SNS時代に「響く広告」に必要なもの

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「広告は社会を映し出す鏡」だといわれている。ではメディアが多角化するなかで、それはどう変わっているのだろうか─。スーパーボウルやNYラジオシティのプロデュースを経て、世界最大級の広告の祭典「Advertising Week(AW)」をリードするマット・シェクナーCEOに話を聞いた。
 
2004年にニューヨークで発足したAWは、世界の広告業界が一堂に会するイベントだ。昨年日本に上陸し、今年も東京で開催された。業界関係者のほか、テクノロジーやエンターテインメントに携わるプロフェッショナルたちが15万人参加する世界最大級の”ビジネス・コミュニケーション”の祭典である。
 
AWのマット・シェクナーCEOは言う。

「広告業界はいま、大きな変化の時代を迎えています。04年にAWが初めて開かれたころ、フェイスブックはまだマーク・ザッカーバーグらがハーバード大学で開発している途中でした。Gmailはリリースされて2、3年しか経っていません。iPhoneやユーチューブなんて登場すらしていなかった」

「ソーシャルメディアの台頭で、消費者は自ら情報を発信できるようになり、一方で企業も同様、”オウンドメディア”の影響力が高まっている。旧態依然とした広告手法では通用しなくなっているのです」
 
では、企業にとって広告代理店やPR会社の活用は限定的になるのか。シェクナーは、「もちろん答えはノーです。代理店の重要性は変わりませんよ」と微笑む。

「プロと素人の仕事は別物。”できる”と”やれる”では雲泥の差がある」と言うのだ。

一方で彼は、「例えばラジオは以前、存続の危機に危ぶまれていたが、今ではストリーミングラジオのようにテクノロジーが加わり、消費者の選択肢が広がっている。要は、新旧のメディアを使いこなすことが求められる」と、伝統メディアの重要性は変わらないと指摘する。

「SNS時代で重要なのは、メッセージを明確にすること。例えばユニリーバは、環境に優しいものづくりを謳うことで若い世代から支持を得ることができました。新しい消費者は自分たちの信念に合った企業の商品を購入する。共感することで消費を行うのです」

そんなシェクナーは「シャイノーラ」を愛用する。自動車産業の衰退で荒んだデトロイトにあえて工場を構えるスタートアップの時計メーカーだ。彼はこう言う。

「”アメリカの製造業復活”という物語に心が揺さぶられたのです。そんな筋立てができる『ストーリーテラー』が広告業界には必要なのです」


マット・シェクナー◎世界最大級の広告の祭典「Advertising Week」を主催する「Stillwell Partners」のCEO。1995年にニューヨークでマーケティング戦略のコンサルタント企業「Empire Sports & Entertainment」を創業。ラジオシティ・ミュージックホールの戦略プランの中核を担ったほか、数々のスーパーボウル・ハーフタイムショーをプロデュースした。