物理的には存在しないはずの霊魂の存在を、人間の脳は認識することがあります。なぜ人間は「幽霊を見た」と思うのか、50年にわたって超常現象の研究を続けてきた科学者がその理由について語るムービーが「Why people think they see ghosts」(なぜ人は幽霊を見たと思うのか)です。

Why people think they see ghosts - YouTube

人間は古くから幽霊が存在することを信じてきました。ある調査によると、アメリカ人の45%は幽霊が存在し、死んだ人が特定の場所や状況で甦ることがある、と信じているという結果が判明しています。



また、28%の人は実際に幽霊を見たとも回答しています。



幽霊は映画の素材として使われることも多いもの。1999年の映画「シックス・センス」では、幽霊に関する驚きの結末が描かれています。



また、小説のテーマとしても幽霊はたびたび用いられています。



古代の人類も、幽霊の存在や、死後の世界への感心を強く持っていたことをうかがわせる証拠が残されています。





それでは、現代の科学で実際に幽霊が存在することを示す証拠は見つかっているのでしょうか?



話を聞いたのは、ニューヨーク州バッファロー市で超常現象の科学的調査を行うジョー・ニッケル氏。国際的な非営利組織「サイコップ」の特別研究員で、「世界で唯一の、給料をもらいながら科学的観点で超常現象を調査する研究家」とのこと。



ニッケル氏の目的は、超常現象のウソを暴くことや、逆に正しいと触れ回ることではなく、あくまで「説明する」ところにあるそうです。



ニッケル氏は、超常現象を説明するために言語学や、血液分析、心理学的手法などありとあらゆる方法を取り入れてきたとのこと。そんなニッケル氏がたどり着いた答えは、ほんの一例すらも、科学的に説明がつくものはなかった、というものだそうです。



この問題を難しくしているのは、人によって「幽霊」の定義が異なるからだといいます。本棚から本が落ちることも「幽霊の仕業」だったり……



写真に映る「オーブ」も幽霊といってみたり。



屋根裏から聞こえる怪しい足音も幽霊だったり……



妻の陶芸を後ろから助けるのも「ゴースト」……これは蛇足。



幽霊の存在を示す、とされる証拠の多くが、不明瞭な写真だったり……



監視カメラなどのビデオ映像だったり……



「目撃者による証言」だったりします。



「ゴーストハンター」が幽霊を探す際には、周囲の電磁場を測定する「EMFメーター」が用いられます。これは、幽霊が出現する時に電磁場が乱されるという論理に基づくもの。



しかし、誰もその関連性を説明できず、科学者の多くは懐疑的な見方を示します。



つまり、科学の目線から幽霊の存在を証明することは今のところはできません。しかし、もし「幽霊を見た」と思ったとしても、それは決して「頭がおかしくなった」とはいいきれない部分も実はあります。



それは「超常現象の体験に対する論理的な説明が多くあるから」という理由によるもの。



その一つが、人間には低すぎて聞こえない20ヘルツ以下の「インフラサウンド」の存在。この音は、気象条件やザトウクジラの活動、エンジンや扇風機のような機械によって生みだされることがあります。



過去の研究では、このインフラサウンドが気持ちの減退や寒気、そして自分の近くに誰かが立っている、と思わせる原因となり得ることが判明しています。



また、アメリカの科学者であるニール・ドグラース・タイソン氏は「1秒間に18回振動する18ヘルツで、人間の眼球の組織が共鳴します。18ヘルツで眼球が振動することで、本来は見えないものが見えてしまうということがあります」と語っています。



また、人間の知覚の特徴をもとに、幽霊が存在するような感覚を再現する研究も行われています。この機械は、人間の指の動きを立体的に読み取って……



背中の側にあるアームで同じ動きを再現することが可能な装置。



この装置を使って、自分の指の操作で背中のアームを動かして自分の背中を「つんつん」とするのですが、ただしその動きには1秒以下のわずかな「ズレ」が設けられているのがポイントです。



自分の操作をそのままに再現している場合でも、そこにズレが存在することで、人間は誰か別の者がそこにいて背中を突っついているように感じるとのこと。このような人間の感覚の特性も、人間が超常現象を体験する原因になると考えられているわけです。



これは「Misperceived Self-Representation」(誤って感知された自己表象)と呼ばれています。



ニッケル氏は「人々が幽霊を見たということは起こりえます。しかしそれらは、完全に寝ている状態と完全に起きている状態の間の『まどろみ』に生じる白昼夢によって引き起こされることが多いものです」と語ります。



この白昼夢は「Sleep paralysis」、つまり「睡眠まひ」や「覚醒発作」とも呼ばれるもの。



寝ている時に、意識はあるのに体が動かない「金縛り」がまさにこの状態を指します。まるで誰かに押さえつけられたように体が動かず、何かの存在を感じる、そんな時に人間は「幽霊」の存在を感じるというわけです。



また、「悲しみ」の感情も幽霊の存在を感じさせる原因になるとのこと。



自分に近しい人を亡くした人の60%が、相手の存在を感じたり、声を聞いた経験があると答えた調査結果が存在しています。



著書「見てしまう人びと:幻覚の脳科学」(原題:Hallucinations)の著書であるイギリスの神経学者・オリバー・サックス氏は、逝ってしまった人の顔を目にすることで、人間は悲しみの気持ちに立ち向かうことができるといいます。



サックス氏は、人間が見る幻覚について、「幻覚は恐れるべきものではなく、多くの場合は慰めとなるものです。それは亡くなった人への哀悼を示すプロセスの一部で、心にあいた穴を埋めて癒やしに至る手助けとなるものです」と語ります。ちなみにサックス氏は、ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズの主演でアカデミー賞にもノミネートされた映画「レナードの朝」の原作小説を発表した人物でもあります。



ニッケル氏は「多くの超常現象が非常にポジティブな結果につながっていることに疑いはありません。いくつかの例外はありますが、全ては人間の希望や恐怖に関連しているものです」と語ります。



「幽霊が存在している、と期待するのは『人間は完全に死んでしまうわけではない』と思いたいからです。愛する人が、どこかに行ってしまうのではなく、まだ存在して生きていると思いたいからです。例えば、私の祖母が亡くなった時、私はそれが事実だと受け入れたくない気持ちが強くありました。しかし、私たちの体から霊魂が抜け出して幽霊になって存在し続ける、という考え方は、私にとってとても大きなものでした」



「だって、誰しも『お母さんにこのことだけは伝えておきたかった』ということや、『あの時、父さんのことを本気で怒っていたわけではない』と思うことはありますからね」と語るニッケル氏。



幽霊の存在は、実際には自分の心の中にあるということなのかもしれません。