『ぎょうけい館』外観

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もうすぐやってくる夏休み。「旅行に行こう!」そう思い立った時、「どんなホテルや旅館に泊まろうか」と旅行本や宿泊予約サイトを眺めているだけでも気持ちは高揚する。と同時に、旅先での宿はハズしたくはない。そんなとき、誰もが参考にするのが“口コミ”だが、口コミ欄は良くも悪くも主観のマス。どんなに高評価の宿でも実際に宿泊してがっかりすること、逆に良い意味で期待を裏切られる場合もある。そこで圧倒的に口コミ数が多い宿に実際に宿泊、口コミを検証する旅に出た。

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【全室太平洋を臨むパーフェクトオーシャンビュー】
千葉県銚子市犬吠埼にある『ぎょうけい館』は創業明治七年という老舗旅館。東京からは東関東自動車道を使って車で約2時間半。電車の場合は特急「しおさい」で終点の銚子駅まで約2時間、銚子駅からは銚子電鉄に乗り換え犬吠駅で下車し、そこから徒歩で7分ほどの道のりだ。口コミの多くに見られるのが「海が目の前という最高のロケーション」「料理が抜群に美味しい」というもの。実際に現地に到着すると、なるほど、全室が太平洋に向かったオーシャンビューであり、大きくとられた客室の窓から見える大海原は絶景だ。

【古いながらも溢れる気配りとホスピタリティ】
老舗というだけあり、建物自体には古さが否めない。公式ホームページに掲載されている外観の写真を見ても老舗旅館ではあるけれど、「高級旅館」と言うのはいささか憚られる。しかし一歩館内に足を踏み入れるとどこも綺麗に掃除が行き届き、スタッフの接客も素朴な中にもホスピタリティがあふれていた。

チェックイン時には「ぎょうけい館かわら版」なるものが用意され、翌日の天気、日の出、日の入り時間などが細かく記載されている。「太平洋に昇る朝日をぜひ見て欲しい」という宿の心遣いだ。

ここでぎょうけい館のマネージャーを務める小鷹さんに話を聞いた。ホームページでは少ししか触れられていないが、この宿は詩人の高村光太郎が妻の智恵子を連れ幾度となく訪れ、詩集『智恵子抄』とのゆかりも深く、過去には昭和天皇が皇太子時代に滞在されたこともあるという。

【想像の斜め上を行く質と量の料理】
通された部屋は和洋室。すべての部屋から太平洋を目の前に臨むことが出来る。チェックインが遅くなったため、風呂の前にまずは部屋での夕食となった。

年間水揚量全国有数の銚子漁港のすぐ近くにあるこの宿の夕食は口コミでも評判が高く、否が応でも期待が高まる。道中空腹に耐えてたどり着いた夕餉の席であったが、そのボリュームは想像以上で、銚子漁港からあがってきたばかりであろう海の幸をふんだんに盛り込んだ一品一品の味の良さはいわずもがな。たっぷりと満たされたお腹を抱えつつ、すでに翌日の朝食への期待も高まっていく。

【海の上に浮かんでいるような露天風呂】
夕食後は館内の温泉へ。こちらもけして新しくはないが、脱衣所も浴室も丁寧に掃除がされていた。

ミネラル分を含んだ温泉の湯は短時間浸かっただけでも肌に薄い膜を貼るようにしっとりとした潤いを与える。小さいながら露天風呂もあり、海面に映る月光と沖に見えるイカ釣り漁船の漁火が美しい。

湯上りには麦茶のサービスがあるもの嬉しい。房総に来るといつも感じることだが、千葉の水は滋味だ。

【太平洋を眺めながらふかふかの布団に身を任せる】
部屋はベッドのある和洋室であったが、せっかく旅館に泊まったのだからベッドではなく、敷布団で寝てみたい。そう思っていると「お布団になさいますか? ベッドでお休みなりますか?」と、まるでこちらの気持ちを察したように、すかさず中居の女性から声がかかった。大きな窓から太平洋を臨みつつ、ふかふかの布団に身体を任せるのは非日常の心地よさで、深い眠りにいざなわれた。

翌朝はあいにくの霧雨模様であったが、部屋の窓から見る太平洋に昇る朝日が神々しい。日の出時間から温泉に入ることが出来ると聞いていたので、さっそく朝風呂へ。

その後、朝食会場へと向かう。ここで一つ残念なことが。夕食は部屋食で、時折波の音を聞きながらゆっくりといただくことができたが、朝食会場は窓のない宴会場のような場所であった。しかしそれを除けば、昨夜の夕食の豪華さには敵わぬものの、ここでも素朴ながら心のこもった一品一品が膳の上に並んだ。

【意外と嬉しい翌朝の余裕時間】
ちょうどこの日はぎょうけい館のプール開きの日ということもあり、朝食後しばし部屋の布団の上で休んだ後、太平洋を眼下に見下ろす屋外プールへと飛び出した。多くの旅館では、朝食後、部屋に戻ると布団はすでに片づけられており、追い立てられるように気ぜわしく感じるものだが、ここではそのようなこともなく、また公式ホームページからの予約特典としてチェックアウトが12時までとなっていたため、滞在翌日の午前中をゆったりと過ごすことが出来た。

帰り際売店を覗いてみると、地元の農家で採れた瑞々しいキュウリとトマトが都内では考えられないような安価で販売されていた。いわゆる観光地のお土産物のなかに、こうしたお宝が何気なく置かれているのは嬉しい。

【ハードを補って余りあるソフト面の心配り】
場所柄、夏が書き入れ時かと思いきや、ある口コミではすでに現時点で年末年始の予約が取れずキャンセル待ちをしているという。多くの口コミにあるように、建物自体はけして新しくはないが、その分を料理や宿側の様々な努力、スタッフの心配りというソフト面が補って余りある宿であった。

ぎょうけい館HP:https://www.gyoukeikan.com/category02/

(TechinsightJapan編集部 村上あい)