スイス時計界の名門、ユリス・ナルダンが、今年のSIHHで未発表だった新作を公開しました。その名も「マリーン トルピユール」。19世紀にキャプテン(船長)だけが持つことを許されていた同社製ポケットクロノメーターに由来する新作で、自社製Cal.UN-118を搭載しながら80万円(税抜)という非常にコストパフォーマンスに優れた一本となっています。

 

キャプテンがこぞって愛用したポケットクロノメーター「トルピユール」

ユリス・ナルダンは、かつて世界中の戦艦に採用されるほどの優れた船舶用デッキクロノメーターを製造していたブランドです。現代では、シリシウム製の脱進機をどこよりも早く開発するなど、技術革新も積極的に行っています。

↑右は1922年製のマリーン クロノメーター、左は1943年製のトルピユール。いずれもユリス・ナルダン製造

 

ちなみに、ユリス・ナルダン製のデッキクロノメーターは、日本でも横須賀にある記念艦「戦艦三笠」内に展示されており、誰でも見ることができます。

 

こうした高精度時計を100年以上も作り続けてきたユリス・ナルダンの新作が、「マリーン トルピユール」。文字盤の意匠は、現在のフラッグシップコレクション「マリーン クロノメーター」に通じるものがあります。

↑ユリス・ナルダン「マリーン トルピユール」左から86万4000円/Ref.1183-310/43、223万5600円/Ref.1182-310/40、86万4000円/Ref.1183-310/40/直径42mm、厚さ11.05mm /自動巻き/50m防水

 

薄く、軽く、視認性に優れた普段使い向きの作り

マリーン クロノメーターはユリス・ナルダンのアイコンでもあるため、文字盤の意匠にいくつかの共通項はあるものの、新作の外装はまったくの新設計。そのため、全体で見たときの印象が大きく異なります。

 

サイズは、直径は42mmと標準的。注目すべきはその厚さで、同じ自社製Cal.UN-118を搭載した「マリーン クロノメーター」が43mmのケースで約14mmあるのに対し、マリーン トルピユールでは約11mmと、3mm近くも薄くなっているのです。

↑右が新作「マリーン トルピユール」、左は「マリーン クロノメーター」。「マリーン クロノメーター」は、高精度時計の称号であるクロノメーターを製品名に冠し、外装設計も往年のデッキクロノメーターにならった意匠となっている

↑上が新作「マリーン トルピユール」、下が「マリーン クロノメーター」

サイズを抑えたことで質量も85g程度と、かなり軽くなっています(マリーン クロノメーターの43mmは約120g)。

 

これだけサイズダウンしても、防水性は50mを確保。パワーリザーブ表示も、デイト表示もきっちり備わっています。

 

「トルピユール」という言葉は、そもそも小型・高速の軍艦を意味するフランス語。軽快ながら本格スペックを誇る「マリーン トルピユール」のイメージには、ぴったりな言葉だと思います。

 

19世紀、世界中の海軍将校や船長たちの間で賞賛されたユリス・ナルダンのポケットクロノメーター、トルピユール。その伝統を継承した新作は、重厚感のある旗艦モデル「マリーン クロノメーター」とは異なる魅力を持った、力強くもしなやかな新世代モデルと言えるでしょう。