天月 -あまつき-が語る、“歩き続ける”ための覚悟「いいと思うものをよりいい形で届けていくだけ」

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 天月 -あまつき-が、7月19日に3rdシングル『Mr.Fake/ツナゲル』をリリースした。今作は収録曲である「Mr.Fake」「ツナゲル」「未来の星命」が、ドラマ・映画『トモダチゲーム』主題歌、docomo東北復興・新生支援「笑顔の架け橋 Rainbow プロジェクト」テーマソング、舞台『剣豪将軍義輝〜星を継ぎし者たちへ〜」テーマソングといったトリプルタイアップに決定。それぞれの楽曲や歌において様々な一面を見せた意欲作に仕上がっている。今回のインタビューでは、天月 -あまつき-が各曲の制作に向き合う姿勢や、自身の歌について、また作詞作曲も手がけた「ユメノツヅキ」の話題から、近年のネットシーンに抱く思いまで幅広く話を訊いた。(編集部)

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■学生時代を振り返って、歌詞に乗せた

ーー最新シングル『Mr.Fake/ツナゲル』は、両A面&トリプルタイアップという豪華な1枚になりました。ドラマと映画で展開されている『トモダチゲーム』の主題歌「Mr.Fake」は、非情なゲームを主題にした作品のダークな世界観に寄り添いながら、強いメッセージも感じる楽曲です。作詞には天月さんの名前もクレジットされていますが、制作はどんなふうに進んだのでしょうか?

天月 -あまつき-(以下、天月):主題歌のお話をいただいてからの制作でした。原作は連載(講談社『別冊少年マガジン』)も読んでいるんですけど、友情にお金や嘘が絡んでくる心理戦が本当に面白くて。オープニングの短い時間のなかで、「これからこういう作品が始まるぞ」という世界観を表現しなければ、と考えました。それで、いつもお世話になっている渡辺翔さん(作詞/作曲)と中山真斗さん(編曲)の最強タッグにお願いしつつ、僕自身も学生時代を振り返って、思うところを歌詞に乗せていったんです。

ーー学生時代のどんなことを思い返しましたか?

天月:僕はいじめられっ子で、そのなかでもすごく衝撃的なことがあったんです。中学生の当時、信じられる人がなかなかいないなかで、仲良くしていた子が、ある日、僕をいじめていたメンバーと一緒に帰っているのを見て。僕に気づいて、彼も一緒にいじめてきたんです。そのときに「ああ、人間ってこんなにコロッと変わるもんなんだな」と思って。“裏切り”というものがひとつのテーマになっている作品なので、そのことを思い出しましたね。

ーーこの曲の主人公は人を信じられなくなり、皮肉な言葉を連ねるようになりますが、終盤には<僕の背中の羽 意味はあるはずなのに>というフレーズがあり、何かのきっかけがあれば変われるんじゃないか、という予感もあります。

天月:そうですね。ただ、気付かずにそのまま終わってしまう人もいると思いますし、いい方にも悪い方にも捉えられるフレーズになっていると思います。

ーー天月さん自身は、人を信じる気持ちをどう取り戻したのでしょう?

天月:僕の場合は、全然気付くことができなかったんです。ただ、ネットを介して新しい自分になり、まったく別の世界で“ニューゲーム”を始めてみたところ、いろいろな音楽や人に出会い、沢山の人に自分の歌を楽しんでもらうこともできて。そのなかで変われたんだと思います。

ーー新しい世界を見つけることで、過去の問題にも折り合いをつけて、曲として表現することまでできるようになったと。音としては鋭いロックサウンドにデジタルなニュアンスが入ることで、カオス感が出ていますね。

天月:渡辺さんが曲を書く段階で、アレンジまでイメージしてくれて。そこから中山さんがブラッシュアップして……というキャッチボールが、めちゃくちゃスゴイんです。そのなかで、この曲はリズムが見えたほうがカッコいいと思ったので、僕なりに少しずつ、調整のお願いをして。最終的に、とてもいいものに仕上がったと思います!

ーー天月さんは『トモダチゲーム』で、恐ろしいゲームのガイドをするマスコットキャラクター・マナブくんの声も担当しています。明るくて温かみのある声質が、かえって不気味さを強調していると思いました。

天月:未熟ながらも、そういうギャップは意識しましたね。日常生活にある当たり前のものが逆方向に振れて、違和感が前に出ると、ものすごく怖いものになるじゃないですか。マナブくんは一見、健全なマスコットキャラクターのようだけれど、すごく口が悪くて、夢を壊すような存在なんです。それが面白くて、いい経験になりました(笑)。

ーー歌入れについても聞かせてください。今作は3曲通じて、天月さんのまったく違う面が出ていて、「Mr.Fake」は普段見せない、黒い部分も出していますよね。

天月:そうですね。ただ、歌を入れるときは、そんなに考え込まないタイプなんです。レコーディングのときには考え終わっていて、あとはその場で勝手に声が乗っていくというか。それにしても、本当にバラバラな3曲なので、CDを手に取ってくれた人はびっくりしますよね。もっと統一感が合ったほうがいいかな、とも思うんですけど(笑)。

ーーただ、“人を信じることができるか”ということを問う「Mr.Fake」と、“人を信じて未来につなげていくこと”を歌った「ツナゲル」は、一見まったく違う曲ですが、合わせて聴くと味わい深いと思いました。「ツナゲル」は昨年の「LIFE!!」に続き、docomo東北復興・新生支援「笑顔の架け橋 Rainbowプロジェクト」のテーマソングですね。

天月:東北の復興支援について真剣に考えるなかで、感じたことを表現しようと思いました。作詞・作曲はハヤシケイさんにお願いしていて、当初は僕も歌詞を書かせていただこうかなと考えていたんですけど、ケイさんは実際に東北に足を運んで復興支援をしてきた方で、最初にデモをいただいた段階で、本当に完璧だと思ったんです。僕が言いたいこともすべて詰まっていて、あとは歌でしっかり伝えるだけだ、という感覚でした。イントロから東北の雄大な風景が見えてくるし、メロディは本当に温かくて。歌っていても、やさしく温かい気持ちになる楽曲です。

ーー同じくハヤシケイさんの楽曲で、歌ってみた動画として投稿されている「pigments」を聴いても、天月さんの歌声と相性がいいと思いました。決して難しいことはせず、王道的でありながら、聴かせるフックがしっかりありますね。

天月:僕もケイさんの楽曲が大好きなんです。歌詞については、曲によって主人公がいろいろと思い悩むシーンもありながら、ゴールに向かう気持ちは一貫していて。僕も自分に自信があるタイプではなくて、常に悩みながら、「それでも歩くのはやめないぞ」と考えてきたので、すごく共感するんです。

ーー言葉の一つひとつを本当に丁寧に歌っている、というのが印象的でした。

天月:実はこの前に一度レコーディングをしたんですけど、ライブで歌ってきたなかで、もう一回歌い直したい、と思って録り直したんです。お客さんの前で歌うことに意味がある曲で、そこでこの曲のすごさ、温かさを実感して。

ーー何が一番変わりましたか?

天月:最初はただ曲に感動して歌っていたんですけど、ライブで歌って、リスナー目線から演者目線になったというか、きちんと自分の言葉として伝えられるようになったんです。必ずしも東北の方々だけでなく、誰にも辛いことはあるので、自分の日常に置き換えて聴いてもらえたらと思います。力まず、ふとしたときに聴いて、小さな勇気になってくれればうれしいです。

■続けなければ何も変わらない

ーー3曲目に収録された「未来の星命」は和のテイストをしっかりポップミュージックに昇華した、聴き応えのある曲です。こちらは舞台『剣豪将軍義輝〜星を継ぎし者たちへ〜』のテーマ曲ですね。

天月:1stシングルに入っていた「星月夜」が、テーマ曲になった舞台『幻の城〜戦国の美しき狂気〜』の演者さんやプロデューサーさんに気に入っていただけて、昨年、「明星の刃」という曲を、今回の舞台の前編となる『剣豪将軍義輝〜戦国に輝く清爽の星〜』に提供しました。今回の舞台も同じ曲で通そうか、というところだったのですが、後編に向けて新たにエンディング曲を作ることになりました。「明星の刃」は足利義輝の少年時代、出会いと別れを経験して強くなっていく姿を描きましたが、今回は将軍になって、次に何をするのか、という部分を歌詞にしています。実際に、義輝に憧れた織田信長や徳川家康が時代を作っていった、という燃える展開ですし、そういう壮大なロマンを感じながら、歌詞を書いたり、歌ったりしています。

ーーリリースを重ねるなかで、天月さん自身が曲を作ることも増えていますが、この曲のように壮大な物語を描くようなところと、自分の経験をふくらませる部分と、バランスとしてはどちらが大きいですか?

天月:自分の経験は10%くらいで、90%は想像で補っている、という感じです。マンガもそうだし、好きなアーティストさんの歌詞にも影響を受けているし、例えば『義輝』だったら、時代に合わせて短歌を調べたりもしました。「明星の刃」には、義輝の辞世の句も入れたりして。けっこう調べごともするんですよね。

ーー今作の初回限定盤タイプBには、天月さんが作詞作曲を手掛けた「ユメノツヅキ」が収録されています。一見ハッピーな曲ですが、背中を押すような強いメッセージも感じました。

天月:そうですね。自分自身に言い聞かせる曲でもあり、僕のまわりの仲間たちに向けた曲でもあって。特に歌い手の仲間は、僕からすると本当にスゴい人たちなのに、悩みながら活動している人も多くて、時には自分を見失ってブレていってしまうこともあるんです。そういうときに、こんな僕にでも言えることは、「どんなことがあっても、君を続けるのは君だけなんだ!」ということじゃないかって。自分がすることで世界は動かない、というちっぽけさも感じながら、そうであっても、続けなければ何も変わらないと思うんです。

ーー軽快なサウンドに乗っているので、気持ちよくメッセージが伝わってきます。

天月:曲自体はライブでみんなで楽しめるものを作りたかったんです。そこに、たまたま歌詞がこういうものになったんですよね(笑)。

ーーライブの話も出ました。8月いっぱいまで『天月-あまつき-のやりたい放題TOUR 2017』が開催されますが、どんなステージになりそうですか?

天月:実は、今年はワンマンライブをやる気がなかったんです。2ndアルバムでやりたいことができたので、いったん休憩して、自分のスキルとか経験値を上げようと思っていたんですけど、この半年間でも、自分なりに身につけられたことがあったので、それを表現しようと。ライブがやりたいという気持ちに負けた、という感じですね(笑)。ありがたいことに、日々、僕の音楽を聴いてくれる人が増えていて、今回のツアーはお客さんとの距離が近い会場が多いので、アコースティックだったり、友人のアーティストを呼んだりして、アットホームなライブにしたいと思います。

ーー「歌ってみた」というシーンから、着実にステップを踏んでいるという印象がありますが、今年後半以降、どんな目標に向かって進んでいくのでしょうか。

天月:先日、友人たちと一緒にさいたまスーパーアリーナ公演をやって、本当に大きなステージで、素敵な景色を見ることができました。これを自分一人でできるようになったらうれしいなと思っているので、目指せ武道館、そしてスーパーアリーナ、というのが目標です!

ーーそうして“歩き続ける”なかで、ボカロシーンもフォローし続けていますか?

天月:もちろん、いまも新しい曲、ランキングはずっとチェックしています! メジャーシーンもそうで、オリコンランキングもいつも見ているんです。バンドが盛り上がっていますよね。

ーーボカロシーンもそうですし、メジャーシーンも変わり続けています。デビューから3年、どんなことを感じているでしょうか。

天月:当初はインターネット出身というところで、低く見られたり、甘く見られたりする部分もありました。でも、いまはメジャーにもインターネットから出てくる人が増えていて、「過去とは単純にツールが違うだけなんだ」と理解してくれる人も増えていると思います。ネットから生まれた音楽も素晴らしいものだと思ってほしいし、僕はこれまで通り、いいと思うものをよりいい形で届けていくだけかな、と考えています。

ーー幅広い楽曲が揃った今回のシングルは、より多くのリスナーに届くと思いますし、天月さんの多面的な魅力を伝える、あらためて名刺代わりになる1枚とも思います。どんな気持ちで受け取ってほしいですか?

天月:ずっと聴いてくれている人たちには、成長して少し大人になっている部分も見てもらいたいですし、自分が作った曲を入れたり、昔の曲をアコースティックカバーしたりと、遊び心を忘れずにやっているので、「天月くん、またこういう感じで遊んでいるな」と楽しんでもらえたら。初めて聴く方は、曲のテイストが違いすぎてびっくりすると思いますが、そういう驚きとともに、曲のメッセージが伝わってくれたらうれしいですね。(橋川良寛)