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■どんなクルマ?

「WRX STI」と「S4」 どう違う?

スバルは(ご存知のように)安全性とスポーツ性とで抜きんでたイメージを誇るメーカーだ。スポーツ性において頂点に位置するのはWRX STIだ。2017年5月24日に大幅改良を受けたモデルに、ようやくというかんじで乗ることが出来た。

スバルWRXシリーズは、STIとS4がある。超がつくようなスポーツ性をもったフルタイム4WD(スバルはAWDという)の4ドアセダンだ。後席も使えるけれど、ドアを4枚もったピュアスポーツカーと考えたほうがいかもしれない。

実際にスバルじしん、ラインナップにおける位置づけとしてはBRZよりWRXのほうがスポーティとしているほどだ。

そこにあってSTIとS4のちがいをひとことで説明すると、STIはよりスポーツ性が強いということにつきる。マニュアル変速機はSTIだし、新型でも数多く、よりよいスポーツ走行を可能にするための技術が盛り込まれたのもSTIだ。

ついでにS4についてさらりと触れておこう。

走りが楽しめるのは事実で、エンジンはともに2ℓ水平対向4気筒だが、WRX STIとはちがうものだ。

S4のエンジンは直噴ターボ(出力はほんの少し落ちるが)。トランスミッションも無段変速機。先進的安全装備も0から時速60kmの範囲で車線に関係なく先行車を追従するアイサイト・ツーリングアシストなど豊富に用意されている。

「WRX STI」と「S4」 あきらかな違い

WRX STIは方向性があきからに異なる。新型はまずセンターデフが変更された。従来は電子制御に加えトルクを使った機械締結式のギアが採用されていたが、新型は「マルチモードDCCD」とスバルが呼ぶ完全電子制御タイプとなった。

サスペンションシステムは「フラットで減衰のきいた乗り心地」(スバルの資料)のためにダンパー、スプリング、スタビライザーの設定が見なおされている。もうひとつの目的は「さらにすぐれたハンドリングのため」とされる。

さらにブレーキに手が加えられた。前後ともに従来は17インチの2ピースだったものを、新型は18インチのモノブロックに。「制動力と耐フェード性を大幅に向上」とスバルでは説明する。

さらにフロントは対向2ポットから6ポット(リアは従来のまま2ポット)へと変更された。ブレーキローターも新型はいわゆるドリルドタイプである。

これこそファンが喜ぶ新しい装備だ。先進的安全技術も嬉しいかもしれないけれど、WRXシリーズのキャラクターをはっきり分けたのは大正解。STIは頭のなかがまっしろになるぐらい痛快な走りが堪能できるクルマとして完成度が上がったのだ。

新型はじっさいに走りが楽しくなっている。これはすばらしいニュースなのだ。ごくかんたんに書くと結果として、よく曲がり、よく止まる。スポーティカーにもっとも重要な要素が大きく改良された。よく走る、のほうは言うまでもない。

■どんな感じ?

WRX STIは「スバルブランドに重要な商品」

モータースポーツに力を入れてきたスバルの金看板ともいえるWRX STI。スポーツイメージを牽引する「スバルブランドに重要な商品」とメーカーでは位置づけている。

外観的にはボンネットのエアインテークと、大きなエアダムが目を惹く。張り出したフェンダーに組み合わされたタイヤは新型でアドバンスポーツV105Sの245/35の扁平率を持つ19インチとなった。ダークガンメタリックで塗装されたホイールもスポーティな雰囲気を盛り上げる。

WRX STIというと大型リアスポイラーというイメージだけれど、ベーシックモデルはスポイラーをもたない。

それはそれで、しれっとこのクルマを駆るのもいいかもしれない。もちろんどうせなら大型スポイラーを楽しむのもいいだろう。

走りは期待どおりというか、それ以上だ。

WRX STI、のった印象は?

テストできた場所は状況がかぎられていたが、スバル開発者の狙いどおり、目がさめるハンドリングを堪能できた。

試乗した車両はオプションのレカロスポーツシートを装着していた。とりわけ新しいタイプはやや横幅に余裕をもたせて、カバーする体格の範囲を拡大させている。「着る」ようなタイトな感覚をバケットシートに求めるひとはともかく、多少の余裕があってもいいだろうと思った。

そこからして早くも走る予感に満ちているのだが。シートのポジションを調節したあと、クラッチペダルを踏み込むと、そこでさらに気分が高揚する。

クラッチペダルの反発力は強く、いかにもスポーティなヘビーデューティクラッチを搭載している感に、うれしくなってくる。

じっさいにエンジンに火を入れてクラッチをつなぐと、まさにはじけるようにクルマは飛び出していく。エンジン回転計のレッドゾーンは8000rpmと信じられないところに印がついている。

それをちらりと目にしながら、そこまで味わえたらどんな気分だろうと想像する。最大トルクの43.0kg-mは4400rpmで発生と、むかしながら(?)の高回転型の設定だが、この熟成に熟成を重ねたエンジンはまだまだ現役だ。

燃費はリッターあたり9.4km(JC08値)にとどまるが、まあむしろ悪くないと考えたい。


気分よく弾けるような排気音を聞きながら加速中は4000rpmあたりをめどにシフトアップしてみた。みるみる速度があがっていくかんじは4ドアセダンとは思えない。

コーナーの手前でブレーキングすると「いいなあ」と声がでてしまった。がつんっとみごとな効きのよさ。ブレンボ製の6ポットキャリパーとドリルドの通気式ディスクによる制動力の高さとペダルへのキックバックのたしかさは、(こう書いては悪いけれど)従来型の比ではない。

とにかくあっというまに高速まで加速する能力を備えたモデルなので、このブレーキは必需品だと思った。ぎゃくにいうと、この2つの組み合わせはみごとだ。

耐フェード性もスバルの開発者の自慢ということで、積極的にスポーツドライビングを楽しむひとは、ぜひ体験してみてほしい。

さらに、加速力と制動力についで3つめの驚きが待っていた。

WRX STI、大幅改良の大きなセリングポイント

スバルWRX STIの大幅改良モデルの大きなセリングポイントはハンドリング性能の向上という。実際にそのとおりだと思う。

新型は従来のような機械式締結方式をいっさいやめて、完全に電子制御となっている。開発担当者によると「コーナーの曲がりはじめの回頭性を向上させるとともに、(クルマが外側にふくらむ傾向をみせる)アンダーステアを軽減するのが目的」ということだ。

曲がりの性能は従来型もけっして悪くなかったが、新型を体験すると、あらためてクルマの進化というものに感心する。レールに乗ったような、というコーナリング性能を評価する文言があるけれど、まさにそんなかんじだ。

AWD(フルタイム4WD)の完璧性をめざすために、ていねいにネガをつぶし、より多くのユーザーが満足することを狙ったといえるだろう。それは確実に奏功している。

サスペンションシステムに手をいれて、たとえばスタビライザーはリアの接地性向上を目指したというのも大いに貢献しているだろう。

小さなコーナーも大きなコーナーも、まるでスポーツをするみたいに曲がっていける。こんな感覚のスポーツセダンが300万円台で手に入るというのは驚きですらある。

回頭性の高さとスラロームをやったときの通過速度は、今回のセンターデフ変更と足まわりの改良における重要なパラメターだったようだ。おもしろいのは、スポーツ走行にとっていいことが、より広い層のドライバーにとってもいいことといえる点だ。

ステアリングホイールとドライバーとが一体になったような、軽快な動きでコーナーを曲がっていける。この自然な感覚は性能向上したブレーキとも共通したものがある。操縦感覚がよりナチュラルになっているのだ。

走らせていておもしろかったのは、トルクの太さゆえに意外なほどずぼらな運転も出来てしまうことだ。なにしろ43.0kg-mもあるだけに、あまりひんぱんにシフトダウンしなくても、けっこう力強い走りが出来る。これは都会で乗るのときにありがたいかもしれない。

日常生活の使い勝手もじつはちゃんと手抜かりなく改善されている。

誰が乗っても楽しめるようになった

スバルWRX STIはかぎられたひとのクルマではない。ポルシェのスポーツカーが一部のひとだけのものと言ったらみなが驚くのと似ている。誰が乗っても楽しめる。

広い範囲でユーザーを見ていると思わせてくれるのは、安全性や快適性がおざなりになっていない点だ。

ひとつは静粛性の向上がはかられたこと。どちらかというと2ペダルのS4のための改良点といえるかもしれないが、もちろん、静かになって悪いわけではない。

板厚ガラスの採用やドアまわりのゴム材の材質見直し、さらに各所の吸音材の密度向上など、細かくていねいに対策がほどこされている。

WRX STIにおける安全装備も増えている。ひとつはステアリング連動ヘッドランプ。ステアリングホイールの切れ角と連動してヘッドランプの照射方向を変える(むかしのシトロエンのような?)システムだ。

「車両や歩行者をいちはやく認識できるなど夜間走行の安全性を高める」とスバルの開発者はその意義を謳っている。

もうひとつはオプションのフロントビューモニターだ。フロントグリルにカメラを設置。その映像をマルチファンクションディスプレイに表示する。

メリットは見通しの悪い交差点などでの衝突防止の手立てとなること。狭い場所での切り返しなどノーズの位置確認にも使えるようだ。

■「買い」か?

今だからこそ、「WRX STI」が光って見える

価格は358万円(本体価格)からで、スポイラーの形状で価格があがっていく(なんとなくWRX STIらしいというか)。大型リアスポイラー装着のタイプSは381万円(同)である。

インテリアにもう少し趣味性が出るといいとか個人的な好みもあるけれど、この価格でこの内容はいい。このあとハイブリッド化とか電気化とか、自動車の未来が見通せない状況下で、まだこの楽しみがあるのはすばらしいことだ。

スバルWRX

■価格 4,060,800円 
■全長×全幅×全高 4595×1795×1475mm 
■最高速度 - 
■0-100km/h加速 - 
■燃費 9.4km/ℓ 
■CO2排出量 247g/km 
■乾燥重量 1490kg 
■エンジン 水平対向4気筒1994ccツインスクロールターボ 
■最高出力 308ps/6400rpm 
■最大トルク 43.0kg-m/4400rpm 
■ギアボックス 6速マニュアル