文化は国や民族によってちがう。だからこそ外国の映画を観るのは面白い。でも……。一生懸命観ていたのに、ラストで急に「?」となること、ときどきありませんか?

 たとえばアメリカ映画『ラースと、その彼女』では、主人公の男性が、恋人として扱っていたラブドールと一緒にジャボンと水に浸かって、出てくる。韓国映画『冬の小鳥』では、親に捨てられて孤児院暮らしの少女が、穴を掘って自分を埋葬するポーズをしてから、ムクッと起きる。

 そしてこういう“仮の死”シーンの後、主人公たちは新たな人生へと踏みだしていく。でも、起こったことの本当の意味がわたしにはわからず、“自分だけ映画に置いていかれちゃった”感が生じるのだ。

 ――あれって、何だろ?

 と、ずっともやもやしていたのだが、どうやらキリスト教の洗礼からきているらしい。古い人格とともに一度死んで生まれ変わるという……。

 さて、このドキュメンタリー映画のテーマも、一人の人間が仮の死を経て「もう一度生まれる」ことである。

 被写体はウクライナ出身の天才バレエダンサー、セルゲイ・ポルーニン。貧しい暮らしの中、十三歳の時、家族の希望の光となって英国にバレエ留学。だが家族は彼への仕送りのために出稼ぎを始め、ばらばらになる。セルゲイはバレエ団のプリンシパルとして活躍するものの、孤独に耐えかね、二十二歳のとき退団する。

 紆余曲折を経て、これで最後と引退するつもりで、ホージアのMVに出演。曲に合わせて踊る映像がYouTubeで再生回数を伸ばし、広く話題になった。

 肉体の表現で、心の奥底の苦悩、孤独、迷い、さらに人としての機能停止までを表現する姿が、凄まじい。

 セルゲイの人生はMV出演の後、どう変わるのか? 深く挫折した人間が「復活する」姿を、ぜひ劇場で追体験してほしいと思う。


©British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016

INFORMATION

『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』
Bunkamuraル・シネマほかにて公開中
http://www.uplink.co.jp/dancer/

(桜庭 一樹)