自転車世界一周を始める前は「韓国には行かなくてもいいや」と思っていました。インターネットで韓国の情報を探ると「竹島」「慰安婦」「靖国参拝」「韓国併合」と、嫌な気持ちになるものが引っかかり、忌避感を抱くには十分でした。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。日本にいると韓国の悪いニュースを目にすることが少なからずあったので、韓国の旅には不安と緊張を抱えていました。しかし、実際には嫌なことは1つも起きませんでした。

◆ワーキングホリデー

韓国への考え方が変わったのは、オーストラリアのワーキングホリデーでした。韓国人の友達ができたのが理由です。彼らも多数、ワーキングホリデーでオーストラリアに来ていて、一緒に農場で働きました。考え方や生活習慣が近いので、ヨーロピアンよりは彼らといる方が楽でした。英語のレベルも近いのでコミュニケーションが取りやすく、気が付くといつも一緒でした。韓国の子が「オッパー」「オンニィ」と誰かを呼ぶ声は今も頭に残っています。自家製のキムチもごちそうになりました。誰にも文句を言わず、嫌な仕事を一人で引き受ける人がいました。右も左も分からない場所で、敵わないくらいに親切にしてくれた人がいました。そんな心ある人たちに触れて彼らの国を見てみたくなりました。

農場で一緒に働いていた時の写真



◆韓国を自転車で走る

2009年5月、地元・福岡から壱岐、対馬を経て船で韓国の釜山に渡りました。約1年ぶりの海外でした。ところが、出鼻をくじかれました。暗証番号が分からなくて銀行のカードが使えなくなったのです。現地通貨のウォンは手元にありません。日が暮れたので、両替所も閉まっています。仕方がないので釜山の鉄道駅に行きました。大きな駅だったので、近くのベンチで文庫本を片手に、うつらうつらしながら夜を明かしました。

朝になって、港の両替所で韓国ウォンを手に入れることはできましたが、次もまたうまくいきません。あてにしていた宿が閉まっていたのです。「温泉マークの看板は安宿だったはず」と、怪しい情報を頼りに旅人の勘で安宿を探します。見つけた1軒目は温泉マークそのままの銭湯でしたが、2軒目は安宿でした。シングルの部屋が1泊2万ウォン(約1650円)。十分な広さの室内にはベッド、テレビ、机、椅子があって冷蔵庫まで置いてあります。同じお金でドミトリーに泊まるつもりでいたので、それと比べるとかなり好条件の部屋でした。4泊しました。40〜50代の夫婦が経営していました。出発の際に宿の主人が「また、おこしくださいませ」と言ってくれました。覚えたてなのか、ぎこちない言葉でしたが、胸が熱くなりました。

テレビをつけるといやらしい映像が流れていたので、ひょっとするとラブホテルだったのかもしれませんが、また遊びに行きたいところです。

快適だった宿の部屋



お世話になったご夫婦



海沿いの道を走っていると、小さな上り坂で1台のバイクが止まりました。ホンダの100ccバイクで旅行している若い女性でした。彼女はサムスン製のカーナビを付けていました。珍しかったので見せてもらうも、2人ともヘルメットですから距離感が掴めません。コツコツと頭をぶつかっては「ソーリー」と謝ります。それがおかしくて頬も緩みます。少しお話しました。別れ際、走っている姿を見たいのか「先に行ってよ」と催促。「えぇ〜この坂を上るの」と少しおどけてみせると、彼女は笑いながら自転車を押してくるじゃないですか。青春でした。海に向かって叫びたくなるような甘酸っぱさで胸がいっぱいになりました。

ドキドキした海辺のひととき



安全のため、自転車には旗を立ていました。日本国旗と、時期に合わせて鯉のぼりでした。そんな自転車で国道のサービスエリアに入ったら売店のおばちゃんに歓迎されます。韓国語オンリーだったのですが、おばちゃんのパワーは世界共通。ニコニコしながら「これを持っていけ」と日の丸の下に韓国国旗の太極旗を結んでくれました。お礼に鯉のぼりを渡しました。その旗は目立つのか、よく車が止まっては水や林檎をもらうことがありました。

太極旗をくれたおばちゃん



釜山からソウルまで韓国を縦断しましたが、嫌なことはなにも起きませんでした。

韓国人のサイクリストたち



肩を組んで



日本海側の江陵と首都ソウルの2箇所で、現地の韓国人のお宅にお世話になりました。一人は対馬、一人は釜山近郊で会いました。彼らも自転車で旅をしていました。寝床を用意してもらい、食事もごちそうしてもらい、本当に良くてもらいました。日本と韓国のことについても、大いに語り合いました。WBC、キム・ヨナ、サッカーなど、ライバルとしての韓国。韓国人目線で、対馬にでさえ数多く見かけるパチンコ店の異常さ。日本人目線で、韓国人の英語習得のレベルの高さ。ネットゲーム中毒は両国に共通する悩みかもしれません。そして何よりも強く残るのが、日本が韓国を併合した話。

これには「日本と韓国は家族にはなれない。友達として仲良くなるのが一番だ」と自分なりの考えを伝えました。言語や文化の違う2つの国を一緒にしたら無理が生じます。それよりは、別々の国でそれぞれの主権を認めて、互いに尊重し合えるような関係を目指すべきだと思っています。

江陵にて



ソウルにて



走行中に立ち寄った商店のおばあちゃんが、私が日本人だと分かると懐かしそうに日本語を話してくれるという一幕もありました。

釜山の魚市場



日本の景色と重なった韓国の漁村



韓国料理に舌鼓をうつ



韓国のロッテリア



自転車世界一周の旅では150の国を訪問しましたが、その中でも韓国は1、2を争うほどに居心地のいい国でした。

◆またいつか韓国へ

チャリダーマンの旅は終わりましたが、韓国を旅したときに比べても「韓国嫌い」の声が大きくなっている気がします。私だって韓国のやり方を全面肯定できるわけはありません。それでも、旅の経験があるので、昔のような忌避感・嫌悪感に支配されることはありません。いつかまた韓国を旅するつもりです。

韓国という国に抱く印象は人それぞれ。そうした無数の「韓国感」の1つとして、こうした記事を書いてみました。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

自転車世界一周取材中:http://shuutak.com

Twitter:@shuutak

Facebook:https://www.facebook.com/chariderman/

DMM講演依頼:https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/

・チャリダーマンには人生を駆けた自転車世界一周を一冊の本にするという夢があります。興味を持っていただける出版社、編集者の方いましたら、ご連絡いただけると幸いです。)