とある地域をクローズアップして映画にすることは少なくないが、ここまで「面白さ」を突き詰めた作品は、なかなかないのではないだろうか。劇場公開に先んじて、第9回沖縄国際映画祭にて上映された『劇場版 お前はまだグンマを知らない』では、場内は爆笑に次ぐ爆笑で湧いた。ひそかに観客と一緒に座って観ていた主演の間宮祥太朗も、その盛り上がりに相好を崩した。さらに、共演の吉村界人は、演じていて間宮の表情や台詞に笑いを堪えるのを必死だったと明かす。

異常なほどグンマ愛が強いクラスメイトたちに翻弄される、東京から転校してきた高校生・神月を嬉々として演じた間宮と、「グンマに来て生き帰った者はいない」と、神月をさらに不安に陥れる幼馴染の轟一矢を演じた吉村を、沖縄で直撃した。

――沖縄の皆さんの反応を、どう受け止めましたか?

間宮:多少の戸惑いはありながら(笑)、でも受け入れてくれているなあと思いました。沖縄でグンマの話をやるっていうのはなかなかだと思うんですけど、すごく笑ってくれていて。僕も一緒に観ていたので、よかったと思いましたね。

――ドラマ版はすでに放送が終了しましたが、周りの方々の反応はいかがでしたか?

吉村:正直、僕の周りはグンマのことがわからない人ばかりですけど、その人たちも皆「面白い」と言ってくれています。神月の表情であったり、(入江)甚儀のキャラだったり、すごく注目されていて。話が成立しているんだな、と感じます。

――おふたりは今回、初共演ですよね。お互いの作品はご覧になっていたりするんですか?

吉村:僕は祥太朗と顔見知りではなくとも、出演作はすでに観ていました。特に『ヴァージン』を覚えているかな。

間宮:懐かしい。だいぶ前だね! 10代だと思う。俺も映画やドラマで観ていたよ。

――共演後、イメージは変わりましたか?

吉村:はい、よくなりました。

間宮:(笑)。おいおい、本音が出たぞ、おい(笑)。

吉村:(笑)。すごくいいっていうこと! 祥太朗は明るいんですよ。僕、ちょっと普通の人より暗いかもしれないんですけど、暗いからと言って、暗いやつが好きなわけでもないんです。

間宮:(笑)!

吉村:だから、明るいところがいいなって。

間宮:俺は、(吉村を)すげえ尖っている人かなと思っていました。ミステリアスでアーティスティックなイメージもあって、それは今も変わらないんですけど。思っていたよりも、ずっとキュートだったのはありますね。

――吉村さんは、お芝居で言うところの「受け」の立場ですが、間宮さん渾身の顔芸に笑っちゃったりはしましたか?

吉村:何度もありましたよ(笑)! 台詞の言い方もすごく面白くて、ツボッちゃったりもしました。

――反対に、間宮さんは?

間宮:もはや言っていること自体、内容そのものが、傍から見たら「は?」ということばかりというか(笑)。ふざけたことを本気で言うので、すごく面白かったです。特に、僕が本気で、「お前も一緒にグンマーになっちゃえ!」と言っているのに、轟が「なりたくねぇよ!」ってすごい熱く返す感じとかは、笑ってしまいましたけどね。

――印象的な数々の表情は、どうつくっていったんですか?

間宮:やってみて、「もっとこうだったほうがいいかな?」と(水野格)監督に見せて、「ここはそこまでテンションを上げないほうが、後々のシーンに効くんじゃないか」と話をして調整することが多かったです。

――通しで観て、間宮さんはご自分の表情の演技で発見したことはありますか?

間宮:いや、僕からしたらずっと自分の変な顔を観ているので、不愉快ですね(笑)。自分の気持ち悪い顔を、自分がずっと観ているから、本当に「うるせえ顔してんなあ」と……。

――ドラマ版放送時に、それこそ「イケメンの間宮さんの顔が!」とネットがザワついていましたが、ご本人はそのような気持ちだったんですね。

間宮:いや……本当に「無理してイケメンとしないでいいんですよ」と思っていて。何でしょうね? 僕は格好いい役をあまりやっていないんですよ。

――近年の出演作『ライチ☆光クラブ』のジャイボ、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』の鰐戸三蔵、『帝一の國』の氷室ローランドなどを振り返ると、確かに際立って個性的な役の印象が強いかもしれません。

間宮:そうなんですよ。格好いいであろう同年代の役者たちが集まっている作品に出て、何とかその枠に入れてもらっている感じなので。自分の役を思い返して、「何が女の子の心をつかむようなイケメンの役だったか」と言われると、特にないんですよね。隙間産業的な……。

吉村:(笑)。

間宮:でも、そう書かれることに対して、得と言いますか。「イケメンなのに、あれだけの変顔を披露している芝居!」みたいなことって、文章に振り幅があるじゃないですか。そうやって観てくれて、例えば「すごいな」と思ってくれる人がいる一方で、純粋に芝居だけを観たときに、評価に値するものなのかどうかは、また別の話になってきたりするんじゃないかなと思うんです。もし「イケメン」と言われなかったら、評価が変わっちゃうのかな、いつか甘やかしてもらえなくなるんだろうな、という感情はあります。なんか「お金持ちなのに、庶民派でいい人ですね」みたいなことだと思うんですけど……わかる?

吉村:めっちゃわかる、めっちゃわかる。

――グンマでのカルチャーショックのようなものは、作品を通してありましたか?

間宮:台本が、もうカルチャーショックですよね。こんなのあるんだ……!、って。

吉村:そう。もし本当にあのままだとしたら、グンマの人たちは、我が強いですね!かたくなで、主張がすごいんです。

――吉村さんは東京、間宮さんは横浜と都会の出身ですが、その点において言われがちなことはありますか?

吉村:東京は遊びが違う、みたいな。ちょっとませてるのかなあ、と思います。僕らが中学生のときにやっていた遊びとかが、地方の高校で流行るというのはたまに聞きます。

間宮:横浜出身と言うと、「プライドが高いイメージがある」って。

吉村:へ〜。そうなんだ。

間宮:あと神奈川の人は神奈川以外のことを「地方」と言ったりするって(笑)。

――となると、グンマ独特の疎外感や「負けないぞ」感は、「わかる」というよりも不思議な感じだったんですか?

吉村:そうですね。自分の県にプライドを持つことは、考えたこともなかったなと思いました。ほかの県に比べて、「俺らはこうだ」と比べたことがなかったので、新鮮でした。

間宮:『劇場版 お前はまだグンマを知らない』に関わらせてもらう以前の僕は、グンマ、トチギ、イバラキが争っていることとかは知ったことではないっていう話でした(笑)。よくテレビとかでも比べたりする番組が、あるじゃないですか?まさに、轟の台詞で「そこの3県で争ってどうするんだよ」と、あまり気に留めたことがなかったです。

吉村:(笑)。

――実際にグンマで撮影されて、大変だったことと言えば?

間宮:あそこが一番大変だったよね!

吉村:山でね、パンツを降ろして……(笑)。本当に寒かった! あと結構カメラから離れていたので、ずっと立っているのが長くて。

間宮:「寒〜〜」って。

吉村:途中からみんな震えて笑えてきちゃっているのに、笑いもこらえないといけなくなっちゃって……!

間宮:だって「股間を出して何やってるんだろう……」って(笑)。震えてるのにね!(取材・文:赤山恭子/撮影:市川沙希)

『劇場版 お前はまだグンマを知らない』は、7月22日(土)から池袋シネマ・ロサほか全国公開。

【あわせて読みたい】

※ 『パワーレンジャー』日英美女対談!ナオミ・スコット×広瀬アリス「似ている私たち♥」【インタビュー】
※ 大人でも子供でもない「コドナ」な窪塚洋介×降谷建志が放つ『アリーキャット』ふたりで奏でた「運命」【インタビュー】
※ 瀧内公美×高良健吾「役者の手柄にさせてくれる」廣木隆一作品で出会った、ふたりの想い【インタビュー】
※ 日本中が大熱狂!この夏一番のアトラクション・ムービー!『パイレーツ・オブ・カリビアン最後の海賊』〜大久保佳代子〜
※ 誰もが経験したことのある「最高の失恋」をもう一度。実写版『心が叫びたがってるんだ。』