Charaの音楽性を象徴するようなジャンルレスな作品となった「Sympathy」

 昨年デビュー25周年を迎えたシンガーソングライターのCharaが、通算17枚目となるフルアルバム『Sympathy』をリリースした。オリジナルとしては『Secret Garden』以来約2年4カ月振り。今作はくるりの岸田繁や水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミなど、様々なアーティストがゲスト参加。Charaの音楽性を象徴するようなジャンルレスな作品となった。『Sympathy』というタイトルは、「息子が付けてくれたようなもの」と話すChara。そのタイトルに込められた意味とは。

ケンモチくんもコムアイちゃんも、今風だなって

初回通常共通 ジャケ写

――今作では、いろいろな方とやられていて。ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)さんが、作詞作曲と共同プロデュースを務めた「Herbie」は、Charaさんらしさもありながら、とても新鮮に感じました。

 音数がぜんぜん違うからね。それにどういう曲を出して来るか興味があったので、最初は自由に作詞作曲してくださいとお願いしたんですよ。水カンだと、いつも何か物語の人物をテーマにしているから、一応「人魚姫はどうでしょう」と伝えて。

 そこからケンモチくんが出してきた歌詞は、すごくかわいらしい恋愛観だったんです。でも熟女の私が歌っても伝わらないんじゃないかと思って(笑)。私が主演女優だとして、監督のケンモチくんに「ここのセリフはこのほうが良いんじゃないでしょうか?」みたいな感じで、歌詞はちょっと調整させてもらって。

――Charaさんは、もともと水カンがお好きで?

 いろいろチェックするほうなので、面白いなと思って聴いていましたよ。コムアイちゃんとも雑誌で対談したり、一緒にラジオに出たりもして。ケンモチくんとはラジオ局で挨拶したくらいだったけど、話を聞いたらMOND GROSSOのしんちゃん(大沢伸一)に憧れがあったみたいで。私もしんちゃんと一緒にやったことがあったし、すでにそういう世代なんだなって。

 それにケンモチくんって、ノートPCひとつに全部の音が入っているみたいな感じで。全部ソフトシンセで作るから。そういうのも今風だなって。私はいつも、いろんなミュージシャンを集めてやるから。コムアイちゃんも、おしゃれだから、洋服をどこで買ってるのか聞いたら「ネットです」って。これも今風だなって(笑)。

――くるりの岸田繁さんが作曲と共同プロデュースを務めた「Tiny Dancer」は、カントリーっぽい雰囲気ですね。

 カントリーとエレクトロの融合みたいな感じ。ボーカルも素朴だけどしっかり芯のあるようなものになっていて。その歌とアコギは、自宅スタジオでプリプロをして録ったデモを、本ちゃんで使っているんです。本ちゃんも録ったけど、デモのテイクのほうが良いバイブスが出ていたので。

 歌に関して言うと、構えてなくて、不安もありながら初めて歌った恥じらいも感じられて。歌いすぎる感じがなく、私はすごく気に入っています。あとリズムは、岸田くんが段ボール箱を叩いた音をサンプリングして使っていて。

――曲の頭から、チーンとか卵を割ってジュ〜とか、朝ご飯みたいな音が入っていますね。

 1日の始まりのイメージもあったので。途中に入っているトクトクトクと牛乳を注いでいるみたいな音は、実がどろっとしたお酒をコップに注ぐ音だそうです。

――岸田さんとは、どこかで接点が?

 共通の知り合いも多いし、スタジオやフェスの裏で挨拶したりとか接点はたくさんあって。最近大阪のイベントで一緒になったときに打ち上げの二次会ではじめてちゃんと話をしたんだけど、一緒にやろうとかそういう話はなくて、ただ「ウェーイ!」って飲んで話しただけで。

 もともとこの曲は「Tiny Dancer」という歌詞とモチーフだけ前からあって、メロディに試行錯誤していたんです。大阪から帰っていろいろやっているなかで、「ちょっとくるり的な感じもあるな」と思って。もちろん私のイメージするくるりで、あくまでも「くるり的」だけど。そこで、それならいっそ本人に頼んでしまおうと。

 すぐ岸田くんに、歌詞を直接LINEしたんだけど、私だってわからなかったみたいで(笑)。後日改めて送ったら、4つくらいメロディのパターンを作ってくれて、「どれが良いですかね」って。彼はストリングスのアルバムを出したりとか、作曲オタクなところがあるので、そういう良さも出してくれて、すごく良い曲になりました。

「Funk」はプリンスのオマージュで、息子が作詞

――タイトル『Sympathy』は、シンパシーを感じ合えるミュージシャンとの制作を端的に表したものですね。

 『Sympathy』というタイトルは、息子が付けてくれたようなものなんです。最初は『Intimacy』を考えていたけど、あまり一般的には使わない言葉だから直感的には伝わらないと思って。それに代わる何か良い言葉はないかと、彼に聞いたら『Sympathyは?』と。「おお〜それ良いじゃん!」とすぐ決まりました。

 そもそも考えていた『Intimacy』は、「親密さ」という意味で、それって言葉にしなくても心で通じ合えるというもの。なので今回はCharaとやりたいと言ってくれているアーティストで、お互いにSympathyを感じていて、Charaに対して愛を持ってくれている人達が参加してくれています。

 たとえばKan Sanoくんは、今年回った小編成のライブでバンマスをやってくれていて、それ以前から付き合いは古いけど一緒に制作をやったことがなかったから、このタイミングでやるのも良いなと思って。

 mabanuaくんは何年も一緒にやって、すでに姉弟かのような感じ。もともとドラマーだからリズムのセンスが良いし、器用なのでベースも弾けるし。ドラマーで、アレンジまで含めたサウンドプロデュースができる人は少ないので、本当に貴重な存在ですね。

 野村陽一郎くんも、昔からのミュージシャン仲間です。私が部長の寿司部でも、彼は仮部員で参加していて。「そういえば何もやってなかったね。そろそろやる?」みたいな流れで、「Love pop」という曲をプレゼンしてくれました。

――その「Love pop」は、分かりやすくCharaさんっぽい曲ですね。

 本当の私は「Funk」という曲のほうだけど、みんなのイメージとしてはきっとこっちだよね。陽一郎の「俺のなかのCharaはこれだ!」みたいなプッシュがすごくて(笑)。

 実は、前作の『Secret Garden』のときはディレクターがいなくて。女性の老いをテーマに、寂しさと優しさがあるフェミニンな良いアルバムだったけど、少し地味だったかなという反省もあったんです。でも今回は、担当が付いたことで、ポピュラリティーみたいなものを意識することができました。その部分で「Love pop」はポピュラリティーという意味で、良い立ち位置の曲になりましたね。

――本当のCharaさんはこっちのほうと、話に出た「Funk」は、プリンスの世界観ですね。イントロのギターとか「パープルレイン」みたいで。

 プリンスが大好きなので、完全にオマージュです。そのプリンスも昨年他界してしまって、やらずにはいられなかったみたいな。自分でサウンドプロデュースをすると、影響を受けたものがこんなに出まくってしまうという典型ですね(笑)。ギターは名越(由貴夫)くんで、「プリンスっぽくして」って。「ピンク色の雲のようにサイケデリックで」と話したら、最高にカオティックなギターを弾いてくれました。

 あとこの歌詞は、息子が書いてくれました。自宅でこの曲の作業をしているときに、たまたま学校から帰ってきたから、「暇だったら詞を書かない?」って誘ったら「良いよ」って。ふたりでキッチンのテーブルを挟んで、15分くらいでできたんじゃないかな?

――これまでに親子共演は?

 イベントでドラムを叩いてもらったりとか、ちょこちょこあったけど、歌詞を書いてもらったのは初めてです。楽器全般ができるので、もっといろいろやりたいですけど、高校生なので今は学業優先ですね。

――作詞とアルバムタイトルも考えてくれた息子さんには、印税を払わないと(笑)。

 そうだよね。でも私が管理しますけどね(笑)。「作詞クレジットで名前が載るけど何が良い?」って聞いたら、「HIMI」ってLINEで。

 息子もプリンスが好きだし、親子で好きなプリンスを題材にしてこういう曲を完成させることができたのは、すごくうれしいです。彼も「母ちゃんっぽい曲だ」って、言ってくれました。

Charaラップで、伝えたい言葉を前に出した

Chara

――最近のCharaさんの作品ではお馴染みの、韻シストのメンバーも3曲に参加していて。

 ここ数年付き合いがあって、BASIくんとも1曲一緒にやりたいと思っていたんです。彼のラップは、ロマンチックなことをさらりと歌うので、それがかっこいいと思って。

――その「Intimacy」では、Charaさんもラップしていて。

 もともとラップという意識はなくて、ただ言葉をリズムに乗せたりメロディからはみ出させたりということはやっていたんです。でもあくまでもメロディありきで、そこに歌詞を載せるというスタイルで、今回もラップというよりは、そういう感覚ですね。

 言いたいことがたくさんあって、普通のメロディ構成だといつも入り切らないことが多くて。それがこういうスタイルの構成だと、けっこう言えるっていう。言い過ぎかと思うほど言えたので、「こういう手法もけっこう良いな〜」って思っちゃいました。

――Charaさんのラップアルバムも聴いてみたいですけど。

 それは、ラップをやってる人に失礼になるので、たまにくらいが良いんじゃない(笑)? 

 今回のアルバムは言葉というものを、もっと伝えたいし読んでほしいと思ったんです。私は言葉が好きだけど、メロディを優先するからいつも言葉を削いだり、言葉を引き立たせるために、他のものを加えたりとかしていて。でも本当は、言いたいことが他にもいっぱいあるんです。だからこの曲は、映画のディレクターズカット版みたいな感じかな。この曲が、アルバム制作の最初だったからわりとそういう方向で全体に進んで、伝えたい言葉を前に出したアルバムになったと思いますね。

――ほとんどが誰かとの共作ですが、最後の「小さなお家」だけは、Charaさんお一人ですべてやってる感じで。

 最後に入れたいと思って、フッとできた曲です。最初はボーナストラックにと思ったけど、これって包み隠してなくて私らしいと思ったのでボーナスでもないなって。それで12曲目までがA面で、この曲はB面みたいな感じ(笑)。

 12曲目までは全部やさしい感じだったり、切なさを越えて言葉で全部を伝えようとしている感じがあるけど、この「小さなお家」だけは、「言葉では伝わらなかった」と言っている歌なんです。結局言葉が意味を持たなかったと。

――そういう裏返しのシニカルさも、Charaさんらしい表現ですね。それをピアノと歌だけで表現していて。

 サイケデリックにしたかったんだけど、普通にやるともうちょっとバラード過ぎてしまったと思うんですよね。でもこのミックスが最高で、一発でOKを出しました。

 ピアノと歌だけだけど、どこかエフェクティブで。ピアノの音を伸ばしているのが、シンセのように聴こえるんです。あとピアノのペダルの音が、バスドラの音のようになっていたりとか。

――ミックスだけで、こんな風になるんですね。

 そうなの。エンジニアさんってすごいんです。最初に私たちが描いた絵に、それに合った額縁にはめてくれる人なんで。私も職人気質のところがあるから、より“シンパシー”を感じます。

――しかしそういう“シンパシー”を感じられる相手は、きっとそう多くはいないですよね。

 少なくてもいたほうが良いですよね。友だちが何十人とか何百人っていうのも良いと思うけど、私は本当に“シンパシー”を感じられる相手が、ひとりかふたりでもいれば良いと思うほうです。

――日常生活でもシンパシーを感じる相手は少ないわけだから、それがミュージシャン同士となるとなおさらで。今作で参加したミュージシャンの存在は貴重ですね。

 でも、私って誰とやっても基本大丈夫なんで。たとえば着たことのないお洋服でも、まあまあ着こなせちゃうって言うか(笑)。アクセサリーで変化を付けるとか、切ってアレンジしちゃうとか、ただ着るのではない、いろんな他の道を模索するんです。だから、今作もいろんなミュージシャンとやっているけど、結果的には「Charaっぽい」と言われるのかな〜(笑)。

(取材=榑林史章)

作品情報
New Album 『Sympathy』
7月19日リリース
[通常盤初回仕様](CD)KSCL-2926
[初回生産限定盤](2CD)KSCL-2924〜5
■DISC1収録曲(初回・通常共通)

1. Tiny Dancer
2. Stars☆☆☆※江崎グリコ「ビスコ」CMソング
3. Sympathy※大塚製薬「ファイブミニ」CMソング
4. Mellow Pink
5. Funk
6. Love pop
7. Herbie
8. Symphony feat.mabanua
9. Intimacy
10. Darling Tree
11. KILIG
12. Sweet Sunshine※渋谷マークシティ「Singing Christmas 〜私色を奏でよう〜」タイアップソング
13. 小さなお家

■DISC2収録曲(初回のみ)
Chara ALL TIME BEST LIVE
“Tremolo Sparks” 2017.1.22 at 昭和女子大学 人見記念講堂

1. 世界
2. Break These Chain
3. 大切をきずくもの
4. 月と甘い涙
5. あたしなんで抱きしめたいんだろう?
6. やさしい気持ち
7. Happy Toy
Bonus Track
8. メンバー紹介

<参加ゲスト>

Kan Sano、岸田 繁(くるり)、kensuke ushio(agraph)、
ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、mabanua、
BASI(韻シスト)、TAKU(韻シスト)

ライブ情報

Chara Live Tour 2017 “Sympathy”

09.01  恵比寿 LIQUIDROOM open 18:45 / start 19:30
09.03  福岡 DRUM LOGOS open 17:30 / start 18:00
09.08 名古屋 ZEPP NAGOYA open 18:30 / start 19:00
09.17 大阪 ZEPP NAMBA open 17:00 / start 17:30
09.24  東京 昭和女子大学人見記念講堂 open 17:00 / start 17:30