ねぎしフードサービス執行役員人財共育部長の石野直樹氏

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「牛たん・とろろ・麦めし」の「ねぎし」を運営するねぎしフードサービスは、2007年から中国人をはじめとする外国人アルバイトの積極的な採用を始め、戦力化に成功している。

 当初こそ、利用客から厳しい声もあったが、経営理念や作業マニュアルなどを中国語に翻訳することでスムーズな研修に成功。ベトナム人のアルバイトも増えたため、今秋には同様にベトナム語バージョンも作成するという。

 少子高齢化によって日本人アルバイトが減少するなど、今、飲食業界は人手不足にあえいでいる。そんななか、ねぎしフードサービスは日本人および外国人の従業員満足度が高いという。その秘訣を、同社執行役員人財共育部長の石野直樹氏に聞いた。

●アルバイトの約2割が外国人、中国人店長も

――貴社にとって、外国人労働者はどのような位置づけでしょうか。

石野直樹氏(以下、石野) 弊社は、東京都内に34店舗、神奈川・横浜に4店舗の合計38店舗をかまえる飲食チェーン・ねぎしを展開しています。16年度の売上高は71億1600万円で、お客様数は累計520万人です。従業員は、正社員が135名、アルバイトが1500名、うち外国人は約19%にあたる264名です。

 日本人アルバイトは「Aパートナー」、外国人アルバイトは「Fパートナー」と呼んでいます。最近の傾向としては、中国人のFパートナーが減少して95名に、ベトナム人のFパートナーが増加して96名となっています。

 私たちは、ねぎしの大切な価値観である「親切と奉仕に努める」という経営理念を共有し、具現化し、行動に移していただける方は、国籍や性別を超えて同じ仲間であると認識しています。そして、その仲間たちが幸せを抱くことができるような職場環境を整えることが大切だと考えています。

 また、地域・社会・ビジネスパートナーから高い評価を受け、100年永続する企業を目指しています。しかし、経営理念をFパートナーが共有するためには言葉の壁があります。そこで、これまでに経営理念、作業マニュアル、社内報、動画マニュアルの中国語バージョンを作成してきました。今秋には、同様にベトナム語バージョンを作成します。

 各店長が参画する理念共有プロジェクトで、「どのようにすればFパートナーが働きやすいか」についての討議も行いました。

――人手不足の問題は、特に飲食業界で顕著です。仮にFパートナーがいないとなると、店舗運営はどうなるのでしょうか。

石野 Fパートナーがいなければ、店舗を正常に運営していけないのが実情です。特に人材獲得が困難な店舗は、銀座、秋葉原、上野です。ただ、『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)の放送でねぎしの認知度が上がったことで、Aパートナーが増加傾向にあります。一時期、Fパートナーの比率は33%でしたが、今は19%に推移しています。また、実際にねぎしでお客様として食べていただいた方が、今度はAパートナーとして戦力になるというケースが増えています。

――採用については、何か特色があるのでしょうか。

石野 採用していきなり店舗で働くのではなく、3時間の入店前研修制度を設けており、「経営理念を形にしていくためにどのような作業を行うか」ということを学んでいただきます。その後に店舗勤務が始まるため、従業員の不安感が払拭されます。

 Fパートナーは、基本的には日常会話に困らないという前提で採用しますが、この研修制度によって、FパートナーもAパートナーとともに経営理念を具現化するという共通認識が生まれています。中国人Fパートナーのなかには、成長して正社員として人財共育部に配属、今や日本語で研修の講師を務めているという人もいます。日本人が説明するより、やはり中国人が中国人に説明したほうが細かいニュアンスなどが伝わりやすいのです。

 今、外国人正社員は3名ですが、いずれも中国人。なかには、中国人店長も誕生しています。今後はベトナム人の正社員も雇用する予定で、マニュアルなどのベトナム語化に力になってくれることを期待しています。この研修制度は、日本人、外国人の双方から非常に好評を得ています。戦力化は仕組みが大切だと感じています。

●外国人店員を毛嫌いするお客様も

――店舗で食事をしましたが、Fパートナーの方も非常に親切でした。しかし、外国人の戦力化は最初からうまくいったのでしょうか。

石野 07年には、Aパートナーが不足して店舗運営に支障をきたしました。そのため、この時期には秋葉原や上野などで外国人アルバイトの採用に努めました。根岸榮治社長も「経営理念を共有できる人は、みんな仲間だ」という意識であり、「私たちは地球人だ」と述べています。

 しかし、最初は困難を伴いました。Fパートナーの採用を急拡大したため、お客様から「なんで日本語がわからない外国人が接客するのか」という厳しい声もいただきました。なかには、「外国人に接客されること自体が嫌だ」という悲しい声もあったのは事実です。

 当時は中国人のFパートナーが多かったのですが、アンケートを取ると「日本語の細かいニュアンスが伝わらない」「仕事で孤独感を感じる」などの意見がありました。そこで、Fパートナーを集めて懇親会を開いたり、日本語で書かれた経営理念やマニュアルを中国語に翻訳しました。そして、経営理念をよく理解している中国人従業員が、まだ採用から間もない中国人従業員に教えるリフレッシュ研修を行いました。

 その結果、Fパートナー全体に経営理念の理解が進み、お客様からも「大変親切だ」と評価されるまでになりました。言葉のハンデをなくすのは、企業努力です。お客様からの声として、「よく目が合い、こちらに気を配ってくれていると思いました」「異国でがんばっている姿に感動しました」「いろいろと大変なことがあると思いますが、成長を祈っています」という意見が寄せられているように、今や立派な戦力となっています。

――客としても、Fパートナーから日本人と同等あるいはそれ以上のサービスを受けると感動しますね。

石野 07年から始めたFパートナーの戦力化は、一朝一夕にはできませんでしたが、ここまで到達できたことは本当によかったと思います。

 外国人にも、優秀な方はたくさんいます。日本語もわからないなかで訪日して日本語学校に入学、大学や専門学校に進学しながら学費や生活費を稼ぐという方が多くいます。バイタリティにあふれているし、頭が下がる思いです。異国でがんばっている外国人が日本人のような親切さを提供することで、お客様も感動を得る機会が多くなっているのだと思います。

●「ねぎしに勤める前は、人として扱ってもらえなかった」

――外国人労働者について、「安いから使い勝手がいい」と考える経営者もいます。貴社のような、「経営理念を共有すれば仲間である」という意識は大切ですね。

石野 Fパートナーの声として、「ねぎしに勤める前は、人として扱ってもらえなかった」という意見がありました。仕事もろくに教えてもらえず、材料のように扱われてきたということです。そのため、弊部門名は「人材」ではなく「人財」であり、「教育」ではなく「共に育む」という意味で「共育」です。「人財共育部」なのです。

――最後に、ねぎしの今後のあり方とFパートナーの方向性について、お願いします。

石野 少子高齢化は避けられません。お客様も働く人も減る時代が、そう遠くない時期にやってきます。20年までに「経営理念とともに人が育ち、人が集まる組織」に転換する。それが、これからの課題です。

 私どもは、Fパートナーという言葉通りに、外国人アルバイトも日本人と同じ「働く仲間」であると思っています。ねぎしが100年永続するためには、日本人も外国人も関係なく、人と会社がともに成長し続ける必要がある。そういった方向性を軸に、今まで以上に邁進していくつもりです。

――ありがとうございました。
(構成=長井雄一朗/ライター)