生活保護で暮らすシングルマザー。震災、離婚、うつ病で…「野菜は高くて買えません」

写真拡大

 現在、生活苦に陥っている人々のうち、少なくない割合が、女性ひとりで子供を養育する、いわゆる母子家庭だという調査データがあります。

 厚生労働省が発表した生活保護の被保護者調査(2017年3月)によると、現在生活保護を受けている家庭は全国で約164万世帯(214万人)。そのうちの5.8%が母子家庭です。

 年々減少傾向にあるとはいえ、今も9万5000世帯の母子家庭が生活保護を受けています。その一人である女性に、話を聞いてみました。

◆うつ病で退職。のち生活保護を受ける

 下平亜希子さん(仮名・40歳)は、中学生の娘2人を育てるシングルマザー。うつ病で生命保険会社を退職し、現在生活保護を受けています。

「ノルマなし、時間が自由になる、子供がいても働きやすい、と勧められて入社したんですが、実際はノルマと同じ『目標値』があって、それを達成できないと帰れないし、休むこともできませんでした。

 上司と同僚との4人チームでしたが、上司が圧力をかけてきたり、あからさまな贔屓(ひいき)をしたり、だんだん精神的に追い込まれてうつ病になりました」

 退職後、会社からの傷病手当金をもらって療養していましたが、病状はなかなか回復しません。

「早く治して働かなきゃと焦れば焦るほど、悪化していきました。手当の支給が終わり、貯金も底をついて、どうしようもなくなって生活保護を申請しました」

◆夫の暴力と東日本大震災

 もともとは宮城県で夫と4人で暮らしていた下平さん。

「夫が暴力を振るうようになって、娘たちを連れて地元の賃貸アパートに逃げました。なかなか離婚の話が進まず、母子手当がもらえないので、昼はスーパー、夜は塾講師を掛け持ちして、なんとか暮らしていました」

 正社員になれる仕事を探していた2011年、東日本大震災の被害に遭います。

「私も娘たちも無事でしたが、町はとても仕事を探せるような状態ではありませんでした。

 東京で震災の被災者採用があると聞き、母子3人で上京しました。体育会系気質のワンマン社長が経営する小さな不動産会社で営業事務の仕事に就きました」

 しかし時間外労働が長く、さらに会社ぐるみの宴会ばかりで、なかなか家に帰れなかったそうです。

「直属の上司からのパワハラがひどく、精神的にまいってしまって長期休養をいただいたのですが、復帰しようとしたら『席がない』と言われて、そのまま自主退職せざるを得なくなりました」

 その頃、夫との離婚が成立しましたが、慰謝料・養育費の支払いはありませんでした。

「宮城に住んでいた時の家の住宅ローンの連帯保証人になっていたんですが、元夫側からの支払いがなくて、現在もうちに督促がきています。でもこんな状況だし、どうしようもありません」

◆服を娘たちと3人で着回し

 生活保護を受けるようになり、最低限の衣食住は確保できているものの、生活は依然として厳しいそうです。

「服を娘たちと3人で着回してます。なるべく家から出ないようにしてますが、どうしても外出しなきゃいけない時は、時間がかかっても交通費が安いルートで動きます。

 あと、ご飯は一度にたくさん作って、小分けに冷凍して少しずつ食べています。野菜は高くてなかなか買えないので、炭水化物ばかりになってしまいます」

 娯楽は、「近所のカラオケのフリータイム」という下平さん。

「子供たちは、同じクラスの子に遊園地やプールに誘われても断っているそうです。みじめな思いをさせて申し訳ないです。本当は、泊まりがけの旅行にも連れて行ってあげたいのですが」と、うつむきます。

 今後の目標は、「少しずつでも仕事して生活保護から抜け出すこと。娘たちが気兼ねなく進路を決められるだけの貯蓄をしたい」とのことでした。

 貧困だけでなく「働かなくては」というプレッシャーに苦しむシングルマザー。

「私が倒れたら、娘たちはどうなるんでしょうか」と、力なく笑う姿が印象的でした。

―お金がない…女の生活苦シリーズ vol.4―

<TEXT/藍川じゅん>

【藍川じゅん】
ハンドルネームは永田王。高収入求人サイトにてコラムを連載中。女性用リラクゼーションを求めて徘徊しています。