「米国が無視され始めている」トランプ大統領6ヶ月の外交評価で懸念の声

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 アメリカのトランプ大統領が就任して半年が過ぎ、米メディアがこれまでの大統領の働きぶりを採点している。全体的に辛口の評価が目立ち、各種世論調査でもこれまでの実績や今後の見通しに否定的な意見が過半数を超えている。外交政策への評価に絞っても同様だ。北朝鮮問題への対応やTPP脱退、ロシア疑惑などについて、厳しい意見が相次いでいる。

◆TPP脱退は「少しもアメリカの利益にならない」
 ワシントン・ポスト紙(WP)と ABCの合同世論調査によれば、トランプ大統領の外交手腕を信頼するか、という質問に対し、「全く信頼していない」「あまり信頼できない」が66%と、「非常に信頼している」「多少信頼している」の34%を大きく上回った。

 ブルームバーグは、各国との外交関係について有権者に質問し、ドイツとの関係については55%が今後4年間で悪化する(22ポイント増)と答えた。イギリス、メキシコ、キューバ、ロシアとの関係についても、悪くなると答えた人が倍増した。他国との外交関係全般については、38%が「認める」、58%が「認めない」とした。

 日本と関係が深い事柄については、国際関係が専門のハーバード大学教授スティーブン・ウォルト氏が、トランプ政権最大の失策にTPPからの脱退を挙げている(フォーリン・ポリシー誌)。ウォルト教授は、脱退はアジアにおけるアメリカの地位を大きく下げるものだと指摘。反対に中国に影響力を与える門戸を開いただけで、「少しもアメリカの利益にはならない」としている。また、日本とEUが経済連携協定(EPA)について大枠で合意したことを挙げ、主要国がアメリカ抜きで新たな経済連携を構築しつつあることを嘆いている。

◆北朝鮮危機への無策も批判の対象に
 北朝鮮問題についても、トランプ大統領の手腕に失望したという声が強い。WP/ABCの世論調査では、63%対36%で、トランプ大統領が北朝鮮危機をコントロールできていないという意見が上回った。また、「あなたはアメリカが北朝鮮との全面戦争に関与することをどのくらい心配していますか?」という質問に対しては、74%が「非常に心配している」「ある程度心配している」と答えた。

 ABCは、現在の北朝鮮情勢について、7月4日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の成功を受け、「北はついに米本土に届くミサイルを手にした」と懸念を示す。今のところは、目標に確実に着弾させる再突入技術や核弾頭を搭載する小型化技術はないものの、最近の発射実験は移動式発射台によって行われており、米情報機関の追跡を難しくしているとしている。

 こうした切迫した情勢を受け、ABCは「北朝鮮に対する追加制裁を効果的なものとするには、中国の協力が必要だ」としたうえで、トランプ大統領がそれに中途半端な姿勢しか示すことができていないと指摘。同大統領は、たびたびツイッターなどで米国単独でも北朝鮮に厳しい措置を取ることを示唆してきた。一方で、先のICBMの発射実験後のインタビューでは「習近平(の協力)をあきらめたのか?」と聞かれ、「ネバー・ギブアップ」と答えたという。トランプ大統領がどっちつかずの態度を取っているため、事態が動かない状況が続いていると、米世論の批判が集まっているようだ。

◆各国が「馬鹿なアメリカ」の言うことを聞かなくなる?
「トランプはアメリカの外交政策を方向転換させただけでなく、世界秩序を混乱に陥れた」(ABC)、「有権者は、彼がアメリカをより弱く、安全ではない国にするという意見に同意している」(WP)、「トランプはまだ6ヶ月しか大統領の座にいないが、その愚かさが与える影響は、はっきりと見えている」(フォーリン・ポリシー誌=スティーブン・ウォルト教授)--。多くのメディアや有識者がこうした辛辣な評価を下す最大の要因は、揃って挙げられているロシアとの不透明な関係に関する疑惑だ。

 昨年の大統領選で、ロシア政府が当選後に便宜をはかることと引き換えに、民主党陣営へのサイバー攻撃などトランプ氏に有利な介入を行ったという疑惑だが、この捜査に当たっていたFBI前長官が大統領サイドから不当な圧力を受けたと証言するなど、最近の米メディアはこの話題で持ちきりだ。保守・共和党寄りの報道姿勢で知られるFOXニュースのシェパード・スミスキャスターですら、トランプ大統領のロシア疑惑に関する発言を「嘘また嘘」と非難したという。この発言を紹介したウォルト教授は、「大統領の振り子は、『威厳のあるもの(dignified)』=オバマから、『うんざりするもの(disgusting)』=トランプに振れた」とフォーリン・ポリシー誌に書く。

 WPは、有権者の多くが、トランプ大統領はアメリカの国益よりも、自身のビジネスや家族の利益を優先していると考えていると指摘。ABCは、シリア情勢やISISへの対処、NATOとの関係、アフガニスタン情勢についても個別に分析を加えているが、トランプ政権の対応はいずれもあまりうまくいっていないと見ている。ハーバード大のウォルト教授は、こう語る。「他国がいったんアメリカは馬鹿だという見方をしてしまうと、ワシントンが行うアドバイス、ガイダンス、要求にあまり関心を示さなくなる」。同教授は、既にサウジアラビアやイスラエル、韓国といった国にその兆候が強く出ていると指摘する。TPPでトランプ政権に梯子を外された形の日本も、例外ではないということだろうか。