■写真コンテストの景品は「実質休暇365日」

 度々ニュースに取り上げられる"ブラック企業"。だが、世の中にはその真逆を突き進む"ホワイト企業"も存在する。その名も「未来工業株式会社」だ。1965年、岐阜県安八郡に設立され、コンセントなどの電気設立設備や給排水設備の製造・販売を行い、年商約270億円を売り上げている。

 社内に入ると、まず目に飛び込んで来るのが大量の社員旅行の写真だ。総務部の杉原創紀さんが「当社では5年に1回、全社員が無料で海外旅行に行ける」と話すとおり、未来工業では、約800人の社員全員分の海外旅行費(約1〜2億円)を全額負担している。

 まだ社員が20人ほどだった時代、創業者が「年商1億円突破したら海外旅行に連れていってやる」と宣言したところ、実際に突破したため台湾旅行を実施したのがこの制度の始まりだという。

 去年のイタリア旅行では世界遺産を中心としたコースから地中海を中心としたものまで全13コースを用意したという。2011年にはエジプト旅行を計画したが、現地の暴動で一転中止に。そんな中で東日本大震災が起きため、社員たちの提案により、旅行費を全額寄付に回したこと。

 旅先では写真コンテストも開催、「現地のイタリア人に投票してもらって、1位から50位まで決めた」(杉原氏)。1位に輝いた社員には「事業を考えたら新会社の社長になれる権利」、2位には「実質休暇365日(特休185日+公休140日+有給40日)」、3位には「有給50日」、4位に「社長からディナーをご馳走してもらえる」、5位に「1年間週休3日」が特典として贈られた。

■65歳社員「娘よりも賞与がいいと思う」

 未来工業の会社理念は「社員に幸せになってほしい」。

 一般的な企業の休日が年間約120日のところ、未来工業では140日近く設けている。正月休みは長い時で20日ほど。休みが多い理由について杉原氏は「休む時はバシッと休んで働くときはビシっと働く。集中して働かないと仕事もなかなかこなせないので、しっかり休むと頭を切り替えて働くことができる」と話す。

 工場の中を進み製造ラインを覗くと、65歳を過ぎた社員が多いことに気づく。未来工業では定年を70歳に設定し、給料も下がらない。65歳を過ぎている女性は「娘よりも賞与がいいと思う」と話す。

 超高待遇だが、実は赤字を一度も出したことがないという。その秘訣はあるところに隠されていた。社内に入るとロビーにはほとんど電気がついておらず、廊下も薄暗い。光熱費削減の一貫として、オフィス内でも必要のないところは電源を切っている。ロビーには「小さな倹約 大きな浪費」という先代社長の言葉が貼られている。「当社は節約を徹底しておりまして、電気が必要ないところは消しておこうと考えている」(杉原氏)。

■定時の中に収まれば、全部利益になる

 未来工業には、実はホワイト企業ではなかった歴史がある。創業から20年ほどは太陽光事業で忙しく、残業は当たり前、バブル崩壊後は赤字の危機に直面していた。そこで、経費を見直したところ「残業を減らせば経費を大幅に減らせる」と気づき、"ホワイト路線"に舵を切ったというのだ。

 2代目の山田雅裕社長は「利益率が高いとよく言われるが、経費の節減、使い方というか抑え方というか。その辺もやっている」と話す。そんな山田社長がたどり着いた究極の経費削減とは「残業を極力しない努力」だという。「残業すれば残業手当がかかる。照明であったり空調であったり、機械を動かすのにも、パソコン動かすのにも電気がかかるし経費がかかる。もし定時の中に収まれば、全部利益になる」と、残業ゼロを推し進めている理由を語った。

 実際、定時の16時45分を過ぎると、社員たちが一斉に帰り支度を始め、工場は真っ暗になった。

 また、社内の至るところに社訓である"常に考える"という文言が貼られている。山田社長は「普段から何かしら考えなきゃダメなんですね。それは『きょうの晩飯何かな』『今日の野球ドラゴンズ勝つかな』というところを、もうちょっとだけ会社の業務効率化のことを考えてという感じ」と説明する。

 そうして思いついた改善案の提案書は、ダンボール箱がいっぱいになるほど。良い案は即採用され、社内のあちこちには"改善提案実施箇所"のシールが貼ってある。どんな些細なものでも業務の効率化につながるものは積極的に取り入れるという積み重ねが、職場環境を向上させる一つのポイントだという。

 「今でも毎年200件出す社員がいる。自分自身の目標として1日1枚提案を出すみたいな。そうすると年間200枚くらい出る」(山田社長)。

■「休みが多いことで、逆にアイデアが出てくる」

 未来工業の数々の取り組みについて、東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏は「ユニークなアイデアがあったら新会社の設立資金を出すというのは、会社側にとってもメリットになる。有給もこれだけ取ろうと思ったら、効率的に働かなくてはいけないので、逆にアイデアが出てくる」と評価する。

 「これだけ休みが取れるということは、その休んでいる時間も会社のことを考える。会社の中で夢中になってしまうのではなく、外にいる時間があるということで色んなアイデアが出てくるということをこの会社はやっている。コンセントの部品を造っているというとどんどん狭くなってしまうのを、世界はどうなっているんだろう、世の中はどうなっているんだろうというアイデアを入れていく。進化を常に続けている」(山田紙)

 また、「創業者の山田昭男氏は『アメアメアメ』という言い方をしている。『アメとムチ』っていうやり方は人間に失礼だと。常にアメを与え続ければ、日本人は真面目だからその分何かお返しをしてあげようと知恵が出てくる」と話した。

 「働き方改革」が叫ばれる日本社会。未来工業の経営、働き方には、日本中の企業が参考にできるヒントが詰まっていそうだ。(AbemaTV/『AbemaPrimeより』)


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