バック・トゥ・ルーツの『ポケモン』、夏休み興行でスタートダッシュ!

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 「海の日」を含む3連休と重なり、本格的な夏休み興行が遂にスタートした先週末。ランキングのトップ10にも全体の半分となる5作品が初登場。その中で動員ランキングのトップに立ったのは、テレビアニメの初回放送から20年目を迎えた「ポケモン」シリーズの最新作『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』。全国368スクリーンで公開されて、土日2日間で動員43万6000人、興収5億1600万円を記録。前作『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』から興収比で159.3%といえば、その好調ぶりが伝わるだろう。

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 動員ランキングで2位につけたのは全国335スクリーンで公開された『銀魂』。土日2日間の動員39万2800人、興収5億4100万円。つまり、興収では子供客の比率が高い『ポケモン』を上回っている上に、金曜日公開と公開日が1日早かったことも勘案すると、先週末の真のナンバーワンは『銀魂』であったと言ってもいいだろう。初日を含むオープニング4日間の累計動員は74万2254人、累計興収は9億8200万円。今週火曜日以降、ウィークデイに入ってからもずっと好調をキープし続けている。

 今回考察したいのは、1998年から20年連続して夏休みシーズンに公開されながら、ここにきていきなり前年から初動成績約60%アップという数字を叩き出した『ポケモン』の好調の理由について。昨年の『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』は公開時期がスマホゲーム『ポケモンGO』の大ブームと重なったにもかかわず、そこに相乗効果は生まれず、最終興収は21.5億円とそれまでの19年間で最も低い記録に終わってしまった。近年、『ドラえもん』や『コナン』といったアニメ映画の長寿シリーズがシリーズ記録を更新するケースが頻出しているのと比べると、少々寂しい状況だったと言えるだろう。

 しかし、「ポケモン」のオリジナルはあくまでもゲームソフト。大人がスマホで『ポケモンGO』に興じている横で、子供たちは昨年秋に発売された3年ぶりの新世代(第7世代)ゲームソフトとなる『ポケットモンスター サン・ムーン』に夢中になっていたわけだ。自分にも小学生の子供がいるのでよくわかるが、『ポケットモンスター サン・ムーン』の発売以降、子供たちの間でのポケモン熱が明らかに再燃していた。今回の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』はそんな機運の中で製作された、映画としても主人公サトシとピカチュウの出会いから描いた「新たな始まり」となる物語。劇場に新規客を迎え入れるには、絶好のタイミングであったわけだ。

 それに重ねて、今回はテレビアニメ化20周年というアニバーサリー・イヤーであることから、早くから例年以上に周到で手厚いキャンペーンが展開されていた。また、今回バック・トゥ・ルーツなのは物語だけでなく、主題歌でもオリジナルの「めざせポケモンマスター」が20周年バージョンとなって復活している。例えばハリウッドでは、今夏の『スパイダーマン:ホームカミング』に代表されるように、監督やキャストを入れ替えて物語を最初から語り直す「リブート」の手法が盛んだが、よく考えたら日本のアニメ映画の長寿シリーズは「ポケモン」に限らず、昔からずっとそんな「リブート」を繰り返してきたことに改めて気づかされる。シリーズの人気を見事に復活させてみせた今回の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』は、映画作品としては「リブート作の成功例」として語ることも可能なわけだ。(宇野維正)