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●伊東忠太の折衷がここに! 財閥創始者が夢見た祇園閣の扉が開く

桜が乱舞する春、紅葉が魅せる秋。確かに、京都の風景がぐっと味わいを増す季節だろう。しかし、夏にしか出会えない京都もある。京都市観光協会が主催する、「京の夏の旅」と題された文化財特別公開である。この「京の夏の旅」も2017年で42回目を迎え、今回は初めての取り組みも含めた全7施設が限定公開されている。

○名建築や眺望、庭園の美を味わう

この文化財特別公開は、近代の名建築や眺望、庭園の美などをテーマにし、日頃は一般公開されていない建築や庭園などが期間限定で公開されるというもの。2017年は7月8日〜9月30日の期間、「本野精吾邸」「大雲院 祇園閣」「東本願寺飛地境内地 渉成園『蘆菴』」「京都大学 花山天文台」「旧三井家下鴨別邸<主屋二階>」「上賀茂神社(賀茂別雷神社)本殿・権殿」「下鴨神社(賀茂御祖神社) 本殿・大炊殿」の7施設を公開している(一部公開期間が異なる)。料金はそれぞれの施設で異なる。

レンタカーを使えば7施設を1日でめぐることもできそうだが、やはりここは特別公開をじっくり楽しみたい。京都駅を起点に公共交通機関を利用して散策するなら、2日にわけてめぐるといいだろう。もちろん、気になる施設だけを狙ってみるのもいい。今回は2カ所に限定して訪れることにした。

○織田父子、そして五右衛門もここに

まず訪れたのは、京阪電車「祇園四条駅」から徒歩15分のところにある「大雲院 祇園閣」。すぐ側には「八坂神社」もあるので、あわせて訪れてみるといいだろう。八坂神社の南楼門を出てすぐ、逆さになった傘のような塔が見えたら、それが祇園閣である。

大雲院は天正15(1587)年、織田信長の帰依を受けて安土における浄土教の発展に寄与した貞安上人によって、信長とその息子・信忠の菩提を弔うために創建された寺院。当時は浄土宗知恩院に属していたが、現在は浄土教系の単立寺院となっている。

大雲院には本堂や祇園閣、書院、鐘楼、龍池会館などがあるが、普段は一般公開されておらず、お墓参りに来た人だけが、墓地にある信長・信忠の碑を訪れることができるというものだった。信長の碑は全国にあまたあるものの、この大雲院の碑は最大の大きさを誇る。

墓地に訪れるなら、石川五右衛門のお墓もお見逃しなく。なぜこの地に五右衛門のお墓があるかというと、住職によると、刑に処される前に大雲院を訪れた五右衛門が貞安上人に建立をお願いしたためとのこと。このお墓には、世紀の大盗賊・五右衛門にあやかりたいという実業家のほか、五右衛門役を演じる歌舞伎役者も訪れているという。

○伊東忠太の技に魅せられる

大雲院の書院は大倉財閥創始者・大倉喜八郎の別邸「真葛荘」であり、今回特別公開されている祇園閣も、元々は大倉喜八郎の別邸だった。建築はともに、2017年に生誕150周年を迎える建築家・伊東忠太が昭和初期に設計したもので、国登録有形文化財にも認定されている。

大倉喜八郎は、幼少期に見た華やかな祇園祭を、また、金閣、銀閣に次ぐ銅閣を、という想いで設計を伊東忠太に依頼。そして昭和3(1928)年、高さ36m、鉾先に翼を大きく広げた金色の鶴が降り立った、鉄筋コンクリート造三階建ての祇園閣が完成した。しかし、大倉喜八郎自身は、その完成を目の当たりにする前に亡くなったという。

伊東忠太は和洋中など世界各地の建築様式を組み合わせた折衷を得意としており、この祇園閣にもその趣を感じることができる。愛嬌のある顔をしている狛犬を見ていると、「建築は面白くなければいけない」と伊東忠太が言っているような気になってくる。

祇園閣の中は撮影禁止だが、今回は特別に許可を得た。昭和63(1988)年には、内部壁面に葛新民の筆によって敦煌の壁画の模写が完成。観無量寿経変想図や釈迦説法図、千手観音図などが鮮やかな色彩で描かれており、光や明かりの差し具合、また、見る角度によって味わいが変わるのも興味深い。閣上からは360度を見渡せる眺望が楽しめ、空気が澄んでいる時には大阪・あべのハルカスを望むこともできる。

龍池会館の宝物展示場には、貞安上人が信長より拝領した盆石など、両者の密接な関係をのぞかせる品のほか、明治から昭和にかけて活躍した日本画家・木島櫻谷作「水辺虎図屏風」など、貴重な品々が展示されている。この展示場の開放も「京の夏の旅」限定なので、あわせて訪れたい。

●information

大雲院 祇園閣

公開日時: 7月8日〜9月30日の10〜16時

住所: 京都府京都市東山区祇園町南側

アクセス: 京阪電車「祇園四条駅」から徒歩15分

料金: 大人600円、小学生300円

もうひとつは、3カ月間という長期にわたって公開されるのは今回が初という「京都大学 花山天文台」を訪れた。

●アポロ11号の成功の裏に花山天文台あり! アマチュア天文学の聖地

○現在も現役の巨大な屈折望遠鏡

花山天文台は東山連峰の山中に昭和4(1929)年に設立された、国内では2番目となる天文台であり、直径9mのドームがある本館には、東京・三鷹の国立天文台と岐阜・高山の飛騨天文台(ともに65cm)に次ぐ、国内3番目の大きさを誇る45cmの屈折望遠鏡がある。

実は飛騨天文台も京都大学付属の天文台であり、京都市の人口増加などを理由にして、花山天文台から昭和43(1968)年に建てられた飛騨天文台に観測の主力が移されたが、花山天文台は現在も研究・教育活動、また、アウトリーチの拠点として現役で活躍している。花山天文台9代目台長の柴田一成教授によると、アマチュア天文家によって発見された彗星の数は日本が世界一を誇るが、その拠点となったのが花山天文台であり、それゆえに花山天文台は"アマチュア天文学の聖地"としても愛されているという。

「京の夏の旅」では通常、花山天文台の本館と歴史館を見学でき、ガイドが説明してくれるが、今回は特別に柴田台長に案内していただいた。本館に設置された屈折望遠鏡は想像していたよりも大きく、また、大きな錘(おもり)を原動力とした重力時計が備えられているのが印象的だった。この重力時計や望遠鏡の方角移動などを手動調整するところにも、歴史を感じる。

○アポロ11号の成功の裏に花山天文台

この望遠鏡からは月のクレーターもくっきり見ることができる。3代目台長の宮本正太郎教授の時代、アポロの月着陸の際の適正地点を決定するために、NASAから月面の地形の詳細観測を依頼されたこともあるという。また、宮本台長は20年以上、この花山天文台で火星観測を続け、火星気象学の基礎を築いた。その元となった3,000枚にもおよぶスケッチは京都大学に寄贈されており、現在、そのスケッチは天文台の横で投影されている。

本館の側には、レトロでかわいらしい趣の平屋屋根の建築がある。これは本館、別館とともに昭和4年に建てられたもので、現在は歴史館として保存されている。かつては子午線館という名で、子午儀を用いて正確な時間を知るための観測がここで行われていた。

子午儀は正確に子午線上を動くよう、縦にしか動かないようになっている。星が子午線を通過する時刻を正確に測ることで、すぐ側に展示されている観測時計の精度を高めていたという。館内にアポロ11号のアームストロング船長の月面第一歩をデザインした灰皿があるところにも、この天文台とNASAのつながりの深さを感じさせられた。

●information

京都大学 花山天文台

公開日時: 7月8日〜9月30日の10〜16時

住所: 京都府京都市山科区北花山大峰町(東山ドライブウェイ内)

アクセス: 地下鉄東西線「蹴上駅」からタクシーで5分。「京の夏の旅」期間中は、地下鉄東西線「東山駅」から無料シャトルバスあり

料金: 大人800円、小学生400円

※価格は税込