メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官Tさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。「自転車の盗難」について語られた前回に続き、今回は「いい加減な警察の実態」について、Tさんが内部の人間だからこそ知る、警察官同士による「嫌がらせ」の実態を暴露しています。

軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その5

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吉田:署内評価というか、仲間内での評価も警察官は常に気にしているってことなんでしょうか?

Tさん:そうですね。警察官は民間の方と比べたら大変プライドが高い職業でもありますので、どうしても自分自身の評価というのを気にしてしまうのも……正直な話、事実です。となると、自転車の交通違反をバシバシ検挙していたら”お前相当暇なんだな?”みたいな目で署内で見られることもあるんですね。警察官って仲間意識は強いんですが、結局のところ出世争いとなると、いかにしてライバルを蹴落とすかばかりの行動を取ったり、結構面倒くさい職業だったりします(苦笑)。

吉田:え? どんな行動をして仲間を蹴落とすんですか?

Tさん:私はされたことないですが、クルマやバイクを交通違反として検挙しますよね。その書類を後日処理しようと机の引き出しに入れておいたら何者かの仕業で紛失させられたりとか、あとは若い巡査だったりすると、イジメみたいな感じで、通報もないのに通報が入ったと嘘をついてパトロールを頻繁に行かせたりとかいうのも聞いたことがあります。

吉田:ということは、交通違反で検挙された際の違反キップが担当した警察官が管理不行き届きで紛失ってことになると……そのままバックレてしまえば違反での反則金は支払わずチャラになるってことですよね?

Tさん:支払わずに大丈夫……ってことを私の口から積極的に言うわけにはいきませんが、担当者が交通違反を処理しないまま忘れてしまうこともたまにありますし、このような署内での嫌がらせで未処理のままになってしまうこともあります……。つまり、未処理であれば反則金を支払わずでも大丈夫なんですが……検挙された人には未処理になっているなんて分かりませんから完全に博打ですよ。宝くじに当たるより確率的には低いんじゃないですか?(苦笑)。

吉田:言われてみれば確かにそうですね。検挙された側は未処理のままだなんて知り得るわけないですからね(笑)。で、ふと思ったんですが、未処理のままですと違反点数もそのままですよね。しかし、検挙された側が反則金を未処理状態になっているにも関わらず振り込んでしまうと、そのお金っていうのは返ってこないわけですか?

Tさん:ええ。基本返ってきませんね。ましてや支払い済みの方からクレームもきません。

吉田:そりゃそうですよね。支払った側は、まさか未処理にされていたなんて気づくわけないですから、当然っていえば当然ですな。

Tさん:そういえば私と同期がいる所轄で、自転車が信号無視して横断歩道を渡ったので、パトカーで追いかけて行って違反キップを切ったそうなんです。あまりにも悪質で、走行中の多くのクルマが急ブレーキをかけるほどの無謀な信号無視だったことから「絶対捕まえる」って躍起になって検挙したそうなんですが、私と同期の彼は、ちょっとおっちょこちょいな性格でして、その自転車に対して反則金を支払わせるほどのペナルティーを与えたにも関わらず、自分の机の引き出しに書類を処理し忘れたまま半年以上放ったらかしにしていたんです。別の課に移ることになった際に未処理の交通違反に気づき、それがその自転車を含め3件もあったそうなんですが、さすがに検挙してから半年以上も経過していたので処理を受け付けてもらえずだったと。バイクの違反2件は処理してなかったんですが反則金は納付されてまして、自転車はというと、催促が来たら払おうとしている人も多いことから納付されてなかったそうです。

吉田:それってバイクの違反2件は反則金納付をしただけで、交通点数はそのまま減点されていないってことなんですか?

Tさん:はい、そうです。

吉田:警察も結構いい加減ですねぇ。とりあえずはお金を納付してもらったからいいかっていう考えってことですよね。

Tさん:その辺はしっかりしている時としていない時がありますから微妙ですが、未処理にした警察官の個人的なミスってことになりますので。

吉田:それにしてもサイクリストは検挙されても催促来ないと反則金は支払おうとしないもんなんですか?

Tさん:これも私の経験談ではないですが、やはり自転車で違反をしても本人としては重大な違反をしたという認識がないからなんですね。実際に催促の手紙が届くと慌てて納付する人の方が多いと聞きます。つまり自転車の交通ルールを改正しても特に運転している側は気にしてないってことなんですよ。普段通りに自転車に乗って、歩道通行したり、逆走したり、信号無視なんかは日常茶飯事だったりしますから、結局のところペナルティーをもっと多く与えない限り本人たちは改善しようという気持ちは出てこないと思います。これは私の本音ですけどね。個人的にはドンドン自転車の違反を取り締まりたいですが、うちの所轄ではクルマやバイクの違反を最優先にしてますので、自転車の違反は利益が生まれないとか、そういう考えで優先順位が低いだけな気がします。

吉田:聞けば聞くほど自転車に対しては厳しい取り締まりが必要なのに、甘すぎる警察の対応にもどかしさを感じますね。軽車両だからと不公平すぎます。我々クルマを乗っている身からしたら、同じように取り締まらないとおかしいと思います。じゃあ、自転車で信号無視しても厳重注意で終わったりすることがありますが、これがバイクやクルマだと、厳重注意よりも青色のキップ出して交通違反者扱いで反則金を支払わせるべくキップを切りますよね。それが甘いってことだと思うんです。一応同じ車両ですよ。軽いか重いかの違いです。さらに重たい車両の方は軽い車両よりも多くの税金を国に納めてます。でしたら、不公平なく自転車も積極的に取り締まってくださいよ。恐らく僕なんかよりも、危険に感じる歩行者の方々が特にそう思っているはずですよ。

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『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』

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出典元:まぐまぐニュース!