北朝鮮の金(ゴールド)の推定埋蔵量は、約2000トン(韓国鉱物資源公社の2009年の資料による)に達する。この数値がもし本当ならば、北朝鮮は埋蔵量世界10位の「知られざる金大国」となる。

しかし、生産量は年間2トンと非常に少ない。鹿児島県の菱刈鉱山の年間生産量7.5トンと比べると、その少なさがわかる。長年の採掘で埋蔵場所が深くなり、それに見合った設備が必要なのに、投資をする余裕がないこと、生産に欠かせない電力が不足していることが主な原因と思われる。

一方で砂金は、大規模な設備がなくても採取が可能だ。

国際社会の経済制裁強化で外貨不足に苦しむ北朝鮮当局は、住民を大々的に動員して、中朝国境を流れる鴨緑江で砂金の採取を行っている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、砂金の採取を進めているのは保衛部(秘密警察)や検察所などの司法機関だ。それぞれ「外貨稼ぎ班」を作り、住民を動員し、「ノルマ超過分は持って帰っても良い」とインセンティブを与える形で採取を奨励している。

砂金を採取するには、川砂を濾(こ)して選り分けなければならない。このような作業は通常、川岸で行われるが、当局は恵山(ヘサン)市内の別のところで行わせている。その理由は「中国側から見られるから」というものだ。

北朝鮮当局は最近、国内情報の国外への流出に神経を尖らせているが、中朝国境を流れる鴨緑江で砂金を選り分ける作業をすれば、川向うの中国・吉林省長白朝鮮族自治県を訪れた観光客に写真を撮られ、SNSにアップロードされる。あまり見せたくないリアルな姿が、一瞬のうちにして全世界に広まってしまうことを嫌がっているようだ。

作業に駆り出された人々は、現場監督に「選り分け作業は川岸でやろう」と提案したが、「中国側にはわが国を非難する目的で写真を撮るやつらがいるから絶対にダメだ」「外国に知られたらお前らは無事ではいられない」などとけんもほろろだという。

当局は同時に、脱北を警戒して住民に対する監視も強めている。

国境警備隊は3人1組で堤防の上から砂金採取に当たる人々を監視しているが「鍛錬隊(強制労働をさせられる軽犯罪者)でもないのに、なぜこんな監視を受けなければならないのか」と食ってかかる人もいる。

国境警備隊は砂金の採取にあたる人々以外はあまり見ておらず、「これでは、すぐそばで脱北されても気づかないのではないか」と嘲笑の的になっているとのことだ。