『心が叫びたがってるんだ。』 (C)2017映画「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会 (C)超平和バスターズ

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…前編「『ここさけ』実写版、想像以上に良かった芳根京子の好演、そして…」より続く

【ついついママ目線】『心が叫びたがってるんだ。』後編
親は、子の人生に対するプレッシャーと戦いながら生きている

大ヒットしたオリジナル劇場アニメを実写化した『心が叫びたがってるんだ。』。アニメ版では心に傷を持つためにしゃべれなくなったヒロインの母親を冷たいと感じたが、実写版では単なる冷たい人物と突き放して見る気にはなれなかった。

最低な母親の、描かれていない部分に思いをはせる

母親の人物像の描き方に大きな違いがあるわけではない。ただ、生身の俳優が演じるだけに、母親の人生を感じることができた。アニメ版では克明に描かれなかったが、母親に扮する大塚寧々には年齢を重ねた者が持つ肌のたるみやシワがあり、人生の重みがにじみ出ていて、彼女にも苦悩があることが伝わってきた。

シングルマザーとして仕事をしながら順を養ってきた母親・泉には、ひと言では尽くしがたい大変さがあっただろうと思いを馳せることができたのだ。泉はしゃべれなくなった順に対して、これまでも責任感や負い目を感じてきたのだろう。きっとそのせいで、イラつきを順、当人にぶつけてしまうのだ。

順の場合は特殊な例だが、子どもが風邪をひくと母親がイライラしてしまうのはよくあること。それが自分の注意不足だと思い当たったりするとなおさらだ。申し訳ないことをしてしまったと思う反面、「どうしてあれぐらいのことで体調を崩すのよ」と不満に思い、「しっかり休まないからなかなか治らないのよ」とじれったく感じる。

でも、それって子どもに対して責任を感じるからこそであり、早く良くなってほしいと思うからこそ焦るのだ。子どもの人生を他人事にできないから、親は背負いこんでしまうもの。だからって子どもにイライラとあたってしまうことを正当化することはできないが、どうしようもないときもあるんだよなぁ、と思ってしまう。

親というものは、子どもの人生に対するプレッシャーと戦いながら生きていることを、大塚寧々のシワを見ながら思い巡らした。(文:村井香南/映画ライター)

『心が叫びたがってるんだ。』は7月22日より全国公開される。