WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のメジャー第3戦、全英オープン(7月20日〜23日/イングランド)が開幕した。


メジャー初制覇の期待がかかる松山英樹

 今回の舞台は、ロイヤルバークデールGC(7156ヤード、パー70)。イングランド・マンチェスターから北西に車で1時間あまり、サウスポートの街のすぐ南側に位置し、アイリッシュ海を望む英国を代表するリンクスコースのひとつだ。開場は1889年と、その歴史も古い。

 20世紀に入ってから、1922年に現在のレイアウトに改造されて、1954年に初めて全英オープンが行なわれた。以降、全英の”ロタ(※)”のひとつとなり、今年で10回目の開催。過去、偉大なチャンピオンたちがここから生まれている。
※ローテションによる開催コース。現在は10コースある。

 1961年大会では、アーノルド・パーマー(アメリカ)が全英オープン初優勝を飾った。その前年、パーマーはマスターズ、全米オープンを制して、全英オープンでは年間グランドスラムへの期待がかかったが、惜しくも2位。その雪辱を果たしたこともあって、パーマーのファン”アーニーズ・アーミー”も熱狂した。

 そんなファンを前にして、パーマーも初めて手にしたクラレットジャグ(全英オープンの優勝トロフィー)を高々と掲げて喜びを爆発させた。

「『偉大な選手』と呼ばれるためには、全英で勝たなければならない。この厳しい天候の中で、自分のやるべきことができた」(パーマー)

 1976年大会では、ジョニー・ミラー(アメリカ)が2位に6打差をつけて圧勝した。そのとき2位に入ったのは、まだ無名だったセベ・バレステロス(スペイン)と、「帝王」ジャック・ニクラウス(アメリカ)だった。

 当時19歳だったバレステロス。その登場は鮮烈だった。3日目の17番でイーグルを奪うと、ミラーから2打差のリードを奪って最終日を首位で迎えたのだ。しかし、若くて粗削りなプレーが目立ったバレステロスは、最終日に大きく崩れた。6番でダブルボギー、11番でトリプルボギーを喫するなどして、ミラーに逆転を許してしまった。

 それでも、スペインの”新星”が第一歩を刻んだ舞台として、この大会は全英オープンの歴史のひとつに刻まれている。現に優勝したミラーは、のちにこう振り返っている。

「あの勝利は、私の生涯でもとても大きなものだった。しかしそれ以上に、セベが世界に知られる大きな戦いだったと思う」

 ミラーが続ける。

「決勝の2日間、セベと一緒にプレーをした。彼の存在は知らなかったし、私たちは(プレー中も)あまり話さなかったけれど、セベのあのあふれんばかりのパワフルなプレーを目の当たりにしたことは、今でも忘れられない」

 その後、バレステロスはスペインゴルフ界をけん引し、欧州ツアーを席巻した。全英オープンも3年後の1979年大会に初優勝を遂げた(1984年、1988年と通算3勝)。1980年と1983年にはマスターズも制し、世界ランキング1位の座にも就いたが、1990年代に入ると徐々に低迷。長いスランプに陥って、2000年代の中頃には第一線から退いた。そして2011年、脳腫瘍のため、54歳の若さでこの世を去った。

 1983年大会はトム・ワトソン(アメリカ)、1991年大会はイアン・ベーカーフィンチ(オーストラリア)が優勝。そして1998年大会は、マーク・オメーラ(アメリカ)が日本ツアーで活躍していたブライアン・ワッツ(アメリカ)とのプレーオフを制し、この年のマスターズに続いてメジャー2勝目を挙げた。

 実はこの大会、最も注目されていたのはオメーラの盟友でもある当時22歳のタイガー・ウッズ(アメリカ)だった。前年のマスターズを制してメジャー2勝目を狙っていたウッズは、最終日に上がり4ホールで3つのバーディーを奪って猛追。しかし、わずか1打及ばず、プレーオフに臨むことはできなかった。

 それにしてもその年、41歳だったオメーラがメジャーで2勝を飾ったのは驚きだった。当時を振り返って、オメーラは語る。

「みな、タイガーの出現に沸いていたからね、自分が(メジャーを)勝って驚かれるのも当然。でも、”オールドタイマー(昔気質)”でもメジャーに勝てる、ということを世界に見せることができた。それは、大きな意味があったと思う」

 そのオメーラにとって、今大会が最後の全英オープンとなりそうだ。大会の規定で、過去のチャンピオンが出場できるのは60歳まで。オメーラは今年1月にその年齢を迎えた。最後の舞台が奇しくもバークデールとなったことには、何かしら因縁めいたものを感じる。

 オメーラが勝ったこの年の大会は、ジャスティン・ローズ(イングランド)にとっても忘れられないものとなった。当時17歳でアマチュアだったローズは、首位と2打差の4位に入る健闘を見せた。そして、そのままプロ転向を決意した。

 あれから19年、その間にローズは2013年の全米オープンを制してメジャーチャンピオンに輝き、昨年はリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した。しかしながら1998年大会以降、15回の出場を数える全英オープンではトップ10入りできたのが、2015年大会の6位と一度だけ。「(その成績には)自分でも驚いている」とローズは語る。

「でも、このコースに来て、当時(1998年大会)どれだけのびのびとプレーしていたのかを思い出した。ショートゲームにも自信があった。今週は同じようなプレーをしてみたい」

 今季は、マスターズでセルヒオ・ガルシア(スペイン)と優勝を争ったローズ(結果は2位)。地元、全英オープンでの奮起が期待される。

 ロイヤルバークデールで開催された前回大会は2008年。パドレイグ・ハリントン(アイルランド)が、欧州勢として102年ぶりの大会連覇を達成した。はたして、今年はどんなドラマが生まれるのだろうか。

 日本勢は今年、世界ランキング2位で優勝候補にも挙げられている松山英樹が唯一予選を通過。首位と6打差の10位タイで決勝ラウンドに臨む。ロイヤルバークデールの歴史にその名を刻むことができるのか、その戦いぶりに注目したい。

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