ケツメイシ、BUMP、ミスチル、高橋優……今夏注目のシングルに見る“青春”のカタチ

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 7月後半、夏ソング商戦真っ盛りのJ-POPシーン。シングルを出すアーティスト数とペースは年々シュリンクする一方だが、7〜8月は年末に次ぐかきいれ時とあって多くの勝負作がリリースされる。そんな中、国内トップクラスの腕を持つメロディメイカーたちが今夏発表する、注目の新曲を紹介したいと思う。

参考:BUMP OF CHICKENの曲はなぜ感情を揺さぶる? ボーカルの特性と楽曲の構造から分析

 まずは、BUMP OF CHICKEN(以下、BUMP)、Mr.Children(以下、ミスチル)、銀杏BOYZといった人気バンドが立て続けにシングルを発表する。BUMPはカップヌードル新CM 「HUNGRY DAYS 魔女の宅急便篇」のタイアップソング「記念撮影」。大人になった主人公が青春時代を見つめるという詞世界が描かれ、彼ららしいバンドサウンドと新鮮味のあるエレクトロニックな音色が融合。そして、藤原基央のボーカルが爽やかなノスタルジーを呼び起こす。

 ミスチルの「himawari」は、ベストセラー小説を映像化した映画『君の膵臓をたべたい』の主題歌。映画予告編で聴くと、さすがミスチルというサウンドスケールを持った感動バラードに思えたが、ミュージックビデオは開催中のドーム&スタジアムツアーでのパフォーマンス映像で構成されており、相手への切なる思いを鬼気迫る歌声と演奏で爆発させる、想像以上に熱度の高い1曲になっていた。「himawari」は彼ら自身“今、もっとも聴いてほしい楽曲”とのことで、25周年にきて再度評価を上げ何度目かの青春期を迎えているバンドにとって、今のモードの産物とも言える。

 また、10月に初の日本武道館ライブを控える銀杏BOYZは、それに先駆けた3カ月連続シングルの第1弾「エンジェルベイビー」で多くのリスナーを歓喜させている。というのもこの曲、轟音もノイズもありつつ、メロディアス、キラキラとした音像、泥くさく青くさい歌詞……という、GOING STEADYや銀杏BOYZの最盛期に回帰したような青春パンクだからだ。「漂流教室」の歌詞にある<君と僕は一生の友達>というフレーズを引用するなど、ファンの胸を熱くさせるポイントも。メンバー脱退や作風の変化といった紆余曲折を経て“ど真ん中”に帰ってきた峯田和伸に、ロックンロールに対する並々ならぬ気概を感じる。

 ここまでの、夏の新譜3曲に共通するのは、「青春」要素を歌詞やサウンドにそれぞれの手法で取り入れていることだ。夏休みに恋や友情といった青春の思い出が生まれやすいことから、夏に発表される名曲は「青春」が欠かせないキーワードとなっている。

 また、夏×青春の象徴といえば高校野球。音楽界でも『熱闘甲子園』関連の番組で毎日流れる「ABC夏の高校野球応援ソング」は夏季の名物タイアップだ。この枠は夢に向かう人の背中を押すエールソングというテーマで一貫しており、過去に関ジャニ∞「オモイダマ」、FUNKY MONKEY BABYS「あとひとつ」などが生まれてきた。今年は高橋優の「虹」。高橋が全国各地を巡る「曲作りの旅」を経て完成させたこの曲は、「虹を待つな、虹になれ」をスローガンに、球児のみならず何かに頑張るすべての人に寄り添う曲に仕上がっている。万人の心にストレートに響く応援ソングを書かせたら、右に出る者はそうそういない適任者であり、またひと回り力強く進化した歌声と表現力にも注目したい。

 そんな中、夏ソングの名手・ケツメイシも新曲「はじまりの予感」をドロップする。「夏の思い出」を筆頭に「よる☆かぜ」「また君に会える」「男女6人夏物語」「お二人Summer」「カリフォルニー」「LOVE LOVE Summer」「ヤシの木のように」など、ケツメイシの夏にまつわる楽曲は枚挙にいとまがない。今回の新曲「はじまりの予感」は、思いがけずふとしたきっかけで抱く恋心を歌った、夏ソングなのにどこか切ない雰囲気のミドルチューンだ。

 ライブの演出等からコミカルなイメージの強いケツメイシ。現在敢行中のツアーのタイトルも『KTM TOUR 2017 幻の六本木大サーカス団「ハッキリ言ってパーティーです!!」』ときている。『はじまりの予感』のジャケットでも、ファンモンの“顔ジャケ”芸のパロティでアンタッチャブルの柴田英嗣を起用するという大胆な施策を打ち、そのエンタメセンスはJ-POPアーティストで最も成功した例のひとつと言っていいだろう。

 しかし、切なさや涙を誘うメロディメイキングもまた、J-POPシーンで随一の腕。特に今回は階段式に音階が上がっていくサビをはじめ、歌メロの美しさが際立っている。内情を見てみると作曲およびトラックメイキングには、Jazzin’ parkの栗原暁と久保田真悟、TINYVOICE PRODUCTION所属のクリエイター・Tasuku Maedaが参加しており、打ち込みのリズムにシンセサイザーやピアノが絡むドラマティックなアレンジには、彼らの手腕も一役買っているようだ。

 歌詞は、相手がふと微笑んでくれたこと、目が合ったことから、恋が始まる淡い予感に胸高鳴るという内容。こうした出会いの瞬間のドキドキ感は、年齢や性別に限らず誰でも体験したことがあるはずだ。例えばサビの<久しぶりなんだ こんな風な気持ち/ 出会えた奇跡は はじまりの予感/ただ君が 輝いて見えた/はにかんだ 微笑み/時が止まるほど 見つめ合って>。特別パーソナルな内容ではない普遍的な言葉を選ぶことで、彼らの曲は老若男女の共感を得ているのだと思う。人生の機微に触れる、言わば人の“青春”的感情を呼び起こすケツメイシの夏のライブラリに、またひとつ新しい名曲が追加された。(鳴田麻未)