歌舞伎役者が宙を飛ぶ!実は江戸時代から行われていた歌舞伎の「宙乗り」とは?

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宙乗りとは、文字通り役者が宙を飛ぶ演出の事。俗に「ふあふあ」とも呼ばれます。役者さんは花道上を走るワイヤーで吊られ、舞台上から三階席に設置された鳥屋(とや:花道の奥の控え所)まで客席上をふわりふわりと飛びます。演目の目玉ともなる派手な演出の一つで、妖術使いや亡霊、動物などの非現実的なものを表現する際に使われています。

舞台の上を飛び回る演出は大がかりで、近年始まったもののように思えますが、実は江戸時代からすでに行われていました。この斬新な演出宙乗りを最初に始めたのは初世市川団十郎でした。元禄十三年(1700)、「大日本鉄界仙人」の曾我五郎役での宙乗りが一番古い記録のようです。

現在はワイヤーに鉄製の器具が使われ、安全にも考慮されていますが、宙乗りの始まった当時は綱で身体を吊っていました。今と違ってかなり危険で、幕末の大人気女形・三世澤村田之助は文久二年に宙乗りで落下。その傷が原因で壊疽を患い四肢を切断しましたが、義足でも舞台での輝きは変わらなかったといいます。まさに命がけの舞台です。

歌川国芳「狐忠信」「源義経」「静御前」

こうした宙乗りや、衣装の早替えなどのお客さんが「あっ」と驚く華やかな演出を総称して、ケレンと呼びます。ケレンは「外連」とも書かれ、歌舞伎にとっては大切な要素の一つ。「歌舞伎は芸術だ」とされた明治期以降は、仕掛けに頼る演出は歌舞伎の本道ではないとする見方が強まり、一時は排斥されたようですが、現在では再び盛んに使われるようになりました。

江戸時代の歌舞伎は芸術というより、庶民が楽しむエンターテイメント。誰も空を飛んだことのなかった時代に、歌舞伎の宙乗りはとても斬新で、観客も熱狂したことでしょう。

現在、歌舞伎界には市川海老蔵さんをはじめ、中村勘九郎・七之助さん兄弟、市川染五郎さんや猿之助さんら当代の花形役者さんたちを中心に、歌舞伎を江戸時代のように「敷居の高くないエンターテイメント」に返り咲かせようというムーブメントが見られます。伝統芸能が身近なものとして楽しめるようになっていくのは、とっても嬉しいものですね。

参考サイト:H05宙乗り(義経千本桜) - もっと知りたい! 歌舞伎の世界