Screenshot: ギズモード・ジャパン via Apple Machine Learning Journal


Apple(アップル)が突然、マシーンラーニング(機械学習)に関するリサーチを発表するウェブサイト「Apple Machine Learning Journal」を開設しました(英語)。現在書き込まれているエントリーは2つのみ。最初のエントリーには次のような文章が書かれています。


Apple Machine Learning Journalにようこそ。ここではAppleのエンジニアたちがマシーン・ラーニングのテクノロジーを使い、世界中の何百万人のユーザーのための革新的なプロダクトを生み出す取り組みについて読むことができます。もしも皆さんの中にマシーン・ラーニングの研究者、学生、エンジニア、ディベロッパーがいらっしゃったら、私達は是非、質問やフィードバックを受け取りたいと思っています。宛先は:machine-learning@apple.com


あまり人工知能、マシーンラーニング、ディープラーニングという分野ではそれほどニュースになってきていないAppleですが、実は何年も前から人工知能の専門家を雇い続けています。iPhoneやフォト・アプリケーションにおける人の顔認識レベルがここ数年で非常に精度があがっていることに気付いた人も多いでしょう。

TechCrunch、The Vergeといったメディアが「AppleがAI分野の注目を集めたがっている」「人材を集めようとしている」と指摘しているように、Appleが本当に何か大きな発表をひかえてブログを開設したというよりは今後成長させたい分野としてフォーカスしている、と理解するべきでしょう。


2つ目のエントリーは去年12月に学術論文として発表されたリサーチ結果を一般読者向けに平易に書き直したものとなっています。この研究内容が、なかなか面白いものになっています。エントリーの題は「人工生成画像のリアルさを改善」というもの。さて、なぜこれがマシーンラーニングという文脈で重要なのでしょうか?

大量のデータから学習し、アルゴリズムを発展させるマシーンラーニングには文字通り、多様性を持った大量のデータが必要です。さらに学習に利用するためにはそれに適したフォーマットにそろえて、適切なタグ付けなどをする必要があります。手間がかかる上にデータをどこから準備するんだ、という問題があるわけです。GoogleやFacebookといった、本業を通して大量のデータが入手できる会社はその点で問題はないのですがAppleは遅れをとっているわけです。

そこで登場したのがシミュレーターを使って「人工的に作られた画像」を元にマシーンラーニングを行なわせるという手法です。これであれば一つひとつのラベリングもコストがかからず、大量に、かつ短時間に行なうことができると。とは言えあまりにもリアルさに欠けていると、素材として意味がないわけですね。そこで実在の写真で学習したニューラル・ネットワークを使って、人工的に作られた画像をリアルに見せるという作業を行なったとのこと。

ニューラル・ネットワークを訓練するための素材をニューラル・ネットワークを使って生み出す…錬金術のようじゃないですか。よりわかりやすくするために、画像を使って説明してみます。例としてあげられているのは人の目の向いている方向を検知する、という学習。


Apple Machine Learning Journal ブロク 開設 1
Images: Apple Machine Learning Journal


上段に並んでいるのはラベル付けがされていない実際の写真。これらを使って学習したネットワークによって、人工生成の目の画像(左:Synthetic)をリアルに見える目の画像(右:Refined)へと修正するわけですね。リアルに修正した画像を使って学習をした場合、目が向いている方向の検知精度が修正をしていない人工生成画像を使って学習をした場合よりも向上していることも判明しました。


Apple Machine Learning Journal ブロク 開設 2
Images: Apple Machine Learning Journal


またリアルに修正した画像の量を増やして学習させた場合にもパフォーマンスが向上していたとのこと。ということは人工生成の画像を元に大量に学習素材を作ることで、より学習精度を高めることができるということです。これはGoogleやFacebookのような大きなデータを持っていない人工知能リサーチ機関にとっては非常に有り難い結果になっています。

Appleの人工知能研究の成果を宣伝するだけでなく、研究プロセスをこうやって公開することで「この分野なら私が役に立つよ!」と将来の人材を集めることにもつながりそうです。画像・ビデオにおける人間の特徴や動きを検知するソフトウェアは、Appleが最近力を入れているARも含め大きく活躍しそうですから、今後の発展が楽しみです。


Images: Apple Machine Learning Journal
Source: Apple Machine Learning Journal
Reference: 機械学習 - Wikipedia, The Verge, TechCrunch, arXiv.org

(塚本 紺)