チェスター・ベニントンさん (Stefan Brending / Wikimedia Commons)

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 アメリカの人気バンド、リンキン・パークのヴォーカリスト、チェスター・ベニントンが亡くなった。41歳。自殺と報じられている。

 早逝するロックミュージシャンは珍しくないが、最近は、90年代以降のグランジ〜オルタナティヴ系のバンドのフロントマンの死が目立つ。

 今年5月にはサウンドガーデンのヴォーカル、クリス・コーネルが52歳で死亡している。こちらも自殺という見方が有力だ。

 また、一昨年には元ストーン・テンプル・パイロッツのヴォーカル、スコット・ウェイランドが48歳で死去。薬物の影響が指摘されている。なお、奇しくもこのバンドの2代目ヴォーカリストが今回亡くなったチェスターだ。ストーン・テンプル・パイロッツは、歴代のヴォーカルを続けざまに失ったことになる。

チェスター・ベニントンさん (Stefan Brending / Wikimedia Commons)

 いずれも27歳で自殺したカート・コバーン(ニルヴァーナ)に比べれば長生きしたと言えなくもないが、やはり普通に見ればいずれも早すぎる死だと言わざるをえないだろう。

 彼らはなぜ早逝してしまうのだろうか。

「どうせクスリや酒のせいだろ」といった突き放した見方も可能かもしれないが、よく指摘されるのは、幼少期の虐待などトラウマの影響だ。チェスター・ベニントンは取材で幼児期の虐待を告白していたという。

虐待という背景

 アメリカの人気バンドの多くが、こうした虐待をテーマにしている。ニルヴァーナと同時期にシーンを牽引したパール・ジャムの初期の代表作「ジェレミー」は、両親にネグレクトされた子供を扱った名曲だ。

 また、コーンのヴォーカリスト、ジョナサン・デイヴィスは自身の幼少期の虐待経験、学校でのいじめられた経験などを歌詞で表現している。

 こうした経験は、大人になり、また成功してからもそう簡単に脳内から拭い去れることではないようだ。『ロックと共に年をとる』(西田浩・著)の中で紹介されているジョナサン・デイヴィスへのインタビューを描いたワンシーンは象徴的である。著者は、ジョナサンの歌詞について突っ込んだ質問をしていく。最初は、それに対してよどみなく答えていたのだが、「あなたの子供が、あなたの歌を聴いて、その悲惨な体験を知ってしまうことに抵抗はないでしょうか」という質問をしたところ、突然、相手は黙り込んでしまう。

「ちょっと失礼。すぐ戻って来る」

 そう言ってジョナサンは部屋を去ったのだが、結局、二度と戻っては来なかった。後で聞いたところでは、トイレの個室にこもって吐いていたのだという。作品として昇華したはずでもなお、感情をコントロールできないということなのかもしれない。

新作で歌われたこと

 リンキン・パークは最近、新作「ワン・モア・ライト」を発表したばかりだった。過去の作風から一変したこのアルバムは、ファンの間でも賛否が分かれていた。ヘヴィーなギターや、叫ぶようなヴォーカルがほとんど聴こえてこず、一聴したところでは流行のダンスミュージックに近いポップな曲が並んでいたからだ。

 しかし、アルバムの1曲目は「Nobody Can Save Me(誰も私を救えない)」。

 そしてシングルカットされた「Heavy」ではこのフレーズが繰り返されている。

「Why is everything so heavy?(なぜ何もかもがこんなにヘヴィーなのか)」
 
 一見、軽くてポップな作品も、今回の訃報を受けて聴こえ方が変わってくるかもしれない。
 
 死因あるいは自殺の動機はまだわからないが、経済的成功やファンの熱狂的支持だけでは乗り越えられない精神の闇があるということなのだろうか。
 
 いずれにせよファンは遺された作品を聴き、冥福を祈ることしかできない。

デイリー新潮編集部

2017年7月21日 掲載