日本銀行によるETF買いと株価上昇には関係はない?

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ちょっと意外かもしれませんが、日本銀行による国債やETF(上場投資信託)の買い入れによる直接的な株価上昇の効果はないのかもしれません。

図1は日本銀行によって資産計上された国債と株式、ETF、J-REITの金額と日経平均株価の推移です(2017年6月まで)。日本銀行によるETF買い入れというと黒田総裁のイメージが強いですが、前任の白川総裁の在任中である2010年12月から始まっています。白川総裁の時期は国債・ETF等の資産額は増えているものの日経平均株価は低下傾向にありました。2013年3月に黒田総裁が日本銀行総裁に就任し、国債・ETF等の買い入れ増額を実行してからは株価は上昇に転じており、このインパクトの大きさから日本銀行による国債・ETF等の買い入れが株価上昇要因と考えられてきました。

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国債買い入れによる金利押し下げ効果や物価目標の設定によって株価上昇を促す効果はあったかもしれません。しかし、過去を振り返ると公的機関による株式の買い入れが、直接的に株価を押し上げるものにはなっていませんでした。

1960年代、ケネディ米大統領の暗殺事件や投資信託による株式の売りによって株価の低迷が続く時期がありました。そこで日本では株価維持・上昇を目的とした株式の買い入れ、いわゆるPKO(Price Keeping Operation)のための機関として、1964年の1月に銀行と証券会社の出資により日本共同証券が発足しています。日本共同証券が買い入れた株式は、筆者の試算によると当時の日本の株式時価総額対比で約3%弱保有するほどになっていましたが、すぐには株高にならず株安傾向はつづきました。

過去の事例を振り返ると、公的機関による株式の買い入れがあっても株式は売られるときには売られる、という傾向があるのかもしれません。そこで図2では図1と同一期間で日本銀行の資産の変化率と日経平均株価の変化率の関係を月次データを元に分析してみました。

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図2は図1とはちょっと異なった見え方になります。図2の右側に点が多いこと、左側の点が少ないのは日本銀行はほぼ一貫して国債・ETF等の買い入れを増やしているためです。図2の右上は日本銀行によって国債・ETF等の資産が増加し、日経平均株価も月間で上昇していたという月を示しています。図2の右下は資産が増加したものの日経平均株価は月間で下落していたという月を示しています。点がばらけているということは、国債・ETF等の買い入れ額の増減と日経平均株価の上下には直接的な関連性がないということになります。

図2を見る限り、日本銀行による国債・ETF等の買い入れと日経平均株価の上昇に強い因果関係があるとは言い切れません。量的緩和政策は時間をかけて波及してくる、日本銀行による買い支えが投資家マインドを改善させる、などというご意見もあるかもしれません。それらを否定するつもりはなく、資産買い入れによる金利低下によって円安となり、輸出企業の改善が促されたという間接的な効果などは十分に考えられます。ただ、気をつけなければならないのは、日本銀行が資産買い入れの縮小を始めなくても、株価は下げるときには下げる、という状況は過去のPKO失敗事例や統計的に見てもありうる話だということです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。