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●打消し表示の実態とは?

消費者庁が「打消し表示に関する実態調査報告書」を公開した。同調査は2016年10月31日から2017年3月31日までの打消し表示が含まれている表示物を収集し、整理・分析。その結果を参考に、打消し表示が含まれる映像等を制作し、WEBアンケート調査(回答数1,000件)及びグループインタビュー調査(12名)を実施したもの。本稿でその内容について詳しく解説していきたい。

○打消し表示の実態

打消し表示は、商品やサービス内容を訴求する強調表示の例外・制約を示すためのもの。同調査では、打消し表示が含まれている物の収集結果を参考に、打消し表示の表示方法の態様について媒体別に整理した。結果は次の通りだ。

まず「新聞広告」では8pt未満の小さな文字で表示されているものが56.9%、配置場所としては、強調表示から「5cm以内」が最も多く76.5%だった。

「動画広告」における打消し表示の表示時間は、2秒以下が42.4%という結果に。また、「打消し表示が後・別画面」に表示されるものが20.3%だった。

「Web広告」については、PC上では強調表示から打消し表示までスクロールする必要があるものが21.2%、スマートフォン上では13.6%となった。

では、一般消費者は普段どれくらい打消し表示に意識を向けているのだろうか。

●問題のある打消し表示の表示例とは?

媒体別に質問したところ、「見ない(読まない)」の回答率が最も高かった媒体は、「強調表示からスクロールが必要な場所に表示されているスマートフォンのWeb広告」で75.1%だった。次いで「同一画面内に表示されているスマートフォンのWeb広告」(70.0%)、「動画広告」(67.4%)となった。

打消し表示を見ない(読まない)理由を聞くと、新聞広告では「文字を読むのが面倒」「文字が小さくて読みにくいから」が多く挙がり、動画広告では「表示されている時間が短くて読み切れない」が最多だった。また、Web広告では、表示場所や媒体の違いに関わらず、全体的に「文字を読むのが面倒」が最も多く、次いで「文字が小さくて読みにくい」となった。

○表示方法に問題のある表示例

続いて、制作した各表示例の打消し表示を、回答者が認識できたか否か、また、認識できなかった要因について調査を実施した。

まず、強調表示が最大48ptで表示されるのに対し、打消し表示は10pt程度という「Web広告」の場合では、84.3%〜94.2%の人が打消し表示を見落としていることが明らかとなった。また、グループインタビュー調査では、見落とした要因について「打消し表示の文字が小さく気付かなかった」「強調表示の文字だけが目に入った」といった声が多く挙がった。

続いて、75秒間の「動画広告」の中で、強調表示と打消し表示が5秒間表示(5秒間×3回)される場合では、97.6%の人が6つの打消し表示のうち、少なくとも1つの打消し表示を見落とす結果となった。その要因として「1つの広告内に大量の情報が存在し、1回見るだけでは全ての内容を把握できない」との意見が挙がった。

また、強調表示から下に1スクロールした箇所に打消し表示が表示される場合では、67.7%が打消し表示を見逃し、読みにくさを感じた点として、「文字が小さい」(57.6%)、「画面を下に移動させる必要があり、文字の存在に気づきにくい」(40.5%)などの意見が目立った。

○内容に問題のある表示例

次に、表示内容に問題のある打消し表示について調査を実施した。

●体験談を用いた表示例にも注意

まず、「これがあると、いつでもどこでもインターネットができるんですよね」という音声による強調表示に対し、「※エリアによってはご利用いただけない場合や速度が遅くなる場合があります」の文字による打消し表示を調査。この打消し表示では、23.6%の人が、打消し表示を見た上でも打消し表示の内容を理解できず、例外事項なしに"どこでもインターネットが利用できる"と誤認した。

また、「PC特別セット 5,480円」という文字による強調表示に対し、「※別途、端末代金が必要となります」や「※契約事務手数料は初回請求時にかかります」という文字による打消し表示も調査。こちらは、16.8%の人が「セット料金のほかに初期の追加料金は発生しない」と誤認する結果に。誤認した要因として、「毎月発生する月額の費用とは別に初期費用がある点が分かりにくい」(50.6%)といった声が多く挙がったほか、「端末の料金が別途必要の意味が不明」と回答する人もいた。

○体験談を用いた表示例

このほか、体験談を用いる場合の打消し表示についても調査している。まず、「毎日たった2錠飲むだけ。忙しくても続けられるから助かります」「カロリーを気にせず食べられる! ガマンしなくていいって幸せ!」といった強調表示に対し、「※個人の感想です。効果には個人差があります」という打消し表示。

こちらについて調べた結果、「体験談と同じような効果が得られる人がいると思う」(53.0%)という回答が最も多く、次いで「大体の人が効果を得られると思う」(42.2%)、「自分に効果があると思う」(39.3%)となった。

今回の結果を受けて消費者庁は、事業者が留意すべき点を次のように述べている。

「事業者は、一般消費者が打消し表示の内容を正確に理解できるように分かりやすく表示するとともに、各媒体の特徴を踏まえた上で一般消費者にとって見やすく表示することにより、強調表示と打消し表示とを合わせて、表示物全体として、表示から受ける一般消費者の認識と実際のもの等との間に差が生じないように留意する必要がある」

また消費者に対しても「広告で強調されている内容を見たときは、注意事項として例外条件、制約条件等が広告のどこかに記載されていないか意識を向けること」「特に購入を検討している場合は、表示物の一部から判断するのではなく、表示物全体の内容を把握した上で検討すること」について注意するよう呼びかけている。