日本ではまだ認知度の低い砂像(さぞう)という芸術表現。その国際大会で最優秀賞に選ばれた日本人がいます。サンドアーティスト保坂俊彦さん。今年5月、台湾に登場した『宮本武蔵』に世界中の人たちが釘付けとなりました。

比べるまでもありませんが、子どもの頃に海辺で作った砂山とは段違いのスキルが必要。扱っている素材が「砂」である以上、どう考えてもすぐに壊れてしまいそうなのに。まだまだ、知られていない砂像の魅力、奥が深いんです。

儚くも力強い「砂」の彫刻

砂像とは、芯材を使わず砂と水だけで作られた彫刻のこと。表面に定着材を吹きかけて固めてはいるものの、とてもデリケートなんだそう。

でも、だからこそ石膏でもブロンズでもなく、砂で形づくられる彫刻は、永い月日を経てもカタチが残る素材には感じえない“儚さ”があります。 

意外にも、保坂さんがその魅力に気づいたのは、サンドアーティストとしての活動を始めてしばらくしてからだとか。

あるイベントの終了後、会場となった海辺に再び足を運ぶと、苦労してつくったはずの作品が跡形もなく、まるで何事もなかったかのように砂に還っていたそうです。とろこが、不思議と哀愁に似た感情は一切生まれなかった、と保坂さん。その時を境に彼はこう思うようになりました。

「自然の素材を使って自然の中でつくる砂像は、その場所でしか見ることのできない“一期一会”のようなもの」 

砂と作家との一瞬の出会いから生まれた作品は、まだまだあります。

21年間分の「一期一会」

東京藝術大学の彫刻科に在籍していた21年前、砂の魅力にハマった学生は、それまで専門としてきた粘土を捨てました。同じアートという枠には当てはまっても、「盛る」ことを主体とする粘土と、「削り出す」作業が骨格となる砂とでは、相反するものに思います。

あえて、大きなチャレンジに挑んだ保坂さん。自然の中で生み出したものへの余韻を楽しむ……たどり着いたのは、諸行無常の境地だったのかもしれませんね。

世界中のアーティストを集めた、国際的なイベントを日本で開催することが当面の目標だと保坂さん。砂に魅了された人々との一期一会を、ぜひこの目で見てみたいと思います。

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