医師に聞いた。お酒を飲むと眠くなる理由

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ビールがおいしい季節。特にこの時期、「お酒に飲まれた」という経験を持つ人は多いのではないだろうか。筆者は酔ってハイテンションになった後に必ず眠気が襲ってくるが、「教えて!goo」にも「お酒を飲むと眠くなるのはなぜ?」という質問が投稿されている。そこで、この疑問を医師に聞いてみた。

■お酒を飲むと眠くなるメカニズム

お話を伺ったのは、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターの上野文彦先生。

「お酒(エチルアルコール)は、中枢神経(脳幹網様体賦活系)の活動を抑制する働きがあります。実際に睡眠時の脳波を調べると、睡眠の早い時期にノンレム睡眠(深い睡眠)の割合が増え、逆にレム睡眠(浅い睡眠)が減っています。そのため、お酒を飲むと『寝つきが良くなる』感覚、いわゆる催眠作用が起こるということになります」(上野先生)

中枢神経とは、全身にさまざまな指令を送り、身体の中心的な働きを担う場所。この働きが鈍ることで眠くなるのだという。さらにお酒には、別の作用もあるのだという。

「また、抗不安作用、ざっくり言えばリラックスする作用もあるため、深夜に考え事をして眠れなくなってしまうタイプの方にとっては『寝つきが良い』感覚が得られるかもしれません」(上野先生)

確かに、お酒を飲んでいる間はそれまでクヨクヨ悩んでいたことがどうでもよくなる感覚がある。まあ、酔いが醒めた後に再び悩み始めるのだが……。

■お酒を飲むとすぐ眠くなる人は、ある酵素の働きが原因だった!

そもそも、アルコールはどのようにして分解されるのだろうか。

「エチルアルコールは体内で2段階に分かれて分解されていきます。まずアルコール分解酵素(主にADH1B)の働きによってアセトアルデヒドへ分解され、その後アルデヒド分解酵素(主にALDH2)の働きで酢酸(いわゆるお酢)へ分解されます」(上野先生)

お酒を飲むとすぐ寝てしまう人がいるが、これには体質が大きく影響している。

「すぐに寝てしまう人に関しては、アセトアルデヒドが体内に蓄積しやすい、アルデヒドの影響を受けやすい人だと思います。日本人の中にはADH1Bの働きが活発で、ALDH2は不活発な人の割合が欧米と比べて明らかに多い。アルコールからアセトアルデヒドへの分解は早く、逆にそこから酢酸への分解が遅いため、すぐに体内にアセトアルデヒドが貯まってしまうのです。エチルアルコールは気分が良くなる、多幸感をもたらしてくれる一方で、いわゆる『酒臭さ』の原因にもなります。アセトアルデヒドは眠気、言い換えるならば倦怠感の原因となります。また、他にも顔面紅潮、気分不快(嘔気・嘔吐)、頭痛、めまい、等種々の不調も引き起こします。発癌物質の一つにも認められている程なので、当然といえば当然です」(上野先生)

また、「若い頃は平気だったが、今はすぐに眠くなるようになった」という人は、加齢による身体の機能の変化が加味されるのだという。

■「寝酒」は身体に良いの?悪いの?

はじめにお酒のリラックス作用について述べたが、眠れないからと言ってお酒に頼っていると、アルコールの利尿作用により途中で目が覚めてしまったり、筋弛緩作用により十分な呼吸ができずに熟眠感が得られないなどの問題点もあるので注意が必要とのこと。

「本来であれば酒なしで眠るのが一番でしょう。ただし、実生活で酔ってから醒めるのを待っていると、結局十分な睡眠時間が確保できないので、睡眠不足になると思います」(上野先生)

泥酔状態の場合は、嘔吐からの誤嚥・窒息を防ぐために、酔いが醒めるまで起きておくのが望ましいそうだ。しかしながら、なかなかそうもいかないのが実情。ハメを外すのもいいが、翌日に予定がある場合などは「ほどほど」に留めておくようにしよう。

(酒井理恵)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)