城田 優が自身を磨き続ける原動力。「負けたくない思いが強みにつながる」

「後輩に負ける気なんてないですよ。いつでも“かかってこい”って思ってます」――城田 優はカッコいい。それは、今年6月にパリコレでランウェイを闊歩した姿だけを指すのではない。すべてを本音で語る“嘘がつけない男”は、今をときめく後輩俳優たちの姿にキッパリ言い放つ。先輩として、ミュージカル俳優として、常に絶対的な自信を持ち、「負けたくない」相手と対峙することで自身を成長へと導く。その姿勢こそが彼のカッコよさなのだ。

撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.

名だたるミュージカルスターとの共演がもたらしたこと

2013年に上演された、各国のミュージカルスターが集まったプレミアムショー『4Stars』から4年、今年12月に『4Stars 2017』が上演されます。前回の公演は城田さんにとってどんな経験になりましたか?
もう、本当に成長しかなかったです。僕以外のキャスト(レア・サロンガ、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス)、スタッフすべてが、ブロードウェイで活躍している一流の方々で。超ド級の素晴らしい才能を兼ね備えた方たちと同じ舞台に立つということで、修行になったというか、伸びしろしかなかったなと思います。
ウエスト・エンド版、ブロードウェイ版の『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』などで主演を務めた、名だたる方々が集結しましたよね。
僕は、10代の頃から1年に1本ペースでミュージカルに出させてもらって、『エリザベート』や『ロミオ&ジュリエット』という有名なタイトルにも出させていただきましたが、前作のときは、ちょうどミュージカルの難しさやプレッシャーと戦っていた時期で…。
葛藤と戦っていた時期に、ミュージカルスターたちと共演して…。
精神的にも、スキル的にもかなり成長できたと思います。
精神的な部分もですか?
僕以外の3人ってとにかくポジティブなんです。僕は、ショーの本番前とか、いつも「ヤバい、間違えたらどうしよう…」ってネガティブなことを考えがちなんですけど、3人はとにかく楽しんでやろうみたいなスタンスで。僕としても、1000人、2000人のお客様を前に、「歌詞が飛んだらどうしよう」みたいなマイナスなことを考えて緊張しているより、彼らのようなスタンスのほうがいいことはわかっているんです。
お客様を楽しませるからには、ですね。
3人は、自分たちが楽しんでこそエンターテインメントが成立するっていう考えで公演に臨んでいるので、本番はそのポジティブさにすごく引っ張られたなと思います。
ポジティブな空気感のなかで、自信を持って本番に臨めた?
はい。事実、僕は公演が近づくにつれ、3人のレベルの高さや自分との差を感じて切羽詰まっていて、ゲネプロ(公開稽古)でも歌詞を飛ばしてしまったんです。でも、3人が「優! 何でそんな緊張してるの!」「大丈夫よ!」って言ってくれて、彼らのポジティブな感覚に僕もついていこうと全力で臨んだ結果、本番では一度も歌詞を間違えることはなかったです。
気持ちの持ち方って大事なんですね。
もちろん、マイナスから入ってしまう人間なので、彼らの空気感に乗るのは簡単ではなかったですけど…。すごい重圧の…重い霧がかかったところに、ちゃんとした光を持った3人が前にいてくれたので、そこについていけば間違いないなという感覚でした。

リスペクトがあるからこそ「またやりたい」と思った

そんな経験となった前回公演を経て、今回の2017年版のオファーが…。
オファーというか、僕が「やりたい!」って言ったのもだいぶ大きいんですけどね(笑)。
城田さん自ら「やりたい!」っておっしゃったんですか?
前回の存在がそれだけ大きかったんです。やっぱり、一流の方々と同じ舞台に立ってこそ一番成長できますし、そうでないとエンターテインメントは面白くないですよ。見る側もそうですけど、演じる側も、自分が「すげぇな!」って思う人たちとやらないと意味がない。
レベルを上げるためにも、自分がリスペクトする人と戦わないと意味がない?
自分とそんなにレベルが変わらない人たちとやっても、正直そんなに伸びないんです。エンターテイナーとして、「すげぇ、負けたくない」って思えない限り、成長ってなかなかできないんです。
その点、前回は涙を流したくらいの相手が、城田さんの目の前にいたわけですもんね…。
そうなんです。そんな3人がいたら、自ずと「追いつきたい、追い越したい!」ってすごく触発されるんです。彼らの公演を見るだけでも価値があるというのに、一緒に立って歌えるというのは本当に僕にとって財産でしかないです。
ラミン・カリムルーさん、シエラ・ボーゲスさんは前回から引き続き参加となります。
4年前も超ド級だったけれど、ふたりともこの4年でさらに実績を上げて。ラミンはトニー賞ミュージカル主演男優賞にもノミネートされたし、先日ブロードウェイで拝見した『アナスタシア』では、新しい役柄にチャレンジしていたし。シエラも、来日してコンサートを開催していたりで、4年前とは圧倒的に違うエネルギッシュさを持っていると思います。
城田さんもこの4年で、ミュージカル『ファントム』への出演や、『エリザベート』に2年連続で出演されて、成長されたのでは?
うーん。まだまだ全然足りないですけど、4年前に比べたら声に多少の安定感は出てきたと思うし、メンタル面も強くなったのかなと感じます。他にもはじめて演出を手がけた『アップル・ツリー』や初の本格的舞台『令嬢ジュリー』に加え、ディズニーコンサートや、『地球ゴージャス』(地球ゴージャスプロデュース公演 Vol.14「The Love Bugs」)などを経験して、レベルアップはしているはずなので。…ってレベルアップしてないとダメですよね!(笑)
(笑)。
だからこそ、お客様、キャスト、スタッフみんなに「城田 優、うまくなったな」って思ってもらえるようなパフォーマンスをしないといけないです。そのなかで、レベルアップした今の自分が、どの位置にいるのかを確かめられるのが『4Stars 2017』なのかなと思います。果たして、自分の武器、盾がどれだけ強くなっているのか。

ミュージカルをどれだけ見たかなんて関係ない

今回は、ミュージカル『天使にラブソングを』や『ピピン』などで有名なパティーナ・ミラーさんが初来日して参加されます。
そうなんですよ! パティーナ・ミラーというボスが登場します。
ボスですか!
実際、ブロードウェイで『ピピン』を見て、「この人、一番スゴい」「負けられない」って思ったのがパティーナでした。パティーナと同じ舞台に立って、自分をまた成長させられるのかと思うと楽しみで仕方ないです。正直、日本のミュージカル界には、僕が「負けたくない!」って思う人は少なくて…。
そうなんですか?
もちろん、リスペクトはしていてスゴいなっていう方は大勢いると思うんですけど、ラミンやシエラといった本当にレベルが高い人たちと一緒に公演をすると、それが“基準”になっちゃうんです。たとえば、RPGで一度レベルが高い敵と戦ったあと、自分と同じレベルの敵と戦っても、弱く感じちゃう感覚と同じ。
一度強い敵と戦ったあとだと、「なんてことないな」って思っちゃう感覚ですね。
そうそう。強い敵を倒したあとに、スライムと出会ったら楽勝で倒せちゃう、みたいな。(笑)そういう意味で、『4Stars』ってそもそもの平均点が95点以上は確約されているので、今回も超高得点が出ることは間違いないです。
そもそもの平均点…演劇としての“質”のレベルが高いって、実際に出演する城田さんが言うのですから、間違いないんでしょうね。
日本のミュージカルだと70点台や、80点台のものもありますけど、『4Stars』は間違いなく95点以上。絶対に裏切らないです。そのなかで平均点を下げているのが僕っていう状態なので、それを上げるくらいの気持ちで頑張らないといけないですよね。
今回、東京公演の時期がクリスマスに重なりますね。
はい、僕の誕生日も挟みます!(笑)
(笑)。まだ公演は先ですが、演出もサラナ・ラパインさんに代わって、ロマンティックな演出になるのかな、と期待してしまいます。
「ツリーを飾るかもね!」なんて冗談で話をしてましたけど(笑)、実際どうなるかまだわかりません。でも、デートで来る方もいらっしゃると思います。デートじゃなくても、見に来てくださった方にできるだけの魔法をかけて、特別な日を過ごしてほしいです。ただ、クリスマスでも、正月でも、夏休みでも関係なく、お客様を感動させる自信だけはすでにあります。
改めて、楽しみにされている方へメッセージをお願いします。
本当に、世界のトップレベルの方たちが作るエンターテインメントショー。それを日本でしかやらないなんて、こんなに豪華なことはめったにないです。音楽が好きで、ミュージカルが好きな方だったら絶対に見に来たほうがいいです。100パーセント見たほうがいい! …なんかセールスみたいですけど(笑)。
(笑)。
イチ出演者である僕としては、見に来る、見に来ないはどっちでもいいんですよ。でも、こんなに素晴らしいものを日本でやるんだから、見たほうがいい、って普通に言いたいんです。
たとえば、はじめてミュージカルに触れる方とか、ミュージカルは好きだけど、本当に好きな人と比べたら知識は浅いから萎縮しちゃう…という方でも?
そんなの関係ないです! 見てる本数とか、全然関係ない!
キッパリ言い切りましたね!
たくさん見てきたなかで『4Stars』を見ることも素晴らしいけど、はじめて見る作品としても絶対オススメできます。レベルの高い作品を見ることで、日本のミュージカルのレベルももっと上がると思います。本当に、僕はただの出演者ですけど、見たほうがいいと声を大にして言います。普段は僕、主演作品でも言わないんですよ。でも、この出演者の方々だからこそ、言います。絶対に損はしない。……ここ太字で強調しておいてください(笑)。
次のページ