韓国でタレント活躍をしていた脱北女性、イム・ジヒョンさんが突如として北朝鮮に戻り、当局のプロパガンダメディアに登場した事件を巡り、様々な情報が錯綜している。

毎日経済は20日、「『イム・ジヒョンは北のスパイ』再入北ミステリーは解けるか」と題した記事を掲載。北朝鮮の秘密警察、国家保衛省(以下、保衛省)出身を自称する脱北男性(57)の証言を交え、イムさんは北朝鮮が偽装脱北させた工作員であり、再入北は工作機関・偵察総局の手引きによるものである可能性に言及した。

また、やはり保衛省出身の脱北男性はデイリーNKの取材に対し、「彼女はスパイではないだろう」としつつも、「自分の意思で北に戻ったようだ」と話した。イムさんを巡っては最近、彼女が中国潜伏時に出演したとされる動画がインターネットで出回っており、「そのことを苦にしていたようだ」とも述べた。

中朝国境地帯では長らく、北朝鮮女性の人身売買が横行している。

被害者の一部はアダルトビデオチャットへの出演を強制させられるなどしており、その動画が、韓国定着後に取り沙汰されることがあるという。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

人身売買も動画出演の強制も明らかな人権侵害であるわけだが、そのような過去が脱北女性たちの新しい出発を妨げるという、あってはならない事態が起きているのである。

一方、中朝国境地域の中国側では最近、保衛省が脱北者の拉致作戦に力を入れているとされ、イムさんはその餌食になったとする見方も消えていない。

中朝国境地域の事情に精通したデイリーNK情報筋によると、北朝鮮当局は脱北者を拉致する目的で、国家保衛省の要員からなる「拉致組」を作り、吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉、遼寧省の瀋陽、丹東などに派遣しているという。

イムさんの足取りを知っていると語るAさんがデイリーNKに証言したところによると、彼女は中国で営んでいるオンラインショッピングサイトの仕事で頻繁に出張していた。最近では4月初めに中国に向かい、5月中旬に延吉にいたことはわかっているが、それ以降は消息が途絶えた。

イムさんは、韓国で脱北者バラエティショーに出演し、北朝鮮の体制批判を行っていたいたことから、国家保衛省のターゲットになった可能性があるが、一方で家族の話を持ち出され、耐えきれずに北朝鮮に戻った可能性もあるとAさんは述べた。

Aさんは、イムさんと共演していた脱北者の話として「人間関係も良好で、特に問題はなかった」と語り、イムさんが北朝鮮当局制作の動画で「(韓国は)地獄のようだった」と述べた言葉は「台本に従っただけ」との見方を述べた。

いずれにせよ、イムさんが再び北朝鮮から脱出することでもなければ、再入北の真相が明らかになる可能性は低いと言えそうだ。