米グーグルが新たな用途のメガネ型ウエアラブル機器を開発し、再びこの分野でチャレンジしようとしていると海外メディアが報じている。

 この機器の名称は「Glass Enterprise Edition(グラス・エンタープライズ・エディション)」。その名のとおり、製品は法人向けで、産業分野での利用を想定している。すでに米ボーイングや、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、ドイツのフォルクスワーゲンといった約50社が試験的に導入していると、グーグルは述べている。

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批判を浴びた初代モデル

 同社が、「Google Glass」というメガネ型ウエアラブル機器の開発プロジェクトを立ち上げたのは2012年のこと。その翌年、同社は、この機器の開発者向けプロトタイプ製品を発売。2014年には、このプロトタイプを1500ドルで販売する早期導入プログラムを拡大し、期間限定で一般消費者にも提供した。

 だが、このGoogle Glassにカメラが備わっていることが大問題だった。これにより利用者は、人知れず周囲を撮影することができてしまう。こうした機能が嫌われ、Google Glassを着用する人は、「嫌な奴」を意味する「asshole」をもじって「Glasshole」と呼ばれたりした。

 また、こうしたプライバシー侵害の問題に加え、映画館などにおける著作権侵害への懸念も取り沙汰された。1500ドルという高額な価格が、消費者の期待を膨らませたが、Google Glassはそれに見合う機能を備えていないといった批判もあった。

(参考・関連記事)「Googleよ、なぜ気づかない 『Google Glass』が抱える根本的な問題」

2015年に販売中止

 こうした経緯があり、同社は2015年1月、Google Glassの早期導入プログラムを中止し、開発プロジェクトを別の部門に移管すると発表。この時、同社は一般向け製品としての市場投入を目指すと説明していたが、この決定は、グーグルが消費者向けGoogle Glassをいったん諦めたことを示唆するなどと言われた。

 Google Glassを巡っては、その後、産業向け製品を開発しているといった観測も度々出たが、ここしばらく、この機器に関する話題を聞くことはなかった。

 一方で、グーグルは2015年に組織を持ち株会社制へと移行した。Google Glassはもともと、グーグルの次世代製品研究部門「Google X」が手がけていたが、この組織再編に伴い、同部門は親会社アルファベット傘下の「X」と呼ばれる事業となった。そして、このたびの新たなメガネ型機器であるGlass Enterprise Editionは、このX事業が手がけている。

新たな用途は製造、物流、医療などの産業分野

 米ウォールストリート・ジャーナルや米ワイアードなどの報道によると、このGlass Enterprise Editionには、さまざまな改良が施されている。

 例えば、プロセッサーのパワーが向上し、バッテリーの持ち時間が長くなった。カメラ性能も向上したが、なによりも、動画撮影中は、そのことを知らせる緑色のライトが点灯するようになったという。

 その用途は、製造、物流、医療といった産業分野における情報表示や作業の指示。作業現場で各種の情報を作業員に目の前に映し出したり、作業員が見ている場面を他の担当者が確認し、リアルタイムに指示したりすることができるという。

 ドイツポスト傘下の国際宅配便企業DHLが、Glass Enterprise Editionを利用しているが、倉庫内での商品仕分け作業などにこれを活用しているとグーグルは述べている。

 なおこの機器は、グーグルが「グラス・パートナーズ」と呼ぶ、ソフトウエアのカスタマイズや顧客サービスを行う外部企業が販売するようだ。そのため、価格は顧客企業の用途によってそれぞれ異なると同社は説明している。

筆者:小久保 重信