高田重久会長兼社長(写真:ロイター/アフロ)

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 欠陥エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で迷走を続けてきたタカタは6月26日、東京地裁に民事再生法を申請した。負債総額は1兆7000億円で、製造業の倒産としては戦後最大となる。

 合わせてタカタは、法的措置後の資金繰りを支援してもらうため、取引金融機関に対して数百億円規模のつなぎ融資を要請した。これを受けて三井住友銀行は、上限250億円の融資枠を設定した。

 タカタは、エアバッグやシートベルトなどを新会社に移し、事業を継続しながら再生手続きを進める。中国の寧波均勝電子傘下の米自動車部品会社、キー・セイフティー・システムズが新会社のスポンサーとなり、1750億円を出資する。新会社が2018年前半にタカタから事業を買い取り、製品の供給を続ける。旧会社はリコール費用など債務の弁済にあたる。

 タカタの米国子会社TKホールディングスも、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法11条を申請して、日本側と歩調を合わせた。タカタを含む国内外のグループ15社が法的整理などを届け出た。

 高田重久会長兼社長は民事再生法申請後に記者会見し、「適切な時期に経営責任を取って辞任する」と述べた。18年3月までに辞任するとみられるが、流動的だ。エアバッグの不具合に関しては「何が悪かったのだろう」「当時のテストでは予見不能」と、開き直りとも取れる発言をした。

 タカタは7月27日付で上場廃止となる。

●自動車メーカーにのしかかる代償

 世界で1兆3000億円(日本メーカーのみ)と見込まれているリコール費用の大部分を肩代わりしている自動車メーカーは、早く法的整理に踏み切るようタカタに強く求めてきたが、遅きに失した感がある。

 タカタはやっと民事再生を決断したが、消費者目線を欠いていた。創業家三代目の高田氏は、経営トップの椅子を最後まで捨てきれなかった。

 再建を主導するスポンサー選びも、迷走を続けた。当初、エアバッグ世界最大手のオートリブ(スウェーデン)が有力候補だったが、長年ライバル関係にあったオートリブから支援を受けることを、創業家は潔しとしなかった。

 ここまで解決が遅れた一因は、日本の自動車メーカーのケイレツ(系列)にある。エアバッグは海外勢が先行していたが、1980年代にタカタが量産に着手。本田技研工業(ホンダ)がエアバッグ搭載車の「レジェンド」を発売できたのは、タカタの協力があったからだという。日系の自動車メーカーはタカタ製を次々と採用した。世界シェア2位のタカタが倒産したら、もっとも困るのは日本の完成車メーカーという図式が、いつの間にか出来上がってしまった。

「欠陥問題が浮上したとき、タカタはかなり強気だった。というのは、完成車メーカーと一蓮托生だったからだ。タカタは自動車メーカーが要求する仕様・価格でつくっていた。完成車メーカーは製造コストを抑えるために、無理難題を突きつけたケースもあったといわれている」(自動車担当アナリスト)

 製造物責任の観点からいえば、完成品(自動車)に生じた不具合は自動車メーカーが負うべきだが、自動車メーカーはタカタの処理に積極的に関与してこなかった。そのため、日本の自動車メーカーだけで、リコールの費用は1兆3000億円になる見通しだ。

「自動車メーカーは、タカタの法的整理に伴い、巨額の債権放棄に応じざるを得なくなる。リコール費用の大部分は、タカタに支払いを請求せず自社で負担することになる」(有力金融筋)

 このような指摘がされているように、日本メーカーが支払う代償は小さくないだろう。

●連鎖倒産は不可避か

 新会社はリコールの債務を引き継がない。では、賠償の責任は誰が負うのだろうか。仮に、新たな破裂事故が起こったら責任問題は宙に浮く。つまり、タカタの民事再生法の申請は問題解決の出発点にすぎないのだ。

 業界最大手のオートリブの世界シェアは、ここ数年で35%から50%にまで高まった。「民事再生から半年後、1年後に、タカタ(の新会社)のシェアは確実に落ちていく。その時に、取引先の部品メーカーの経営は厳しくなる」(大手自動車部品メーカーの社長)との不安が高まっている。タカタの連鎖倒産は避けられないとの見方が広まっている。

 タカタの株価は「民事再生法申請の準備に入った」との報道を受け、484円から6月22日の終値110円まで77%下落。その後はマネーゲームの様相をみせていたが、26日は終日、売買停止となった。東京証券取引所は同日、整理銘柄に指定した。年初来高値は1月5日の1233円だ。7月27日での上場廃止が決まり、100%減資が確実視されている。7月7日、株価は15円の年初来安値をつけ26円(9円高)で終わった。今後、株価は1ケタ(10円以下)になるだろう。

●タカタの普通社債はデフォルト

 タカタが過去に発行した普通社債は現在、300億円が残存しているが、全額債務不履行(デフォルト)となる。

 タカタは1933年に滋賀県彦根市で繊維メーカーとして創業し、戦時中は落下傘の紐をつくっていたことから、80年代にエアバッグの生産を始めた。創業家二代目の高田重一郎氏が、ホンダの創業者・本田宗一郎氏に直談判してホンダの車にエアバッグを標準装備させたというエピソードが残っている。父親は先見の明があったが、息子は米国議会での証言を忌避し、国内でも公の場に出ることなく逃げ回っていた。民事再生法を申請して記者会見したが、米国で事故が起こってから公式に会見したのは、この日が2度目だ。

 タカタは現在、欧米やアジアなど20カ国に拠点を持ち、従業員数は4万6000人。エアバッグの世界シェアは20%に上る。

 創業者は高田武三氏、二代目が高田重一郎氏。重一郎氏がタカタの基礎を築いた。そして三代目が現社長の重久氏だ。

 タカタからエアバッグの供給を受けていたトヨタ自動車は6月26日、タカタに請求すべきリコール費用が5700億円に上ることを明らかにした。大部分が回収不能になる可能性が高いが、すでに引当金を計上しており、業績への影響は軽微という。

 トヨタの一連のリコールは、世界で2700万台が対象となり、費用を立て替えて部品の交換などを進めている。

 ホンダは同日、16年3月期まで2年間の立て替え費用が5560億円に上ることを明らかにした。「大部分が回収困難になる見込み」とみているが、こちらもすでに引当金を計上しているため決算への影響は限定的とみられる。
(文=編集部)