「コツコツ地道に努力するのが大切」との教訓が込められているという「ウサギとカメ」。しかし、殊にビジネスの場においてこの童話はほとんど役に立たないと言い切るのは、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者で現役弁護士の谷原さん。氏は「そもそもカメがウサギに駆けっこで挑んだのが間違い」とし、ライバルに勝つためにすべきこと・してはいけないことを記しています。

ウサギとカメの真実

こんにちは。

弁護士の谷原誠です。

今回は、イソップ童話の「ウサギとカメ」についてお話しします。ご存知だとは思いますが「ウサギとカメ」は、山頂までのかけっこで挑戦するという話。ウサギは当然、スタート直後からカメに大きく差をつけますが、ゴール直前で寝てしまったため、追い抜かれ、カメが勝利するという結末です。教訓としては「慢心してはならない」「コツコツ地道に努力するのが大切」といったところでしょうか。

しかし、この教訓は正しいかもしれませんが、ビジネスの世界では、このおとぎ話はほとんど役立ちません。現実には、カメはウサギに駆けっこで勝つことはできません。力が圧倒的に上の相手と勝負すれば、当然のごとく圧倒的に負けます。しかも、勝負が長引けば長引くほど、途方もなく差が開き、追いつくことは不可能となります。競走中に休んでくれる人はいません。

そもそも、カメはなぜよりによってウサギと駆けっこをしようと考えたのでしょうか。勝てると思っていたのでしょうか。お話では、勝負を挑んだきっかけは、「もしもしかめよかめさんよ」と、ウサギに歩みののろさを馬鹿にされたこと。つまり、挑発に乗って、相手の得意分野で勝負を挑んだということです。これでは相手の思うつぼ。絶対にしてはならないことです。

ビジネスパーソンである私たちが、ウサギとカメのたとえから学ぶべきことは、「強い人と同じ競争の土俵に乗ってはならない」ということです。たとえば、カメは潜水で勝負すれば完勝でしょう。それは無理でも、なんとか水の中の勝負にもちこむべきです。

ビジネスは、かけっこのような単純な勝負ではありません。様々な要素が複雑に絡み合い、多数の人材の、多くのスキルを必要とします。自分の戦えるステージは必ずあるはずです。

たとえば、ライバルと目する優秀な同僚がいて、どうしても負けたくない場合を考えてみましょう。その同僚の優秀さとは、計算能力・処理能力の高さかもしれませんし、語学が堪能なことかもしれません。その相手の得意分野で勝負するのは避けたほうが良いでしょう。それ以外のことで、一点突破で優位に立てる分野を考えるべきです。

たとえばあなたに協調性があり、人とすぐに仲良くなれるのであれば、なるべく多く、知り合いを作ることに注力すれば、あとあとその人脈が力を発揮するかもしれません。どんなにオールマイティに近い能力を持つ人でも、時間が限られているので、すべてのことはできません。

自分で伸ばす分野が決まったら、それこそカメのようにコツコツ継続し、向上を目指すのみ。そうすれば、ライバルが「昼寝」をしなくても、あなたが浮上する瞬間が必ずあるはずです。

「いまさら、自分を変えようとしてはならない。うまくいくわけがない。自分の得意とする仕事のやり方を向上させることに、力を入れるべきである」(P.ドラッカー)

今回は、ここまでです。

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『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』

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出典元:まぐまぐニュース!