子どもには栄養のある食事をとってほしいと思ってはいても、好き嫌いがあったり食べムラがあったり…。親の望むようには食べてくれないことも多いものです。
そんななか、2歳児が包丁で野菜を切るなど、親の手を借りずに子どもが自分で料理をする「台所育児」が話題です。この台所育児には、子どもの自尊感情を育むというメリットに加え、野菜を食べられるきっかけもつくれるのだとか。台所育児を提唱する料理研究家の坂本廣子さんに、台所育児をする際に親が気をつけることと、おすすめレシピを聞きました。台所育児で子どもが料理をしやすい環境を整えると、好き嫌いも克服


台所育児で好き嫌いも克服!小さな子どもが自分つくれる簡単レシピ子どもが包丁を持って食材を切り、コンロを使って調理をする。台所育児をスタートするときには、親がしっかりと環境を整えることが大切だそう。

「包丁を使うときは、調理台や机の高さを踏み台などで調整しましょう。お子さんが立って台の上に手を置いたときに、ひじが“くの字”に曲がるくらいの高さがベストです。ひじの角度が90度だと、力が入らず切りにくくなってしまいます」

コンロの場合は、包丁のときよりも高さが必要です。「踏み台に乗って気をつけしたときに、指先がコンロにあたるくらい。鍋を見下ろせる高さにすれば、鍋で二の腕をやけどする心配もありません」。

子どもの安全を守るためにも、ケガの原因となる芽は事前に摘んでおきたいところ。調理器具選びもそのひとつです。<用意するもの>

・包丁
・ピーラー(皮むき、野菜の薄切りなど)
・キッチンバサミ(骨を切るのにも使える)

調理道具は、よく切れる子ども用を用意した方がいいそうです。たとえば、キッチンバサミは子どもの手には大きすぎるうえ、開くのに力が必要ですが、子ども用のハサミなら、小さな手でも握れて少しの力で開けるそう。包丁選びにも、ポイントがあるようです。

「危ないと思って切れない包丁を渡すと、かえってケガの原因になります。また、ペティナイフは重心が柄の部分にあるため、小さな子どもには切りにくい。力の弱い子どもでも切れるように、よく研いだ和包丁を用意しましょう」

包丁のサイズは、子どもの握りこぶし2個分の刃渡りの包丁が適しているのだとか。渡す前には、包丁についての説明をしてあげます。

「最初に、『包丁はどういうお仕事をするものかな?』と聞いてみましょう。『切るお仕事』と子どもが答えたら、『この刃っていうところが切るお仕事をするんだよ。刃に指をあてて引っ張ったらどうなる?』と続けます。『切れる』といったら、『そうだよね。だから、ここに指を持ってこないように気をつけて使ってね』と伝えましょう」

やみくもに「危ない!」と注意するだけでは、子どもは納得できません。包丁の機能やなぜ危ないかを理解できたとき、初めて「責任を持つ」ことの土台がその子のなかにできるそう。

この段階にきたら、子どもを信じて包丁を渡しましょう。子どもが最初につくる一品に! 3ステップでできるおすすめレシピ

子どもには、料理の下ごしらえだけ頼むのではなく、思いきって一品まかせてしまいましょう。大人の手を借りずに完成できれば達成感も得られ、自尊感情も育めるそうです。坂本さんに、初めてでもできるレシピを教えてもらいました。●アスパラガスのおかかあえ


材料(4人分)

グリーンアスパラ 150g
水 50cc
しょうゆ 小さじ1/2
カツオ節 3g

【つくり方】

(1) アスパラはひと口で食べられる大きさに切る。

(2) 鍋に水とアスパラガスを入れ、フタをして中火にかける。

(3) 水分がなくなったら火を止めしょうゆをいれてまぜ、最後にカツオ節をいれてまぜる。

「アスパラのほかに、スナップエンドウやキヌサヤ、インゲンでもつくれます。アクのない野菜ならなんでもいいですよ」

硬くて切りにくいサツマイモやカボチャなどを使うときは電子レンジで少しやわらかくしてから渡すなど、子どもが調理しやすい状態にしておきましょう。●エノキダケのつくだ煮


材料(つくりやすい分量)

エノキダケ 100g
A[しょうゆ、みりん、水各小さじ2]

【つくり方】

(1)エノキダケは石づきを切り落とし、2cmのぶつ切りにする。

(2)鍋にAとエノキダケをいれて、中火で煮つめる。主導権は子どもに与えて偏食を克服しよう

子どもが食べてくれない食材は、避けるよりもあえて使う。子どもに頼んでつくってもらうといいそうです。

「たとえば、ピーマンが嫌いな子にピーマンを丸ごと使った料理をつくってもらうのもいいですよ。洗ったピーマンを丸ごとフライパンに並べて、オイルを少したらしたらフタをして蒸し焼きにします。全体がやわらかくなったら、塩をかけて完成です」

つくった料理は、子どもが自分で食べられる量を考えて器に盛りつけてもらいます。じつはここに、嫌いな食材を食べられるようになるヒントも隠れているのだとか。

「キュウリ揉みを食べられない子どもが、小さいキュウリを1枚だけお皿に乗せたことがありました。『この料理は、ワカメとチリメンジャコが入らないとお料理が完成しないんだ』と伝えたら、自分でお皿に入れて食べていたんです。親が強制するよりも、子どもに選ばせるようにすると、自分が決めたことだから食べてくれるようになりますよ」

どうしても嫌な場合は、ひと口だけ食べるよう伝えましょう。食べてみて、やっぱり好きじゃないと納得したうえで残すことが大切です。よそった量が多すぎて残してしまっても、叱るのは逆効果に。残したごはんをどうすればいいかを落ち着いて伝えるといいそうです。

「自分が食べられると思ってよそったものが食べきれなかったわけですから、子どもも十分に胸を痛めています。叱らずに、『このご飯はどうすればいいかな?冷蔵庫に入れておく?それともママが食べる?』と子どもに選択肢を与えましょう。自分で考えて決めれば、次からは慎重に考えてよそうようになります」

親の意見を押しつけずに、選択肢を与えて子どもに選んでもらう。台所育児は、「親がやらないこと」がポイント。手助けしたくなる気持ちを我慢して、お子さんの成長を長い目で見守ってあげてください。
坂本廣子さん●教えてくれた人
【坂本廣子さん】
料理研究家。同志社大学英文科卒。美作大学大学院卒。学術博士、農林水産技術会議委員、相愛大学客員教授。幼児期からの食育を30年以上前から提唱し、NHK教育テレビの「ひとりでできるもん」の産みの親でもある。「台所は社会の縮図」として、食育、介護、防災、食の村おこしなど、広く問題解決に取り組む、社会派の料理研究家

<写真/サカモトキッチンスタジオ 取材・文/畑菜穂子>