BiSH、幕張メッセイベントホールワンマンへの軌跡 ターニングポイントからの快進撃を辿る

写真拡大

 BiSHが7月22日、幕張メッセイベントホールで自身最大のワンマン公演『BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS”』を開催する。

 グループ始動から約2年半。昨年2016年5月にメジャーデビューを果たしてから約1年。「楽器を持たないパンクバンド」というキャッチコピーを掲げるBiSHの快進撃には目を見張るものがある。特に、初期からそのライブを観てきた筆者が実感しているのは、BiSHが人を惹き付ける魅力が「話題性」から徐々に「楽曲」にシフトしていったことだ。

 プロデューサー渡辺淳之介が「BiSをもう一度始める」とグループを始動してきた結成当時に比べて、破天荒な活動や企画性ではなく、ライブのステージからじかに伝わってくる曲のエモーションと熱が大きな波となってオーディエンスを巻き込んでいる。今年に入って、サウンドプロデュースを手掛ける松隈ケンタが率いる「鬼バンド」が共にステージに立つようになって、そのムードはさらに強まっている。

 というわけで、今回の記事では、アイナ・ジ・エンド、松隈ケンタ、渡辺淳之介の3名にメールインタビューを行い、その返答も含めてグループのターニングポイントを振り返る。BiSHのこれまで、新作『GiANT KiLLERS』、そして幕張メッセイベントホールに至る足跡をいくつかのトピックから辿っていく。

・初のアルバム『Brand-new idol SHiT』リリース(2015年5月27日)

 2015年1月、渡辺淳之介がグループの始動を宣言。そこから4カ月でリリースされた初のアルバムが『Brand-new idol SHiT』だ。「BiSH-星が瞬く夜に」や「スパーク」や「MONSTERS」や「サラバかな」など今もライブの定番となっているグループの代表曲はすでにこのアルバムに収められている。これらの曲は翌2016年1月にリリースされた2ndアルバム『FAKE METAL JACKET』にも新メンバーを加えた再録バージョンで収録されている。また、最新ミニアルバム『GiANT KiLLERS』の「iNTRODUCiNG BiSH盤」にもアユニ・Dのボーカルが入った再録バージョンが収録されている。

 つまり、これらの曲は、単にデビュー盤の収録曲というだけでなく、この先もずっとグループを牽引していく力を持った大事なナンバーだということなのだろう。渡辺淳之介はこうコメントしている。

「『スパーク』はBiSHの始まりの曲です。僕の作詞の中でも自分としては最高傑作の呼び声が高いです(笑)。BiSHを始める際、松隈ケンタと話していた時に、生まれた曲です。冒頭のTHE YELLOW MONKEYのような歌詞からサビの〈痛みを痛みでこらえよう〉が気に入ってます」

・セントチヒロ・チッチ、ダイエット失敗。リーダー降格(2015年11月)

 先ほど「当初は話題性が前に立っていた」と語ったが、メジャーデビューを直前にしたこの時期が、まさにその頃だった。渡辺淳之介が以前に手がけていたBiSを彷彿させる無謀なチャレンジが話題を呼んでいた頃。ツアー中にはメンバーのダイエット企画で「失敗したらキャプテン降格」というペナルティをセントチヒロ・チッチが課せられたという一幕もあった。渡辺淳之介はこう振り返る。

「『BiSH Eden of Sorrow Tour』沖縄公演。セントチヒロ・チッチが行っていた目標体重に達していなければ死亡という『DiET or DiE』を失敗し、僕がかなり語気も強めてライブ中もライブ終了後も怒った時がターニングポイントだったかなと思います。メジャーデビュー直前ということもあり、メンバー間のふわふわした態度が露呈してしまったタイミングだと思います。僕が怒ること自体が初めてと言っていいほどだったので、びっくりしたとともに、僕がBiSHをどうでもよくなった瞬間でもありました。そのおかげでBiSの再結成の構想が生まれたので今ではチッチに感謝しております」

 同じくアイナ・ジ・エンドはこう語る。

「あの頃はエンターテイメントもなにも考えず、ただ1人で頑張ってるチッチを、甘やかしてしまい、結果的に最悪な事態になってしまいました。そこから、チッチも心を閉ざしてしまったのか、よくない空気が流れ続けていて、ずっとダイエット企画は闇に葬られたようなイメージでした。それはBiSHの他のメンバーがちゃんとチッチに叱って、ポジティブに頑張るべきでした。あれから、メンバーはビジネスパートナーとして、でも最強の味方として、しっかり向き合おうと決めました。あの出来事を少しずついじれるようになってきて、今ではチッチはまたダイエット企画のときぐらい痩せてて、思い出話としてそろそろ話せるんじゃないか、と思います」

 2016年1月19日には、そのツアー『Eden of Sorrow Tour』のファイナル公演「IDOL is SHiT」が恵比寿リキッドルームで開催される。その場でBiSHは5月4日にavex traxからメジャーデビューすることを発表した。ツアーはグループが“脱皮”する一つの大きなきっかけになったのかもしれない。

・ハグ・ミィの脱退とアユニ・Dの加入(2016年6月)

 現在、アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6名で活動しているBiSH。しかし結成当初は脱退や加入が相次ぎ、メンバー編成は安定しなかった。

 オリジナルメンバーのハグ・ミィは、2016年6月2日、赤坂BLITZで開催された『BiSH presents 〜地底からコンニチワ〜』をもって脱退。これに伴い、新メンバー募集のオーディションが開催され、同年8月にアユニ・Dが加入した。アイナ・ジ・エンドはこの時がグループのターニングポイントだったと振り返り、ハグ・ミィ脱退のときに一番心が響いた曲が「サラバかな」だと挙げる。

「ハグ・ミィが脱退してから5人になって、ダンスも全部フォーメーション変えたりして、1人で振り付けなど頑張りすぎて初めてパンクして、沖縄のライブ直前に急に号泣してしまいました。その日の夜みんなに話したりして、みんなもわたしに気を使ってることを知れたし、それからは、少しだけ上手くほかのメンバーに甘えられるようになりました。ユニットなんだからちゃんと助け合おうって思えました。アユニが加入してからも色々大変だったけれど、アユニががんばってくれたので、本当にBiSHの色が変わったし、空気もよくなりました」

・『BiSH Less than SEX TOUR FINAL’帝王切開’』@日比谷野外音楽堂(2016年10月8日)

 そして現在の6人編成になったBiSHは10月5日にメジャー1stアルバム『KiLLER BiSH』をリリース。10月8日、日比谷野外大音楽堂で開催された『BiSH Less than SEX TOUR FINAL’帝王切開’』は、アンコールの「ALL YOU NEED IS LOVE」でアユニ・Dが涙をこらえながら歌うなど、感動的な場面が見られた。アイナ・ジ・エンドはこう語る。

「この日は、アユニが入ってからの6人でツアー走り続けた最後のライブでした。野音がファイナルの場所だと聞いたときは、こんなところ埋めれるわけないって、本当に思ってたし同時に焦っていたけど、いろんなスタッフさんが裏で沢山動いてくれたり、BiSHも5人体制から6人体制になったりと、それぞれ個々で成長をして、野音を満員にできて、ステージにしっかり立てたとき、すごく嬉しかったです。アンコールのオーケストラでサイリウムが一斉に光り、ファンの人も同じ気持ちなのかなって思った瞬間、こんな広い世界と同じ気持ちになれるのは幸せすぎる。あったかい、と思って、BiSHに入れてよかったと思いました」

 渡辺淳之介はこう振り返る。

「日比谷野外音楽堂でのワンマンライブが非常に個人的には大きかったライブでした。ずっと日比谷野外音楽堂でのライブをしたいと思っていたので、そこでライブができることは僕としては本当に最高の瞬間でした。野音のライブ前にはYouTubeにあがってる甲本ヒロトさんのライブの名MCをメンバーのみんなに送ったりして(誰からも返信はなかったのですが……笑)、勝手に僕が一番盛り上がってました。またアユニ・Dが加入から2カ月足らずで野音だったので、ライブ終了後に憚らず号泣していたのは、なんかわからないですが、印象的でした。お疲れ。って感じでした」

 また、この日の『BiSH Less than SEX TOUR FINAL’帝王切開’』で総勢12名のストリングス隊と共に披露されたのが「オーケストラ」だ。この曲は今のBiSHのドラマティックなイメージに直結している。松隈ケンタはこう語る。

「繊細なストリングスにヒステリックなリズム隊、綺麗なメロディにしゃがれた声、エモーショナルなハイトーン。 音楽制作において僕がこだわっているのが『アンバランスな物を違和感なく共存させる』事。プロデュースする上で一番難しいのですが、それがこの曲で表現できたかなと。結果、BiSHにピタリとハマりその後の『プロミスザスター』以降の世界観につながって行く。またこの曲からスクランブルズのすべての案件は32bit/96HzでREC&MIXをスタート。なのにドラムのトップマイクはどこのリハスタにもある57です! これもアンバランスなバランス」

・ 『BiSH NEVERMiND TOUR』(2017年1月〜3月)

 こうして快進撃を進めてきた2016年のBiSHだが、12月にアイナ・ジ・エンドが声帯結節の手術のため一時活動休止を発表。しかし翌2017年1月には早くも復帰を果たし『BiSH NEVERMiND TOUR』を敢行する。これはグループの結束をより強めたツアーとなったはずだ。

 このツアーで何より大きかったのは松隈ケンタ率いる「鬼バンド」がステージでの演奏を手掛けたこと。BABYMETALやでんぱ組.incなどバンドと共にステージに立ち、ライブを行うアイドルグループは少なくないが、BiSHの快進撃を支えてきたのが松隈ケンタの楽曲とプロデュースワークであることを考えると、BiSHの場合は「アイドルグループとバックバンド」ではなく、まさにキャッチフレーズ通りの「楽器を持たないパンクバンド」としての意味を持ってくる。

 松隈ケンタはツアー、そして最終公演となったZepp Tokyoの体験をこう語る。

「全8本でいろんな事件、トラブルがあったんやけど、それを経験として成長して行く彼女達を見ていてぐっときました。 個人的に印象に残っているのはツアー中の札幌でavexの部長さんに連れて行ってもらった、回らないお寿司屋さん。意外に思われるけど、サウンドPってメンバーと話す機会がほとんどないので、プライベートでみんなと初めて喋った感じ。 凄く楽しかった! そして美味しかった!」

・ミニアルバム『GiANT KiLLERS』リリース(6月28日)

 6月28日にはミニアルバム『GiANT KiLLERS』がリリースされた。表題曲を含む全5曲で、うち4曲はメンバーが作詞を手がけており、ハシヤスメ・アツコが「社会のルール」、モモコグミカンパニーが「Marionette」「Nothing.」、リンリンが「VOMiT SONG」の歌詞をそれぞれ書き下ろしている。

 これまでの作品でもメンバーが歌詞を書き下ろした曲はポイントになってきたが、その意味合いが大きくなってきていることが伺える。ファストパンクの表題曲を筆頭に、ビジュアル系にも通じる耽美的なメロディセンスの「Marionette」、「オーケストラ」「プロミスザスター」に続くドラマティックな路線の「Nothing.」、陽気なスカナンバー「社会のルール」、ストレートなギターロックの「VOMiT SONG」と曲調の幅も広い。

・ 『BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS“』幕張メッセイベントホール(2016年7月22日)

こうしてBiSHはグループ最大のキャパシティである幕張メッセイベントホールのワンマン公演を目前に控えている。アイナ・ジ・エンド、松隈ケンタ、渡辺淳之介の3人は間近に迫った公演について、こんな風にコメントしている。

「BiSHにとっては、幕張メッセだからといって、いつもと変わらず、ビビらず、しっかりライブできたらいいなと思います。幕張メッセだから緊張するっていうのは、よく考えたらおかしいなと思ったからです。幕張メッセのようなおっきな会場も似合うBiSHになりたいので、私はサシ飲みしてる感覚で歌いたいので、場所問わず一人一人に歌い掛ける感じで行きたいと思います。BiSHにとってまた大きなターニングポイントになれるよう幕張メッセまでは、もがいて、少しでもいい日になるよう、いまは頑張ります」(アイナ・ジ・エンド)

「7、8年、WACK渡辺くんといろいろやってきて、ついにBiSHがこのステージに立つまで来たのかと思うと全曲泣いちゃいそうです。が、BiSHにとってはまだまだこんなもんじゃないと思っているので、メンバーにはいい通過点くらいに思って、ROCKな気持ちで楽しんで欲しいです。個人的な事ですが、作曲家になって自分の作った曲をアーティストが歌ってくれてるのを、初めて生で見たのが幕張メッセでした。中川翔子さんの『フライングヒューマノイド』という曲やったけど、数千人の歓声と歌声、どデカイステージ演出にしびれまくったのを覚えています。うちのサウンドチームの若手達が、自分の携わったサウンドが爆音で鳴り響く幕張メッセで同じ気持ちになってくれたら嬉しいなとおもいます」(松隈ケンタ)

「良い意味でも悪い意味でも、BiSHは大きい箱を押さえたとしても、幕張メッセですら『当たり前』っぽくなってしまうグループ。その『当たり前』をどんどん大きく更新できるようなライブを見せられればと思ってます。おかげさまで、SOLD公演となりそうで、7000人の大観衆の前でBiSHが全員を殺しにかかれるように、そのムーブメントがBiSHの目標である東京ドーム公演につながるように、できればと思ってます。僕個人的には、幕張メッセで俺も歌いたかったなと思ってますw」(渡辺淳之介)

 おそらく今回の幕張メッセは、BiSHというグループにとって、「到達点」ではなく「通過点」であるだろう。しかし、日比谷野外音楽堂など過去にいくつかあったターニングポイントと同じように、グループの物語を鮮やかに彩り、語り継がれるような一夜になるだろうことは間違いないはずだ。(文=柴 那典)