池江璃花子【写真:Getty Images】

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【短期連載第4回】元五輪代表・伊藤華英さんが語るJKスイマーの凄さ「剛と柔」

 水泳の世界選手権(ブダペスト)は今日23日から競泳が開幕。自国開催の20年東京五輪への試金石として絶好の力試しの機会となるが、男子のエース・萩野公介とともに期待されるのが、女子の池江璃花子だ。

 弱冠17歳ながら、自由形とバタフライを合わせて5つの日本記録を持つ、日本競泳界が誇る天才少女。4月の日本選手権では女子としては史上初の5冠を達成し、今大会はリレーを含め、6種目にエントリーしている。

 どんな泳ぎでも速い。池江璃花子を天才たらしめているものとは一体、何なのだろうか。北京五輪、ロンドン五輪代表の伊藤華英氏によれば、体にヒミツがあるという。

「フィジカル的に言えば、肩がすごく柔らかい。それが一番です」

 170センチを誇る長身。競泳選手として恵まれた肉体であることは間違いないが、伊藤氏によれば、とりわけ優れているのは「肩甲骨」だという。

「肩甲骨の使い方が抜群にうまい。彼女の場合、小さい頃から雲梯をしていたということもあって、柔らかさがあって力強い印象です」

「柔らかさ」と「力強さ」――。相反する2つの「剛と柔」を持ち合わせることで、どんなメリットがあるのか。

伊藤氏が「ニュータイプ」と表現した17歳の「心」と「体」の強さとは?

「柔らかい人は力強さが足りず、ぐにゃぐにゃとしたような泳ぎになる。けれど、彼女の場合は柔らかさの中にしなやかさがあるから、水を掴む動きがすごくいい。泳ぎのテンポが良くて抵抗の少ない泳ぎをしている。それは種目を問わず、理想的な肩だと思います」

 加えて「足も柔らかくて水中でキックも利くから、あれだけ速く泳げるのだと思います」と分析した。

「日本人選手にはいないタイプ。柔らかい選手は日本人にいるけど、池江選手のようなタイプはいない。だから、どういう感覚で泳いでいるのかわからない。未知。ニュータイプという感じです」

 近年の日本競泳界には存在しなかったという「ニュータイプ」の17歳。では、性格的な観点からいえば、強さはどこにあるのか。

「明るいし、何よりも負けず嫌い。リオ五輪でも、先輩の名前を出して『負けたくない』と言っているから、すごい子だなと。普通は言えないことです。自分が一番でありたいという欲がある。だから、全部で一番になりたいんじゃないでしょうか。本来なら種目を絞ったっていい。ただのチャレンジじゃない。いいことだと思います」

 4月の日本選手権では女子史上初の5冠を達成。一段と選手としてたくましさが増した印象だが、その裏に変化を感じていたという。伊藤氏は「五輪行って変わったと思う」と言い、こう続けた。

JKスイマーを変えた「高1の夏」…メダルの可能性十分「東京五輪の次の次までいける」

「競技に対して、責任感が出た。『このチームを私が引っ張らなきゃ』と言っていたので。17歳ですごいなと思ったけど、そういう発言ができるのは素晴らしい。22、23歳になったら素晴らしい選手になる。東京はもちろん、次(2024年)の次(2028年)までいけるんじゃないかと思います」

 リオデジャネイロ五輪ではリレーを含め、7種目にエントリー。多くの経験を積んだ「高1の夏」で精神的にも成長したようだ。伊藤氏も将来性を絶賛する逸材は今回、メダルの期待がかかる。

「獲れると思います。一番可能性を感じるのは100メートルバタフライ。自由形も速くて世界から注目されている。だけど、今回は何も考えずにイケイケで行ってほしいと思います」

 こう背中を押した伊藤氏。果たして、「柔らかさ」と「力強さ」を兼ね備えた希代の天才スイマーは、ブダペストの地で輝きを放てるのか。それは、20年東京五輪を占う意味でも重要になるだろう。

 ◇伊藤 華英(いとう・はなえ)

 2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初出場した北京五輪で8位入賞。翌年、怪我のため2009年に自由形に転向。世界選手権、アジア大会でメダルを獲得し、2012年ロンドン五輪に自由形で出場。同年10月の岐阜国体を最後に現役を退いた。引退後、ピラティスの資格取得。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。