開幕5カ月で10得点! 超攻撃的DF闘莉王が明かすゴールを生み出す二つの要因とは

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J2得点ランク5位タイ、36歳にして研ぎ澄まされる「洞察力」

 京都サンガF.C.の元日本代表DF田中マルクス闘莉王が、驚異的な決定力を見せつけている。

 15日のアウェー・徳島ヴォルティス戦(1-1)では、後半30分にダイビングヘッドで同点弾を決めた。この豪快な一撃はJ2第23節のベストゴールに選出されたが、今季すでに通算10ゴール。チームトップでJ2得点ランク5位タイにつけている。

 今季はベルギー人FWケビン・オリスとのツインタワーでの起用が増えているが、本来DFのはずの闘莉王は、なぜここまでゴールを量産できるのだろうか。闘将がその理由を明かしてくれた。

「読み、というものは少なからずあると思う。自分がDFだから、その経験から相手DFの心理を読めるという部分がある。このボールが来たらDFならどう対応するのか。相手の心理、プレーの選択、流れが読める。だから、読んだ挙句に逆を突く。その裏を狙うことができる」

 超攻撃的DFと呼ばれる男はこう語った。2006年にJリーグMVPに輝き、ベストイレブンに9年連続選出された闘莉王は、相手のエースストライカーと数え切れないほど対峙してきた。その経験値がゴール前で生きてくるというのだ。ゴール前でマーカーのリアクション、対応が読める。相手の次の一手が見えるからこそ、ゴール前の駆け引きで先手を奪うことができるという。

 浦和レッズ時代の2008年シーズンに、闘莉王は自己最多のシーズン11得点を決めている。7月の時点でキャリアハイまであと1点に迫っている。36歳にして、若かりし頃以上に研ぎ澄まされた洞察力が、ゴールラッシュという結果を呼び寄せているようだ。

闘莉王のシュート決定率は圧巻の…

 今季、闘莉王の決定力はデータ上でも突出している。故障の影響で出場試合はリーグ戦23試合中17試合。放ったシュートは34本で、シュート決定率は29.4%と圧巻の数字を誇る。

 第23節終了時点で16ゴールを奪い、J2得点ランク首位に立つ横浜FCのFWイバの19.2%を遥かに凌ぐもので、得点ランク20傑の中では、同じく10ゴールで5位タイの水戸ホーリーホックFW林陵平の34.4%に次ぐ、第2位となっている。

 凄まじいシュート成功率の裏には何が存在するのだろうか。経験だけではない。DFとしてのメンタリティーが好影響をもたらしているようだ。

「自分はDF。FWの選手とはまずメンタリティーが違う。彼らはミスしても次のチャンスに決めればいいという発想の持ち主だと思う。それぐらいのメンタルでなければ務まらない仕事でもある。でも、DFは正反対。ミスは許されない。どんなに良いプレーをしていても、一回のミスで失点してしまえば、全てを失ってしまう。だから、ワンプレーに懸ける集中力が違う。相手のゴール前で自分の前にシュートチャンスが来たとする。DFならそこで外したら、次にいつチャンスが来るか分からない。数少ない決定機にとことん集中力を高める。だからこそ、自分はゴールを決めることができているのだと思う」

徳島戦でも輝いた「集中力」の高さ

 チームの総得点30のうち、3分の1を生み出している闘莉王の集中力の高さは、徳島戦でも輝いた。後半30分、U-20日本代表FW岩崎悠人が左クロスを上げた。この瞬間、闘莉王はマーカーの視界から巧みに消え、ゴール前に猛然と走り込むと、強烈なダイビングヘッドをゴール左隅に突き刺していた。

 冴え渡る洞察力と極限まで集中力を高めた闘莉王は今シーズン、どこまでゴール数を伸ばしていくのだろうか。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images