【蹴球日本を考える】レドミ、J復帰戦で存在感! 合流3週間でも高質なパスを供給できるワケ

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 いい選手というのはファンをあまり待たせることなく、すぐに結果を出すものだ。2年ぶりのJリーグ復帰となったレアンドロ・ドミンゲスが、横浜FCでのデビュー戦で早速、健在ぶりを示した。
 
 3位を走る長崎との一戦、レアンドロは6分に先制ゴールを演出する。
 
 中盤で前を向いた彼は、素早く1トップのイバにパス。これをイバがワンタッチで落としたところに2列目から野村直輝が走り込み、絶妙なスルーパスを繰り出す。これでジョン・チュングンが敵の背後に抜け出し、落ち着いてゴールに流し込んだ。
 レアンドロの縦パスを起点に3人の仲間が次々と絡んだ、とてもいいゴールだった。
 
 後半は徐々に運動量が落ちていったが、柏で一時代を築いたかつての輝きは失われていない。
 15分、カウンターから決定機を演出したプレーが、そのことを物語る。後ろからの浮き球を巧みにトラップして加速。そのまま敵をひとり抜き去って球足の長いスルーパスを繰り出し、イバの決定機をお膳立てしたのだ。ゴールにはつながらなかったが、トラップ、ドリブル、パスのすべてで観衆を唸らせた。
 
 レアンドロはオールラウンドな能力を備えたアタッカー。だが、やはり特筆すべきはパスの質の高さだろう。先制点につながる縦パスも15分のスルーパスもそうだったが、この選手はとても丁寧にパスを出す。仲間が受けやすいスピードと回転のパスを出すのだ。そのあたりは34歳になったいまも、ほとんど変わっていない。
 
 レアンドロのパスには、もうひとつ特徴がある。
 パスが通らなかった時、受け手に「こうしてほしかったんだ」という要求を直後、チームメイトにしっかりと伝えるということだ。つまり、失敗をそのままにしておかない。柏時代は右サイドで酒井宏樹と強力なタッグを組んでいたが、その酒井もまた「そのときどきで意見をしてくれるから、とてもやりやすかった」と話していた。
 
 試合後、日本人選手何人かがレアンドロについて、「走ればパスが出てくる」と話していた。このあたりは、合流からの3週間でしっかりとコミュニケーションをとっているのだろう。近いところでプレーしたイバとの関係も、とてもいい。
 パスが上手い選手は、仲間との意思の疎通も上手いものだ。このあたりは私たちアマチュアでも参考にできる。
 
 さて、レアンドロの加入によって、横浜FCの攻撃はより多彩で強力なものになりそうだ。とくに多少孤立していてもゴールを決めてしまうイバは、頼もしい相棒を得たことで、さらに多くのチャンスに恵まれることになるだろう。
 
 もっとも、気になるところもある。レアンドロは気分屋のところがあり、いい時は手がつけられないが、一度機嫌を損ねると抑えが効かなくなってしまうところがある。それは対戦相手の狙い目にもなるだろう。このあたりを首脳陣やチームメイトがしっかりと理解して、レアンドロを守ることができるか。横浜FCの明暗を分けるポイントではないだろうか。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)