説明している通り、そのコダワリが随所に現れ、美しい映像と骨まで響くサウンドで、戦争の辛さや恐ろしさを全身で体感させられる映画であり、可能な限りIMAXで観て欲しい作品。これはちょっと遠出してでもIMAXシアターで楽しんだ方がいいと思います!!

映画『ダンケルク』は9月9日(土)から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他、全国ロードショー。

クリストファー・ノーランが描く第二次世界大戦映画『ダンケルク』のVRコンテンツ&映画新予告

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Source: 映画『ダンケルク』オフィシャルサイト

(傭兵ペンギン)