焦点:中銀受難の時代、政策正常化以外にも難題山積

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[ロンドン 18日 ロイター] - これまで政策を総動員して危機対応に当たってきた主要国中銀だが、今抱えている問題は、金融政策の正常化だけではない。次の景気後退や金融危機への対応準備がほとんど整っていないのではないか――。一部の市場関係者から、こんな懸念の声が出ている。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)のリポートによると、世界の主要5中銀は、2006─2009年にかけて平均で約350ベーシスポイント(bp)の利下げを実施した。

今、金融危機が発生した場合、この規模の利下げは可能だろうか。答えはノーだ。

BAMLによると、現在の主要国中銀の名目政策金利は、平均で0.5%。特に欧州中央銀行(ECB)と日銀は、利下げ余地が限界に達している。

HSBCのシニア・エコノミック・アドバイザー、スティーブン・キング氏によると、米国で1970年代以降に発生した景気後退では、すべてのケースで、政策金利が5%ポイント以上引き下げられた。現在の米国の政策金利は1─1.25%だ。

主要5中銀は利下げに加え、バランスシートを活用した金融緩和も実施してきた。バランスシートの総額は、2008年初めの約4兆ドルから、約15兆ドルに膨らんだ。

今、金融危機が起きれば、おそらくバランスシートをさらに拡大することになるが、大量の資産買い入れで、買い入れ対象となる資産は目減りしており、買い入れ資産の多様化が必要になるとみられる。

買い入れ対象の多様化は可能だが、前例は少なく、政治的にも難しい課題が立ちはだかる。

<鍵を握るインフレ>

これまでの大規模な金融緩和にもかかわらず、物価は伸び悩んでおり、インフレ率は、英国を除くすべての主要国で目標を大幅に下回っている。

つまり、中銀は、最大の目標を必ずしも達成できていない状況で、大なり小なり金融政策の正常化をちらつかせていることになる。

皮肉なことに、こうした正常化への意気込みが次の景気後退を招くリスク要因になる、と指摘する声もある。

スタンダード・チャータード銀行の欧州担当チーフエコノミスト、サラ・ヘウィン氏は「過去の一部の景気後退は、行き過ぎた金融政策が原因だった」と指摘。同行の分析によると、引き締めを正当化できるほどの持続的なインフレ圧力はみられないという。

BAMLのエコノミスト、イーサン・ハリス、アディチャ・バーベ両氏は、次の景気後退に備えるため、目標を上回るインフレを促すべきだと主張する。つまり、物価を高騰させた上で、金融政策を引き締めたほうがよい、というアドバイスだ。

だが、金融政策の正常化に着手する前に、景気が後退した場合はどうするのか。

中銀にはイノベーションがある。民間への現金配布、中銀による国債の直接引き受けといった「ヘリコプターマネー」のアイデアはお馴染みだ。

そして、政府には財政出動という手段が常に存在する。

特に中銀が10年近くにわたって政策を総動員してきた現状を踏まえれば、金融政策だけですべてを解決することは不可能だろう。

プルーデンシャル・ポートフォリオ・マネジメント・グループのシニアエコノミスト、レイラ・バット氏は「今後は財政政策の必要性がさらに高まる。金融政策だけでは効果が限られる」との見方を示した。

*見出しを修正しました。