「ダークナイト」「インセプション」「インターステラー」などの作品を送り出してきたクリストファー・ノーラン監督が初めて史実に挑んだ映画「ダンケルク」が2017年9月9日(土)に公開となります。今回、そのノーラン監督に質問をぶつける貴重な機会を得られたので、何点かの質問に答えてもらいました。

映画『ダンケルク』オフィシャルサイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

質問に答えてくれたクリストファー・ノーラン監督



Q:

素晴らしい映画を作ってこられました。この映画の完成品を観るのが待ちきれません。あなたにとって映画を作る動機とは何なのでしょう?

クリストファー・ノーラン監督(以下、ノーラン):

それぞれの映画に動機があると思う。私は自分のことを、物語を語る技術者だと考えている。

引き受けた映画の技術的挑戦に引き付けられる。でも常に自分は語り手であり、ストーリーテリングの一部だと考えているんだ。

Q:

映画製作の過程で、どこで書いたり考えたりしますか?特別な場所や特別な時間割がありますか?

ノーラン:

私はそれほど厳格ではない。それぞれの作品に異なるアプローチや異なる脚本の書き方が必要だ。どの映画でもやっていることは、脚本を書くときに旅行することだ。新しい場所に行って世界を見てインスピレーションを得る。

Q:

これは単なる戦争映画ではありません。それより、サバイバル物語、サスペンス映画と言えるでしょう。脚本を書きながら、あるいは最初からそういうアプローチになると思っていましたか?

ノーラン:

この物語への取り組み方を考え、人間の戦いを描いた映画を観て、『ダンケルク』をユニークなものにするのは、戦闘ではないと思った。これは撤退の物語であり、サスペンスであり、時間との戦いだ。そこで私はサスペンスとして、サバイバルとしてアプローチすることにした。それが、『ダンケルク』を、ほかの戦争映画と異なるものにしてくれる要素だった。そしてサスペンスで語ることに自信を感じた。戦争で戦ったことのない人間が戦争映画を作ることにどれほどの自信がもてるのか。

自分では経験していないことを観客に経験してもらおうなんて厚かましい考えかもしれない。でも、サスペンスとして描くことに、私は心地良さを感じたんだ。



Q:

65ミリフィルムで撮影されました。どうして頑なにデジタルではなくフィルムで撮影しようとしたのですか?

ノーラン:

私はフィルムで撮影したい。それは解像度がデジタルフォーマットよりはるかに高いからだ。アナログカラーには帯域幅の制限がない。ビット深度などの影響を受けない。フィルムは今日存在するものの中で、人間の目が見ているものに最も似ているという技術的理由もある。

リアルで主観的な体験を作りたいなら、フィルムで撮影することが目で見ている世界を最も正確に表す。だから、虚構の世界が本物に思えたり、現実逃避にも役立つ。映し出されるフィルムの映像によって、観客は家のTVでは経験できないものを体感することになるんだ。



GIGAZINE(以下、G):

「空」「海」「浜辺」を舞台に3人のイギリス兵の視点を通して描かれるということだが、一体いつから「ダンケルク作戦の映画を撮ろう」と計画していたのですか?

ノーラン:

私は常にダンケルクの物語に魅了されてきた。イギリスの話で、イギリス人はその話とともに成長し、骨まで染み込んでいる。神話のように文化の一部になっているんだ。我々は逆境にあるグループや公共のヒロイズムや敵の優勢について語るとき、“ダンケルク・スピリット”のことを話す。

それにこの物語は近代映画で語られたことがない。そこがとても面白かった。映画監督は常に大衆文化のギャップを探しているからね。いまだに語られず、すでに語られているべきものを探す。ダンケルクの物語は人類史上最高の物語のひとつだ。

海を背に身動きが取れない40万の兵士に敵が迫る。彼らの故郷は目で確認できるほど近いけれど、そこに行けない。そして彼らは降伏か全滅かの選択を迫られる。この物語は降伏でも全滅でもない終わり方をしたことで、人類史上最高の物語のひとつとなった。素晴らしいサスペンスだよ。



G:

3人のイギリス兵の視点を通して描くというアイデアはどのように着想されたのですか?

ノーラン:

出来事を3つタイムラインで、それぞれ非常に異なる視点で対比させながら見せるというこの映画の構成は、実際に起こった史実を、私自身リサーチをして、インスピレーションを得たんだ。当事者達の個人的な記録を読んで、砂浜にいる者達が、そこから起きていることを見て感じたことと、一方、その上空を飛ぶ者達が見て感じたこと、そして救助のためボートでやってくる者達が見て感じたことが、それぞれ非常にちがっていることに多大な衝撃を受けたんだ。これら3人は皆、出来事の中の非常に限られた不十分で不完全な光景しか見ていないのだが、観客は、それらそれぞれをすべて見て、組み合わせて、結合させた光景をつくりあげるのである。それは、難しくも、やりがいのある挑戦だと思ったし、よくある戦争映画で使われるテクニックとは非常に異なったやり方だと気づいた。よく将官達が室内で地図を囲んで何が起こっているか話し合いをするシーンがあるが、それでは、当事者達(である兵士達)が実体験していることはみえてこないんだ。我々が興味を感じたのは、観客に当事者達がその現場で感じているのと同じ主観的な経験をさせることだった。この構成のテクニックにおいて、それぞれの限られた視点に最大限のインパクトを与えたかった。なので、スピットファイア機の中のパイロット達のシーンでは、事実、観客は、パイロット達が見るもの以外何も見ないんだ。カメラは、大概の場合、コックピット内にボルトで固定されていて動かないようにしてあった。それで観客は、パイロット達がみている光景そのものを目にして、彼らが把握していることだけを、観客も同様に把握するのである。同じように、ボートの上でも、カメラとともに観客の視点も、ボートの上にあって、そこから出ることはない。まさしく兵士達とともに船の上にて、交戦地帯に近づいていく気分なんだ。



G:

『ダンケルク』は、究極の映画体験となる作品だと世界が期待しています。これまでの映画にはなかった革新性とは、どんなところでしょうか。

ノーラン:

『ダンケルク』の革新的な部分は多くあります。ダンケルクの戦いという実際の出来事は、あまり知られておらず、ほとんど映画化されていないという点でとてもユニークです。この歴史的出来事の核は戦いではなく撤退で、サスペンスに溢れていると言う点もとてもユニークだと思います。そのためこの映画の説明には、「サスペンス」と「スリル」という言葉を使う事を選びました。ストーリーも、単なる歴史的出来事としてではなく、可能な限り登場する人物の見解から描くよう試みています。戦争を題材とする映画としては、これは新しい描き方だと思います。



G:

CGではなく実写でやれるだけやっていたことを知り「本当にコレを作ったのか!」と驚かされるシーンがかなり多いのですが、今回も同じように「見た人はCGだと思うかもしれないが実写だ」というシーンはありますか?

ノーラン:

実際に映画を観る前は、空撮のシーンはCGだと予想する人が多いのではないかと思います。ところが、実際に映画をみれば、現実的な空中映像を目の当たりにして無意識にも本物として認識できると思います。今までにも、ドッグファイトと呼ばれる空中戦闘のシーンは映画で再現されていますが、実際に飛ぶ飛行機にカメラを乗せて、飛行機同士が戦闘し合う様子を撮影した本物の映像はきっと観た事がないはずです。



「ダンケルク」は映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では批評家評価が98%という高さで、「ノーランの最高傑作」とも表現されています。



・『ダンケルク』(英題:Dunkirk) 上映時間106分/7月21日全米公開

監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン

出演:トム・ハーディ、マーク・ライランス、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、ハリー・スタイルズ ほか

オフィシャルサイト:dunkirk.jp #ダンケルク

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