覗けば深い女のトンネルとは? 第33回「とある美しい別れ」

 

先日ちょっと感動した話をひとつ。

 

知りあいに、将来有望そうなイケメンがいます。物腰は優しげで機転も利き、超一流大学の学生で、少女マンガから抜け出てきたみたいな青年です。さて、その彼には何年もつき合っている彼女がいたんですよ。だけど先に大学を卒業して社会に出た彼女と、学生の彼とはだんだん話が合わなくなっていったとか。彼女は彼の言うことや考えに否定的で、彼は「自分のしたい話ができない、一緒にいても楽しくない」と思うようになっていったらしいです。

 

彼女は彼女で、就職して数年経ち、まわりが結婚していくなかで、どんどん結婚願望が高まっていったみたいなのです。彼には「大手企業に勤めてほしい」「大手がどんなにいいか」という話を彼に訥々とするようになり、「結婚したい」と暗にほのめかすようになったとか。

 

そりゃ彼女からしたらこんなステキな男性、なにがなんでも確保したいですよね。結婚したい彼女と、やっていけないと思う彼氏。彼は何度も「2人でいるときに、自分らしくいられない」「2人の目指すものは違うんじゃないか」と話したそう。そしてとうとう「別れた」と言っていました。

 

彼は確かに結婚相手として理想的です。でもたとえ大手企業に勤めたって10年後彼がどうなるかわからないのだし、浮気や心変わりもあるかもしれません。結婚はゴールじゃなくて永遠に続ける異文化交流です。尊重して、努力し合える関係じゃないと続かない。

 

彼女の結婚を焦る気持ちもわかるけど、もし彼女が彼を本当に得がたい人だと思うなら、未来のことより、いま、一緒にいる時間を楽しむことはできなかったのかしら。日々、一緒にいることが楽しかったら、その先も一緒にいたいと思いますよね。そうしたら、その先に待っていたのは彼女の望む「結婚」だったかもしれないのに。結婚というなんの保証もないものを目の前に据えちゃったおかげで、大事なことをなくしてしまってはいないのかな。

 

やはり未練があったのか、別れたあとも毎日彼女から電話があるんだって。それ、ぜんぜん別れてねえ。

 

その話を聞いて、和久井は「いつまでもいい顔をしていたら彼女は諦められない。ガッツリ切ったほうがいい」と言いました。彼のまわりの多くは、和久井と同じように「そのほうが彼女のためだ」と言ったそうです。だけど彼は「一度つき合った人に不義理はしたくない」と言うんです。密かに「チッ、それ単なる自己満足じゃねえか」と思っておりました。

 

ところが彼は1年かけて彼女と話し合い、ようやく彼女が納得をして、今度こそ本当に別れたのだそうです。「美しい別れでした」とのこと。もう連絡も来ていないんだって。片方からしか話を聞いてないから真偽のほどはわからないけど、ちょっと感動してしまった。別れ方って大切です。次の恋愛に大きく影響するし。

 

彼は誰になんと言われようと惑わされず、自分の意志を貫き通す芯の強さがありました。おまけに最後まで諦めずに彼女に誠意を尽くしたことで、彼は恐らくこの先後悔することも、彼女を惜しむこともないんだろうな。すでに「彼女には早く幸せになって欲しい」とかお父さんみたいなこと言ってるし。

 

彼女も、1年かけて納得したのなら、この先彼に未練を残すこともないでしょう。納得できないまま、努力の道が残されていたかもと思うほうが、引きずってしまったかもしれない。

 

ずっと前に友人が言っていたことを思い出しました。「一緒にいて心地がいい人って、人生に何人出会えるかしら。条件とか可能性とか、余計なものを一切排除して自分の心の声を聞いてみたら、その人が自分に必要かどうかがわかります。本当に別れるべきときは自然に訪れるでしょう。それまでは自分の気持ちと相手との関係を大事にするべきです」

 

彼は、心の声を聞いて彼女との別れを判断し、まわりの声という余計な情報に惑わされずに、自然に別れるべき時が来るまでできる努力をしたってことなんですね。そりゃ美しい別れになるわけだよ。お前ほんとかっこいいよ。

 

というわけで、これからも彼をめぐる女たちの争奪戦をのんびり眺めていようと思います。