フェイクニュース産経新聞(産経新聞社公式HP)

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 民進党の蓮舫代表が昨日18日、"二重国籍"問題で、戸籍謄本の一部・国籍選択宣言の日付などの資料を公開した。このことによって、ネトウヨや保守メディアの攻撃がデマだったことは証明されたが、しかし、一方でこの戸籍公開はマイナス面も非常に大きい。

 本サイトは蓮舫代表の保守に媚びる政治的スタンスには批判的だが、二重国籍問題については、昨年の代表選でこの問題がもち上がって以降、そのことを追及するメディアやネットの姿勢を「グロテスクな純血主義、差別」だと批判してきた。今回、戸籍の公開を要求した民進党の議員や一部とはいえ戸籍の公開に応じた蓮舫代表の行動は、そうした差別行為を正当化するばかりか、次なる差別を生み出すことにつながりかねないからだ。

 だが、まったくやる必要のなかったこの会見でひとつだけ、意味のあることがあった。それは、安倍応援団の極右紙・産経新聞のトンデモフェイクぶりがあらためて明らかになったことだ。

 会見終盤、なんと、産経の記者が蓮舫代表に対し、「三重国籍の疑いについては?」と質問したのだ。メディアではまったく報じられていないが、以下はそのやりとりの全文だ。

産経「ネットの情報ではあるんですけど、いまなお蓮舫さんが中国籍をもっているんじゃないかとか、三重国籍の疑いがあるんですけど、タレント時代、インタビューで『台湾籍』『中国籍』と発言を展開されていて、三重国籍の疑いも言われているんですけれども、その点について」
蓮舫「3つ私が国籍をもっているということですか? もう少し丁寧に質問お願いします」
産経「台湾籍と中国籍と日本籍」
蓮舫「台湾籍と中国籍って一緒にもつことができるんですか?」
産経「そこも含めてご回答いただければ」
蓮舫「もう少し丁寧に質問お願いします」
産経「ネットで言われている真偽不確かな情報について『ない』ということを言っていただきたいんですよ」
蓮舫「ネット上で言われている真偽不確かなことを、いま産経新聞さんが私に理由でなく確認されているという質問でよろしいですか? あり得ません」 

●中国、台湾との三重国籍は物理的に不可能! 産経記者の無知

 なんだろう、この産経記者のバカ丸出し質問は。そもそも、蓮舫代表も皮肉っていたように、中国(中華人民共和国)籍と台湾籍を一緒にもつなんてことはありえない(同じく中華人民共和国籍と日本籍も一緒にもつことは不可能である)。

 なぜなら、中華人民共和国では、中国の国籍を取った者は、他国の国籍を持ち続けることができないし、他国の国籍を有している者は、自動的に中国国籍を失ってしまうからだ。

 中国国籍法の第八条には中国の国籍を取得した者は外国の国籍を保有することができないとあり、また同九条には自らの意思によって外国の国籍を取得した者は自動的に中国国籍を失う、とある。また外国で出生し外国籍を取得した子どもにも中国籍を認めないなど、日本以上に二重国籍に厳しい。

 台湾籍は国籍離脱を申請しないと手続きが取られないため、結果的に二重国籍状態になることはあるが、中華人民共和国の場合は、どこの国とも二重国籍になること自体が不可能なのだ。ましてや、中国がその存在を認めていない台湾も含めた三重国籍など認めるはずがないのは、中学生でもわかるだろう。

 ところが、産経記者は自分では何も調べようとせず、デマをそのまま蓮舫代表にぶつけたのだ。しかも、根拠にしているのは記者自らが明かしているように「ネットの情報」「ネットで言われてる真偽不確かな情報」というのだから、開いた口がふさがらない。

 たしかに「蓮舫が三重国籍」というデマは二重国籍問題が騒がれ始めた少し後から流れており、今年7月、蓮舫代表が戸籍などの資料を開示する姿勢を示した直後もネトウヨメディアやネトウヨのまとめサイトなどであらためて盛り上がっていた。しかし、彼らが根拠にしていたのは1993年3月に『ステーションEYE』(テレビ朝日)のキャスターに就任した蓮舫氏が「在日の中国籍の者としてアジアからの視点にこだわりたい」と語っている新聞の切り抜きのキャプチャー画像。

 つまり、自分で中国籍と語っているのだから、台湾でなく中国(中華人民共和国)にも国籍があったのは明らかだというのだが、これは日本の戸籍で台湾がどう扱われているかがまったくわかっていない、バカ丸出しの誤解だ。

 周知のように、日本政府は公式的には台湾を国とは認めておらず、そのため台湾出身者が日本人との結婚や養子縁組をする場合、または日本に帰化するなど、その身分に変動があった場合、日本の戸籍における国籍や出生地は「台湾」ではなく「中国」や「中国台湾省」と表記される(住民票や在留カードは地方自治体が取り扱っているため、数年前から「台湾」と表記できる自治体が多くなっているが、法務省が取り扱う戸籍はいまも「中国」と扱われる)。そう考えると、蓮舫代表が20年以上前に「台湾籍」のことを「中国籍」と表現していても何の不思議もない。むしろ当時の感覚としては当然ともいえるだろう。

 ようするに、こんな何の証明にもならないたった一言の発言を根拠に、ネトウヨは三重国籍などとがなり立てていたのである。

● 辻元清美の森友疑惑、TBSやらせなど、産経はネットデマ拡散の常習犯

 まあ、ネトウヨなんて2つの中国という問題が存在することさえわかっていない連中がほとんどだろうから、笑って済ませてもいいが、問題は、そのネトウヨの間で流通している誰がみてもデマだとわかる情報を、日本新聞協会にも所属している全国紙の記者が、何の検証もせずに、平気で会見で質問していたという事実だ。

 産経は、昨日18日「官房長官の記者会見が荒れている! 東京新聞社会部の記者が繰り出す野党議員のような質問で」という記事を配信。菅義偉官房長官に厳しい質問を繰り返している東京新聞の望月衣塑子記者を「一つの質問が長い」「質問に引用元が定かでない内容や私見が多く含まれ」ていると批判していた。自分のところの記者はネットのデマ情報をそのまま質問しているのに、何を言っているのだろうか。

 いや、産経はデマ情報を質問しているだけではない。ネットのデマを記事にして、フェイクの拡散者にさえなっているのだ。産経は、ネットに流通するデマ情報をあたかも事実のように報じるフェイクニュースをこの間、いくつも飛ばしてきた。

 たとえば、森友問題のときには、辻元清美衆院議員が「塚本幼稚園に侵入した」「森友学園の小学校建設現場に作業員をスパイとして送り込んでいた」というネット上の流言飛語をそのまま「民進・辻元清美氏に新たな『3つの疑惑』 民進党『拡散やめて』メディアに忖度要求」というタイトルで記事化した。

 これは籠池夫人、またスパイとされた作業員自身が否定し、まったくのデマだったことが確定しているが、産経は、記事に、辻元議員が塚本幼稚園とはまったく別の場所にある森友学園の小学校建設予定地を視察している写真をわざわざ添え、あたかも塚本幼稚園に近づいているという印象操作までしていた。

 辻元議員については、産経はほかにも、東日本大震災直後の2011年3月16日に「阪神淡路大震災の際に、被災地で反政府ビラをまいていた」などのネット上のデマを安倍御用記者・阿比留瑠比編集委員が記事にしているが、これも産経側が名誉毀損で全面的に敗訴している。

 また、16年6月にはやはりネット情報をもとに、TBS のニュース番組がやらせをやっていたかのような記事を掲載したこともある。当時、TBSの夕方のニュース番組『Nスタ』が舛添要一都知事の辞任を受け、新橋駅前で「20代女性」に街頭インタビューしたのだが、ネットでは、その女性が同じ『Nスタ』の被災地の熊本のレポートに登場したピースボートの災害ボランティアセンターの女性スタッフと「同一人物」だという情報が出回り、「やらせと一目で分かる」「ピースボートの職員をやらせに使うTBSはどういう思考回路か」と炎上。実際は、たんに似ていただけで同一人物ではなかったのだが、産経はそのままネットの声を紹介するかたちで「TBS番組『街の声』の20代女性が被災地リポートしたピースボートスタッフに酷似していた?!」という記事にしたのだ。

 しかも、ピースボート災害ボランティアセンターが「女性は熊本で活動中で、東京の街頭インタビューに答えられるわけがない」と抗議すると、産経は謝罪も訂正もなく、こっそり記事を削除していた。

●「東アジアニュース速報+板」をもとに北朝鮮ミサイル発射を予告

 極めつきは、2ちゃんねるの書き込みをもとに、北朝鮮のミサイル発射のデマを予告した一件だ。今年5月14日、産経のネット版が「北朝鮮のラジオ放送の暗号を2ちゃんねらーが解読? 『14日午前5時56分、発射予定時刻かな』が的中」と題した記事を掲載。その匿名の書き込みに乗っかって"15日6時3分にもミサイル発射があるかも"と、北朝鮮危機を煽ったのだ。

 しかし、15日に北朝鮮が新たなミサイル発射を行なったという情報はなく、記事は完全なデマ、流言飛語の拡散以外の何物でもなかった。というか、それ以前に産経が「的中」と報じている14日の発射時間も時間がずれており、全然「的中」ではなかった。

 この産経がもとにしたネットの書き込みは2ちゃんねるの「東アジアニュース速報+板」のスレッドにあったもの。「東アジアニュース速報+板」といえば、韓国や北朝鮮、中国の話題をひたすら集めたうえで、ニュースとは名ばかりの偽情報と差別言辞が飛び交うネット右翼の温床であり、「デマだらけ」「便所の書き込み」と言われる2ちゃんねるのなかでも"肥溜め中の肥溜め"と呼ぶべきネトウヨ隔離用の板だ。そんなものをネタ元に、「ニュース」のように報じていたのだ。

 こうしてみると、蓮舫代表へのデマ質問は「たまたま記者が勉強不足」なのではなく、確信犯だったことがよくわかるだろう。ようするに、産経はネトウヨの流すデマをある程度、デマだとわかった上で、意図的に拡散している。それは、安倍政権を応援して、政権批判勢力を攻撃し、ネトウヨを購買者に取り込むために他ならない。

 しかし、繰り返しになるが、私たちが考えねばならないのは、こういうことを繰り返している新聞社が日本新聞協会に所属して、全国紙として大きな顔で政府機関を取材し、Yahoo!トピックスなどであたかも真っ当な報道機関のように扱われているということだ。しかも、産経は安倍首相や官邸に食い込み、いまや政権の機関紙的な役割も演じているのだ。信じられない話ではないか。

 いや、最後の部分だけは、信じられない話でなく、むしろ当然というべきかもしれない。そもそも安倍政権自体がネトウヨのデマや流言飛語を使って、野党や政権批判者、メディアに対して卑劣な攻撃を仕掛けてきた。実は、蓮舫代表の三重国籍デマについても、自民党じたいがこれを拡散している。

●自民党の"二重国籍議員"小野田議員と大西議員も差別デマ拡散

 6月14日に放送された自民党のネット放送「CafeSta」の『関西人!俺にも言わせろ』という番組でのこと。党のネットメディア局次長を務める大西宏幸衆院議員がホスト役で、自らも二重国籍でそれを解消したことを告白した小野田紀美参院議員をゲストに迎え、トークが展開されたのだが、小野田議員が昨年夏、参院議員当選後にアメリカ国籍放棄の手続きをとった経緯などを説明するうちに、なぜか矛先は蓮舫代表に。「アメリカ国籍とか中国籍をもってるとか、戸籍謄本には書いてない、スパイやりたい放題」「日本国籍を剥奪されても文句言えないというレベル」「某党首は証拠を提示していない」などと批判した。

 それを受けて、大西議員は「まぁテレビのネタでございますけれども、某党首さんは台湾国籍をもっておられて、台湾というのは通常、中国の国籍ももっておられるということで台湾・中国・日本で三重国籍である疑惑もあったりするんですよね。ま、それはちょっとどうかわからないんで敢えては申しあげませんけれども」などと三重国籍疑惑をもち出したのだ。

 そういう意味では、安倍自民党とはそのデマ体質や陰謀体質が完全に一致しており、産経は安倍応援団になるべくしてなったと言うべきだろう。

 ここにきて、安倍政権の嘘やインチキ、政治の私物化が次から次へと国民にばれているが、安倍政権だけでなく、そのインチキごまかしと私物化を後押ししてきた応援団であるフェイクニュース産経新聞の責任も徹底的に追及する必要がある。
(編集部)