2020年に実用化予定の次世代モバイル高速通信「5G」をはじめ、人々の購買行動や意識を変える新しい技術や製品は、着々と開発が進められている。6月28日に開催したBCN初の予測セミナー「大胆予測! 2020年のデジタル家電市場」を受けて、各業界に精通した3名に、現状分析を含め、今後の展望と予測を聞いた。

■<2020年の国内家電市場>

「モノづくりできないメーカーとモノまでつくれる流通の戦い」

 「2020年の国内家電市場で国内メーカーの出荷額は2割程度」――。衝撃的な予測をするジャーナリストの立石泰則氏だが、国内メーカー以外のマーケットプレイヤーの内訳は、さらに過激だ。

 「ヤマダ電機やドン・キホーテなどの流通企業やアイリスオーヤマなど異業種の参入企業が3割、海外メーカーが4割、残りの1割が(スタートアップなどの)専業メーカーだろう」。メーカーの競争相手は、海外メーカーだけではなく、国内の流通企業も対象になるというのだ。

 「モノがつくれなくなったメーカーと、モノまでつくれるようになった流通の戦い」という立石氏の見立てが、地殻変動を起こすマグマのように家電市場でうごめいている。確かに、10年間にわたりテレビの独占販売で提携したヤマダ電機と船井電機の4K対応テレビが6月2日から店頭に並び、6月15日に発売したドン・キホーテの4K対応テレビは1週間で3000台を完売するという、まるでシンクロするかのような両社の動きは、あながち偶然でもなさそうだ。

 立石氏はこうした動きの背景を次のように分析する。「付加価値の高い製品しかつくらないというのはメーカーの理屈。高くて利幅が大きいといっても、台数が出なければ売り上げは減少して利益も先細りする。家電量販など流通がほしいのはボリュームゾーンの価格帯の製品だ。ボリュームゾーンは利幅が小さくても量でカバーできれば利益は確保できる」。

 国内メーカーが手を出せない空白地帯を、業を煮やした流通企業と海外メーカーが一気に奪いに行くという構図にも映る。さらに、立石氏は消費者の行動の変化に敏感な流通企業に分があるという。「年金をもらっている団塊世代やその10歳下の世代は高付加価値モデルを買えるかもしれないが、30代、40代、さらに若い20代は高付加価値の製品を買いたくても買えない。いみじくもドン・キホーテの格安4K対応テレビが1週間で売り切れたことがそれを証明した」。

 人口減少や世代間格差、首都圏の一極集中などマーケット構造が変わるなかで、おいしい上澄みだけを取ろうとする家電メーカーの高付加価値路線は、気づいたときには流通企業や海外メーカーに圧倒的な量で周りを固められ、プライスリーダーの座まで握られてしまうという、取り返しのつかない事態を招くかもしれない。(BCN・細田 立圭志)

ジャーナリスト 立石泰則

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。1950年、福岡県北九州市生まれ。 中央大学大学院法学研究科修士課程修了。 経済誌編集者や週刊誌記者等を経て、88年に独立。 92年に『覇者の誤算 日米コンピュータ戦争の40年(上・下)』(日本経済新聞社)で第15回講談社ノンフィクション賞受賞。最新刊は『日本企業が「希望」を与えた時代』(七つ森書館)、その他にも『さよなら!僕らのソニー』(文春新書)や『パナソニック・ショック』(文藝春秋)など著書多数。