王岐山氏。2012年11月、北京の人民大会堂で撮影(Feng Li/Getty Images)

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 習政権の反腐敗キャンペーンの辣腕を発揮する中国共産党中紀委書記の王岐山。マスコミの露出がぱったりと止んだこの40日間で、次なる「大トラ(江派の腐敗官僚)」を仕留めたことが明らかになった。失脚したのは前甘粛省委書記の王三運と重慶市委書記の孫政才。今回の件で、王岐山がマスコミ報道から消えた後には必ず「大トラ」を仕留めて帰ってくるとの見方に対する信ぴょう性が、ますます高まっている。

 

 公共の視野から一カ月以上も「雲隠れ」していた王岐山が、ついに姿を現したのは6月22日。国営メディアは王岐山の貴州視察について報道した。

 そして7月11日、「重大な規律違反」により全人代教育科学文化衛生委員会副主任委員で、前甘粛省委書記の王三運に対する調査が開始された。

 王三運が今回狩られた大トラかとの憶測が広がる中、3日後の7月15日には重慶市委書記の孫政才が突然、解任された。後任には、現貴州省委書記の陳敏爾が充てられた。

 秋開催される上層部人事入れ替えの中共19大会と、夏恒例の党非公式会談「北戴河会議」を控えたこのタイミングで、現職の政治局委員である孫政才が突然罷免されたことで、重慶の政界に衝撃が走り、さまざまな憶測が乱れ飛んだ。

 時事評論家の夏小強氏は、19大の前に孫政才が失脚したことは、これから中国の政局に大きな変化が起きることを示唆していると分析し、3つの根拠を挙げている。

 1つ目は、孫政才は2012年の中共18大以来、現職の政治局委員と直轄市書記として初めて失脚した人物であるという点だ。習近平国家主席は、この大トラ狩りでまたもやこれまでのセオリーを打ち破ったと同時に、今後はさらに上層部の江派腐敗官僚を大トラ狩りの標的とするという習主席の明確な意思が示された。現職の政治局委員を何の事前通告もなしに突然罷免できれば、どんな立場にある幹部も問責され調査される可能性がある。

 2つ目は、孫政才がポスト習近平候補として目されていた人物の一人だったという点だ。これまでの慣例に従えば、次期総書記の任命権は現職の習主席ではなく、前総書記の江沢民にある。その後継者たる人物を19大の前に政治の表舞台から引きずり下ろすことで、このところ海外で江派勢力が行わせていた習陣営のスキャンダル暴露の工作に、強烈なカウンターパンチを食らわせた。同時に、次期後継者がつぶされたことで江沢民派は大きな打撃を被った。

 3つ目は、習主席は孫政才を失脚させることで、臂平時代から続く「前総書記が次期総書記の任命権を持つ」という不文律を破棄しようと試みている、と考えられる点だ。習主席は今、中国共産党内部にある数々の古い慣例を順に打破していこうと試みているのが分かる。こうした意表を突く動きは、中国の政局に、不確定な要素と可能性をさらに増やしている。

 孫政才が罷免されたあと、7月17日に王岐山は「人民日報」に5000字あまりの長文を寄稿し、5年にわたって行ってきた中紀委の巡視監察を総括した上、(腐敗官僚を成敗する)鋭利な剣としての働きをより発揮させ、19大以降もこの巡視監察を継続すると強調した。

 時事評論家の周暁輝氏は、この王岐山の発言はかなり意味深だと分析している。反腐敗運動をこれからも継続すると宣言したことで、王と習主席が緊密な同盟関係にあると示した。両者を決裂させようとする外部の動きにハッキリ態度を見せ、さらに王岐山が19大以降も中央政治局常務委員として留任することをほのめかしているからだ。

 重慶市委書記に新たに任命された現貴州省委書記の陳敏爾は、習主席のかつての部下であり腹心と評されていた人物だ。王岐山が貴州を視察したとき、陳敏爾に、重慶市委書記に任命される前の心得を手ほどきしたのではないだろうか。

(翻訳編集・島津彰浩)