7月8日、米バージニア州シャーロッツビルで、ロバート・E・リー将軍像の撤去計画に抗議する白人至上主義団体「Ku Klux Klan(KKK)」などによるデモ行進があった。

 南部連合旗を掲げる者、白い頭巾を被る者、そして、デモへの反対者も抗議行動、警察を挟み睨み合う事態ともなった。

 南北戦争時、戦力、経済力で圧倒的劣勢に立つ南部連合で、一時攻勢にも転じた陸軍指揮官リー。しかし、自身は奴隷制支持者でもなく連邦離脱も望んでいなかった。

 開戦直前、エイブラハム・リンカーンから連邦陸軍司令官への就任要請を受けながら、故郷バージニアが連邦を離脱したことから辞任した経緯があり、強い故郷愛を持った人格者として人気は高い(このあたりは前回コラムでも詳述)。

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愛車の名前にもリー将軍の名が

 南部ジョージア州の片田舎を舞台に、1979年から85年にかけ放映され人気を博したテレビドラマ「The Dukes of Hazzard」(日本では80年にワンシーズン『爆発!デューク』の邦題で放映)でも、主人公たちが乗り回す愛車の名前が「The General Lee」となるほどに、親しまれる存在なのである。

 1863年.ジョージア州アトランタ。リー将軍のバージニアでの勝利が告げられ、盛り上がりを見せるチャリティ会場。

 続けて、北軍の封鎖を強行突破、貴重な物資を届けたレット・バトラー船長が称えられる。南北戦争出征直前、思いを寄せるアシュレーが結婚したことに失望、自らも結婚に踏み切った夫が戦場で病死、未亡人となったばかりのスカーレットにレットは近づく。

 勝敗の行方を大きく左右するゲティスバーグでの戦いでの戦傷者リストに見入る人々。劣勢続く南軍。負傷兵、避難民がジョージアへと多数流れ込む。北軍ウィリアム・シャーマン将軍の進撃は続く。そして、アトランタ炎上・・・。

 「侵略者」たる北部人から、心血注ぎ込んだ地「タラ」を守らんと、力強く生きるヒロイン、スカーレット・オハラの物語『風と共に去りぬ』(1939)は、南北戦争開戦から戦後再建(reconstructionレコンストラクション)に至るまでの南部社会の変容が見て取れる大河ドラマ。

 ジョージア出身の作家マーガレット・ミッチェルの「Old South」を懐かしむ奴隷制への視線が批判の対象となることも少なくないが、南北戦争を背景とした長編文学の代表作であることに間違いはない。

 アラバマの農園主ペイトンは、いま、アウルクリーク橋で絞首刑に処されようとしている。

 地域社会での立場上、その政治信条は南部人のそれそのもの。しかし、事情あって軍人とはならなかった。だから、いつか、南部のためになるなら何でもやってやろうと思っていた。そんなとき、北軍がアウルクリーク橋近くまで来ていることを知ったのだ・・・。

 ペイトンは橋下の川に投げ出された。目を覚まし、銃撃を免れ、泳ぎ、走り、家族の待つ農園へと帰りつく・・・。

 南北戦争を舞台とした「アウルクリーク橋の出来事」は、米文学史上最高の短編の一作との評価も高い。

 辛辣で皮肉たっぷりの「悪魔の辞典」で知られるジャーナリスト、アンブローズ・ビアスの作だが、北軍の一員として数々の激戦を経験したビアスが描く南部人の物語は、北部南部、勝者敗者、戦いの大義を超えて、1人の人間としての生と死を見つめる。

 その映画化『ふくろうの河』(1962)も、『冒険者たち』(1967)などのフランス人監督ロベール・アンリコによるカンヌ国際映画祭パルムドール(短編)受賞の秀作だが、当時絶大な人気を誇っていたテレビシリーズ「Twilight zone(邦題「ミステリーゾーン」)」の一篇として放映もされた。

 「創造力の鍵でこのドアを開けて下さい。そこには異次元の世界が広がります。音の次元、視覚の次元、心の次元。影と実体が交錯する世界。トワイライトゾーンに足を踏みこもうとしているのです」

 この冒頭の語り(シーズン4、5。3までは少々異なる)のごとく、絶望的状況に追い込まれた主人公は、時空を超え・・・。

 南軍の衛生兵であるニュートン・ナイトは、ミシシッピ州ジョーンズ郡で小さな農場を営んでいた。しかし、奴隷はいなかった。

ニュートン・ナイトの実話映画

 戦場にやって来た甥から、作物などを南軍に「徴収」されている故郷住民の苦境を聞くニュートン。その甥が撃たれ死亡したため、遺体を家族に届けようと軍隊を離れるうち、敵前逃亡扱いとなり、沼地へと逃げ込んだ。

 東部戦線ゲティスバーグでの戦いと時を同じくして西部戦線の行方を大きく左右することになったミシシッピ州ビックスバーグでの戦い以来、脱走兵は急速に増加。

 10月、脱走兵や逃亡奴隷、白人黒人が混在するコミュニティ「ナイト・カンパニー」を結成、「Free State of Jones」は「独立」した・・・。

 『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016)は、逃亡奴隷、脱走兵、人種を超え、行き場を失った人々の「自由州」を作り上げたニュートン・ナイトの実話の映画化。

 「Southern Yankee」とも呼ばれる彼らは、南部連合と対峙、衝突を重ねながらも、黒人奴隷制存続をかけ戦う南部に、人種混在コミュニティを堅持したのである。

 一方、「Galvanized Yankee」と呼ばれる元南軍兵たちは、連邦軍の一員として戦っていた。

 「1863年12月8日、リンカーン大統領は、南部連合軍捕虜が連邦軍に加わりフロンティアでインディアンと戦えば自由を得られる、と宣言した」

 そんな字幕から始まる『西部の二国旗』(1950)は、戦争捕虜であるジョージア出身のタッカー大佐の小隊が、1864年秋、イリノイ州の捕虜収容所からニューメキシコへと、同胞とは戦わないとの約束のもと、先住民との戦いに参加するため向かう決断をするところから始まる。

 すでに捕虜交換は行われなくなっており、収容所を出るにはほかに方法がなかったのである。

 先住民と戦う辺境の連邦軍にとって、彼らは「援軍」だった。しかし、「Galvanized(亜鉛メッキされた) Yankee」と呼ばれる通り、「北軍というメッキ」がはがれたら南部人。お互い、心底信じ合うことができない。

 それでも、「ここは南北戦争とは無縁だ。話を混同するのはやめよう」「インディアンを倒すだけだ」と、ともに戦い・・・。

 南北戦争中も、インディアン戦争は続いていた。黒人の人権を無視した奴隷制度をめぐる戦いをしながら、先住民の人権を無視した戦いについては、北部も南部も、「米国民」の目的は一致していたのである。

 「インディアンと戦いに来たのか?」

フロンティアを挟んでの異文化交流の物語

 僻地ヘイズ砦で、士官に問われたジョン・ダンバー中尉は答える。

 「フロンティアを見ておきたい。なくなる前に」

 1863年、テネシーでの戦いで、重傷を負ったダンバーは、足を切断されると思いこみ、自殺行為とも言える大胆な行動で北軍に勝利をもたらし、栄誉勲章を得た。そして、勤務地を自由に選ぶ権利を与えられ、やって来たのである。

 さらなる辺境ダコタ準州セッジウィック砦へと赴任。無人で荒れ果てた砦を修復、独り生活を始めた。やがて、スー族と交流を深め、「オオカミと踊る男」との名も得・・・。

 アカデミー賞作品賞、監督賞、作曲賞など7部門受賞の『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)は、チェロキーの血を引くケヴィン・コスナーが描くフロンティアを挟んでの異文化交流の物語。そして、先住民の未来への不安が色濃く感じられる作品でもある。

 冬の住処へと移動していくスー族。それまでの様子を詳述した日記を取りに砦へと戻るダンバー。

 しかし、そこには騎兵隊が駐屯。先住民の出で立ちのダンバーは「反逆者」とされ、袋叩きにされ、司令部に送り返され処刑されることになる。

 ダンバーは、その身を案じたスー族戦士の奇襲攻撃で助けられた。しかし、連邦軍が自分を追ってくることが分かっているダンバーは、スー族に迷惑をかけたくないと、雪山の奥深くへと向かう・・・。

 前進し続けることで幸福を掴むという白人のフロンティアスピリットは、フロンティアの反対側から見れば、残虐な侵略行為であり、伝統文化の破壊でしかない。

 「The government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth」

 アーカンソー州ジェンキンスフェリーの戦場で、リンカーン大統領を前に、ゲティスバーグ演説の文言を暗唱する兵士の姿から始まるスティーブン・スピルバーグ監督の『リンカーン』(2012)は、1865年1月、「合衆国憲法修正第13条(Thirteenth Amendment)」可決のため奔走する人々の物語。

 バージニア、ピーターズバーグ郊外の「No man’s Land(中立地帯)」。

 アレクサンダー・スティーブンス副大統領など南部連合使節団が連邦軍支配域へと向かって行く。ホワイトハウスでは、和平工作が進むことを知ったウィリアム・スワード国務長官がリンカーンを叱責している。

 「和平使節団が来たらどうするつもりなんだ?」

合衆国憲法修正第13条の可決が必須

 「話を聞く」と答えるリンカーンに「民主党も聞くだろう。新聞も。騒ぐぞ、和平交渉に来てるのなら、奴隷問題で刺激するなと。票集めの根回しはすべて水の泡だ。修正案か和平か、両方は無理だ」

 奴隷解放を確固たるものにするには、合衆国憲法修正第13条を可決することが必須だった。しかし、和平を先んずれば、奴隷制廃止の道は遠くなるという頭の痛い現実もあった。

 必要なだけの支持者がなかなか集まらないなか、虚々実々の駆け引きが繰り広げられ、1865年1月末、何とか可決。そこから映像は、終戦へと向かう様子を追う。

 4月9日、バージニア州アポマトックス・コートハウス。連邦陸軍総司令官ユリシーズ・グラントと相まみえるリー将軍。降伏。

 そして、14日。俳優ジョン・ウィルクス・ブースの放った銃弾で致命傷を負い、翌日、リンカーンは無念の死を遂げる。 

 4年に及ぶ戦いは終わった。「レコンストラクション」が始まった。

 シャーマン将軍が通り過ぎた地は荒れはてた。しかし、タラは生き伸びた。地獄と飢餓に直面して。

 重い足をひきずりながら戻って来た兵士たちとともに、新たなる「侵略者」、より残酷で悪徳に満ちた「Carpetbagger」が北部からやって来た。タラを手放したくないスカーレットに、多額の税金がのしかかる・・・。

 『風と共に去りぬ』後半は、レコンストラクションの時代に、タラの地を守ろうと奮闘するスカーレットの物語。レットが3番目の夫となり、恋愛ドラマもクライマックスを迎える。

 映画でも憎々し気に描かれる「カーペットバッガー」とは、カーペット生地のバッグに持ち物一切を詰め込み南部に到着、「搾取」を行おうとしたとされる白人共和党員のこと。

 多くは中流階級の実業家で、政策を支持する南部白人スキャラワグ(Scalawags)や解放奴隷(Freedmen)と連携、南部「近代化」をすすめ、共和党支配の世界を作っていこうとしたのである。

 1865年6月、解放奴隷が初めて自身の土地を耕す姿を『ニュートン・ナイト』は映し出す。しかし、3か月後、新大統領アンドリュー・ジョンソンによって、彼らへの土地に関する公約は撤回された。

 連れ去られ、強制的に働かされる黒人少年を、ニュートンは連れ戻そうとするが、法廷は年季奉公(Apprenticeship)の名目で合法と判断。ニュートンは「雇い主」に70ドルたたきつけ、少年を連れ法廷を出る・・・。

『国民の創生』に描かれた真逆の描写

 こうした「Local law」に基づく問題は少なくなく、連邦議会は南部を戒厳令下に置き軍隊を増員、「Military Reconstruction」と呼ばれる時代が始まった。そして、初めて、解放奴隷は政治への参加が認められることになった。

 しかし、KKKが黒人教会を燃やし、黒人は吊るされ、選挙妨害が横行する様を、『ニュートン・ナイト』は映し出す。

 北部ペンシルベニアと南部サウスカロライナの一家の南北戦争前夜からレコンストラクションまでを描く大河ドラマ『国民の創生』(1915)には、全く逆の描写がある。

 サウスカロライナでは、白人に不利な裁判が黒人により行われた。主人に忠実な「servant」がカーペットバッガーに票を投じなかったため処罰された。黒人が多数を占める下院では異人種間結婚が認められた。そんな南部を黒人支配の「Anarchy」から救ったのが「Great Ku Klux Klan」・・・。

 「この映像に描かれているのは、南北戦争とレコンストラクションの歴史的記録であり、今日の人種意識反映したものではない」

 そんな字幕から第2部が始まる『国民の創生』は、編集やモンタージュ、クローズアップ、フラッシュバックなどの技法で映画史に残る大作だ。

 ただし、南部ケンタッキー生まれのD・W・グリフィス監督による1905年発表のトマス・ディクソンの「反アンクル・トム小説」の映画化作の描写は、暴力的で無知な黒人をしつけ直す英雄KKKといった人種主義が色濃い。

 そのため、今日(こんにち)、差別表現への批判から評価を著しく落としているが、映画版にその描写はないものの、小説版「風と共に去りぬ」にも否定的存在ではないKKKが登場、人種差別用語も珍しくない。

 KKKは、1871年には連邦政府が「Terrorist Organization」に指定、衰退していくが、「Red Shirts」「White League」のような白人至上主義集団による暴力行為は続いた。

 そして、南部民主党系の「リディーマー(Redeemers)」と呼ばれる者たちがスキャラワグを攻撃し、州や地方政府の多くを取り戻していくなか行われた1876年の大統領選は大接戦となった。

 その結果は議論を呼んだ。しかし、共和党ラザフォード・ヘイズの勝利が確定。そこには、南部民主党がヘイズ当選を黙認する代わり、共和党がまだ残っていたルイジアナ、サウスカロライナ、フロリダの南部3州から連邦軍をすみやかに引き上げることに同意、という「1877年の妥協」があった、というのが多くの歴史家が指摘するところである。

 この非公式の妥協で、レコンストラクションは終わった。

奴隷制の完全廃止後も続いた差別と対立

 黒人は実質的に政府の権力から排除された。そして、リディーマー民主党の圧倒的優位な地「solid south」とよばれる社会状況が1966年まで続くのである。

 ニュートンは解放奴隷と「結婚」した。しかし、ミシシッピでは異人種間結婚は認められておらず、人種をめぐる戦いは続いた。

 奴隷制の完全廃止は維持されたものの、「ジム・クロウ法」が南部各地の州法として制定され、分離による差別、対立は持続した。

 そして、ニュートンのひ孫も、自らの8分の1の黒人の血ゆえ、白人との結婚を認められないのが1940年代のミシシッピの現実であることが『ニュートン・ナイト』が描くもう1つの物語である。

 『国民の創生』は、1915年2月、米国で公開され、その人種差別的描写に上映禁止運動も起きた。

 しかし、すでに、軍や警察の摘発に加え、レコンストラクションの終焉で存在意義も薄まり、自然消滅状態にあったKKKが、1915年末、アトランタで、白人伝道師により再興。プアホワイトの絶大な支持を得、1920年台には最盛期を迎えるが、指導的立場にあったD・C・スティーブンソンが起こした女性拉致事件から再び急速に失速していくことになる。

 1960年代には公民権運動の中心地となり、今はヒップホップの中心地、リベラルなメディアCNNもあるアトランタへとやって来た「爆発!デューク」の主人公たち。その愛車はもちろん「The General Lee」。渋滞に巻き込まれ、隣り合う車から様々な言葉をかけられる。

 「急がないと、Klanのミーティングに遅れるわよ、下衆野郎!」「南部はまた盛り返すぜ!イェーハー!」「いいルーフじゃない!21世紀の世界に加わりな!」

 「The General Lee」のルーフには、南部連合旗(レベルフラッグ)がペイントされているのである。

 テレビで大人気だった頃、そのことは、大して話題とならなかった。しかし、映画版『デュークス・オブ・ハザード』(日本劇場未公開)が公開された2005年、社会は変わっていた。

 南北戦争の論理同様、自分たちの歴史のシンボル、と肯定的に語ってみても、奴隷制や有色人種差別を正当化する人々のシンボル、と考える者は少なくない。

 2015年、サウスカロライナの黒人教会での乱射事件の後、南部連合旗が議論の対象となったことは記憶に新しい。

 1920年代の最盛期には600万人いたとも言われるKKK構成員も、今では数千人規模であるという。しかし、ドナルド・トランプ大統領就任の頃から、米国各地で極右勢力が勢力を盛り返しているとの話はよく聞かれる。

 そして、社会が内向きとなっているのは、米国ばかりではなく、世界的傾向なのである。

相手の立場に立って考えることの大切さ

 「この国は日々暮らしにくくなっている」「ユダヤ人に仕事を取られ、家主は日本の銀行、近くには黒人が住んでいる」

 酒場で差別意識丸出しに友人にまくしたて、ビルは、ドアから外へと出ていった。しかし、そこには見慣れぬ世界が広がっており、ナチス占領下のフランスで、ユダヤ人扱いされ、追われ、撃たれてしまう。

 気づけば、目の前にはKKKの面々。今度は黒人扱いされ、縛り首にされそうになる。何とか沼地に逃げ込んだものの、そこには「ベトコン」の姿。米兵に助けを求めるが、いきなり撃たれ・・・。

 映画版『トワイライトゾーン』(1983)は、かつてのテレビシリーズの雰囲気そのものにスティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ミラーなど一流監督が描く4話オムニバス。

 ジョン・ランディス監督によるその第1話は、昇進を逃し、不遇への愚痴をこぼしているうち、差別的暴言へと転じてしまった男の物語。激情にかられた失敗のあと、反省する者、良心ある者なら見るであろう悪夢と似ている。

 存命なら、トランプ大統領に筆で挑んだであろう皮肉屋ビアスの「悪魔の辞典」での「偏見」の定義は「明白な証拠だての方法が何一つとしてないとりとめのない意見」。

 同じ事実も、立場が変われば全く違うものに見えてくる。だから、自分の立場ばかりを主張すれば、真実を見失う。

 上から目線で、被害者意識で、自分とは違う視線を排除するばかりの人々に必要なのは、違った立場の人々の身になって考えること。

 批判のふりをした非難をするだけの扇動者が容易に意見するネット社会の世、客観的事実より個人的感情や信条が世論形成に影響する「Post-truth」時代であるいま、そんな当たり前でいて、多くの人が忘れていることを、このエピソードは思い出させてくれる。

 激情に走った時、理性のメッキははがれ、少なからずその人物の本性は見えてくる。誰でも激情に溺れる失敗は少なからずあるだろう。しかし、「No man’s land」も「Free state」もない現代社会で、安全な逃げ場などない。

 それでも、ビルのような悪夢でも見て反省すれば、大抵は済むかもしれない。もちろん、1度の失敗も許されない立場の「先生」と呼ばれる人たちなら、当然、普段から、様々な立場で考える「備え」をしているはず。

 しかし、トランプ大統領がCNNのロゴを顔にはったレスラーをボディスラムする動画や都議選中の首相が「こんな人たち」との言葉を発する様子を見れば・・・。

 またエリートを自負する政治家の秘書への罵倒やジャーナリストに出ていけとどなる大臣の言葉を聞けば・・・。

 「先生方」には、日進月歩のVR技術でも駆使して、疑似体験するのを義務にでもしてもらいたいものだ。それもだめなら、トワイライトゾーンに足を踏み入れてもらうしかない・・・。

(本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

(56)(再)風と共に去りぬ (1317)ふくろうの河 (1318)ニュートン・ナイト (570)(再)ダンス・ウィズ・ウルブズ (1319)西部の二国旗 (712)(再)リンカーン (207)(再)国民の創生 (1320)デュークス・オブ・ハザード (1321)トワイライトゾーン

風と共に去りぬ


(再)56.風と共に去りぬ Gone with the wind 1939年米国映画

(監督)ヴィクター・フレミング
(出演)ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル
(音楽)マックス・スタイナー

 「Old South」の伝統を北部人に破壊されながらも、強く生き抜く女性スカーレット・オハラの姿を、1939年という時代としては驚異の大スケールと華やかな色彩で描く、堂々たる女性一代記。

 後期ロマン派クラシック音楽にも通じるスコアも魅力の一篇である。

1317.ふくろうの河 La Riviere du Hibou 1961年フランス映画

(監督)ロベール・アンリコ
(出演)ロジェ・ジャッケ、アン・コネリー

 南北戦争中、橋上で絞首刑に処されようとしている南部農園主の姿を描くアンブローズ・ビアスの短編小説の『冒険者たち』(1967)のロベール・アンリコによる映画化。カンヌ国際映画祭パルムドール(短編)受賞作。

ニュートン・ナイト


1318.ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男 Free State of Jones 2016年米国映画

(監督)ゲイリー・ロス
(出演)マシュー・マコノヒー、ググ・ノバータ・ロー、ケリー・ラッセル

 南北戦争のさなか、逃亡奴隷と脱走兵が暮らす「自由州」を作り上げた実在の人物ニュートン・ナイトを『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)などのアカデミー賞俳優マシュー・マコノヒーが演じる『ハンガー・ゲーム』(2012)などのゲイリー・ロス監督作品。

ダンス・ウィズ・ウルブズ


(再)570.ダンス・ウィズ・ウルブズ Dances with wolves 1990年米国映画

(監督・主演)ケヴィン・コスナー
(出演)メアリー・マコドネル、グラハム・グリーン
(音楽)ジョン・バリー

 消滅する前のフロンティアを見ておこうと、辺境の砦に赴任してきた北軍士官が、スー族との交流を深めながらも、白人による侵略が進む現実に直面していくことになる様を描く作品賞・監督賞・作曲賞などアカデミー賞7部門を受賞したチェロキーの血がながれるコスナーの監督第一作。

1319.西部の二国旗 Two Flags West 1950年米国映画

(監督)ロバート・ワイズ
(出演)ジョゼフ・コットン、コーネル・ワイルド、ジェフ・チャンドラー

 同胞とは戦わないことを条件に、先住民との戦いのため北軍兵となった南軍小隊を、『ウェスト・サイド物語』(1961)『砲艦サンパブロ』(1966)などのロバート・ワイズ監督が描く南北戦争秘話。

リンカーン


(再)712.リンカーン Lincoln 2012年米国映画

(監督)スティーブン・スピルバーグ
(出演)ダニエル・デイ・ルイス、サリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズ
(音楽)ジョン・ウィリアムズ

 奴隷制廃止を確固たるものにするべく、合衆国憲法修正第13条可決に向かい繰り広げられる様々な駆け引きを、妻メアリー・トッドや息子たちとの葛藤も織り込みながら、リンカーン最後の4か月を描くスティーブン・スピルバーグ監督の力作。

国民の創生


(再)207. 国民の創生 The birth of a nation 1915年米国映画

(監督)D・W・グリフィス
(出演)リリアン・ギッシュ

 南北戦争、リンカーン大統領暗殺、レコンストラクションといった史実を、北部・南部、2つの名家の物語として描いた3時間近い、当時の米国映画としては破格の長編。

 編集やフラッシュバックなどの様々な技法で、映画史上重要な作品としての評価は高いが、KKKを英雄的に描くなど人種差別的スタンスへの批判は多い。

デュークス・オブ・ハザード


1320.デュークス・オブ・ハザード The Dukes of Hazzard 2005年米国映画(日本劇場未公開)

(監督)ジェイ・チャンドラセカール
(出演)ショーン・ウィリアム・スコット、ジョニー・ノックスヴィル、ジェシカ・シンプソン、バート・レイノルズ、ウィリー・ネルソン

 ジョージア州の架空の田舎町ハザード郡を舞台に、ボー、ルーク、デイジー、いとこ同士の3人が、保安官などと繰り広げる、カーチェイスが魅力の人気テレビドラマの映画版。

トワイライトゾーン


1321.トワイライトゾーン 超次元の体験 Twilight zone : the movie 1983年米国映画

(監督)ジョン・ランディス、スティーブン・スピルバーグ、ジョー・ダンテ、ジョージ・ミラー
(出演)ダン・エイクロイド、ヴィック・モロー、スキャットマン・クローザース、ジョン・リスゴー

 かつての人気テレビシリーズの雰囲気そのものに4人の監督が描く、差別主義者がたどる末路、子供に戻る老人、超能力者の少年、航空機恐怖症の男の悪夢、そして、それらを、ダン・エイクロイドが演じるプロローグとエピローグが挟みこむオムニバス映画。

筆者:竹野 敏貴