仏パリ市内で発表された「アトリエ ヴェルサーチ」コレクションに登場したデザイナーのジャンニ・ヴェルサーチ(1997年7月6日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】20年前、ファッションデザイナーのジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)はマイアミ(Miami)で撃たれ、彼のブランドは危機に陥った。だが事件から20年が経った今、ジャンニの妹であるドナテラ(Donatella Versace)の力によって、「ヴェルサーチ(Versace)」は世界トップのグローバル・ラグジュアリーブランドの1つとなった。

 1997年6月15日、ジャンニは朝刊を読みに出かけてマイアミビーチの邸宅に戻ってきたところ、アンドリュー・カナナン(Andrew Cunanan)に射殺された。このニュースにファッション界は悲嘆にくれた。マドンナ(Madonna)やエルトン・ジョン(Elton John)といったセレブリティの衣装を手がけていたジャンニは、まだ50歳だった。

「彼は全方向におけるクリエイター、真のアーティストだった。色や素材への純粋な創造的ビジョンを持ち合わせていた」とボッコーニ大学(Bocconi University)のラグジュアリー&ファッションセンターのディレクター、ステファニア・サヴィオーロ(Stefania Saviolo)はミラノ(Milan)でAFPの取材に答えた。

 ジャンニが1978年に兄サント(Santo Versace)とともに創設したグループは、世界でもっともホットなブランドであった。「ヴェルサーチ」は、同ブランドのカジュアルライン「ヴェルサス(Versus)」をジャンニから任せられていたプラチナブランドの妹、ドナテラがアーティスティックディレクターとして引き継ぐことになった。だがブランドはジャンニの暗殺後、復活に苦しんだ。ジャンニのそばで14年間働いてきたドナテラは、兄の死にひどく打ちのめされ、「傷ついていた」と告白する。

■苦しめられた鬱とコカイン

「一夜でアーティスティックディレクターに自分自身をでっち上げるなんて無理だ」とサヴィオーロはドナテラの引き継ぎについて語る。「当時、ファッションは大きく変化していて、アーティスティックディレクターは数多くのコレクションの多大なプレッシャーを抱えていた」。その髪と日焼けした肌で知られるドナテラは、2005年までコカイン依存と鬱に悩まされ続けた。

 2004年には、「フェンディ(Fendi)」の元CEOジャンカルロ・ディ・リシオ(Giancarlo Di Risio)が、新CEOに就任。ディ・リシオの元「ヴェルサーチ」を再びラグジュアリーマーケットに注力し、ライセンスやフランチャイズの売買、アクセサリーラインの展開を合理化した。計画的削減におけるヴェルサーチ家とディ・リシオの仲たがいが報じられる真っ最中の2009年に、「ジル・サンダー(Jil Sander)」の元CEO、ジャン・ジャコモ・フェラリス(Gian Giacomo Ferraris)が後任として「ヴェルサーチ」のCEOに就任した。

 フェラリスは「ヴェルサーチ」の利益を取り戻すため、広範囲にわたる再編成計画をすぐさま立ち上げた。従業員数を25%削減し、いくつかのブティックを閉店させ、売り上げが上昇すると新しい店舗を立ち上げた。フェラリスの介在は「2009年に2億6800万ユーロ(約346億6300万円)だった総売上高を2015年には2倍の6億4500万ユーロ(約834億2400万円)にした」と自身の名を冠したコンサルティング会社を率いるデヴィッド・パンビアンコ(David Pambianco)は語る。同ブランドは厳しい3年間の損失の後、2011年に再び利益を取り戻した。

■よみがえった「ヴェルサーチ」

「フェラリスとドナテラは解決を見出した。彼らの話し合いは良好でドナテラのクリエイティビティやビジョンへの大きなリスペクトもあった」とサヴィオーロは語る。ファミリーは、ほかのイタリアンブランドのようにラグジュアリー複合企業に決定権を譲渡することを拒否していたが、ついに2014年にアメリカの投資ファンド運用会社「ブラックストーン(Blackstone)」に株式の20%を売却した。この動きはドナテラによると「ヴェルサーチ」の「可能性を実現するもの」であり、実際に資金を得ることで、新興市場においてその存在を後押しすることとなった。

 買収は成功。困難な世界的状況にもかかわらず、売り上げは2014年と2015年に17%ほど増加した。その後ブランドは「次のステージへと向かう」ときだったと表明し、2016年5月にフェラリスが退任。前「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」CEOのジョナサン・エクロイド(Jonathan Akeroyd)が後任となった。

 昨年、売り上げは3.7%の6億6800万ユーロ(約864億1200万円)上昇したが、ブティック展開により7400万ユーロ(約95億7300万円)の損失を出した。この結果は「ある種の不安定さをもたらした」が「会社は10年以上前に比べると明らかに有益だ」とパンビアンコは語る。「ヴェルサーチは世界中のラグジュアリー部門においてもっとも美しいブランドの1つであり続けている」とし、「まだ多くの可能性を秘めている」と言う。ラグジュアリーブランドの「グッチ(Gucci)」を例に挙げ、「グッチは7倍以上の取引高だ」と指摘する。

 サヴィオーロも同意だ。「ヴェルサーチは『レッドカーペットのDNA』を取り戻した」。そのスタイルは現在、「とても斬新で、とても力強い」と語る。
【翻訳編集】AFPBB News